おまけ二話 聖奈デート
聖奈──
ほほう、まなぶくんとデート、ですか……。
ようやく学くんの顔が見られるようになった頃、私はデートに誘われた。
これは……たぶんそういうことだ。
この間、真理愛がデートに誘われた。そして、指輪を受け取って帰ってきた。
のは、まだわかる。
1日立てないってどういうこと!?
次は私の番、ってこと………………ひぅ。
デート当日。
久しぶりの黒いフルフェイスに黒いライダースーツをつけた学くん。
いつの間にか準備された、私用のお揃いのそれを着用して、バイクの後部に跨った。
初めてのバイクは凄い風で飛ばされそうになったけど、でも熱くて硬い学くんの背中に抱き着いていたら、恐怖なんて微塵も感じなかった。
筑波よりも、もっと北の方まで走らせて。
滝を見て、バンジーを飛んで、そしてコンビニの中の屋台でラーメンを食べた。不思議なデート。
でも、私的には100点だった。
暗くなったからどうするのかなって思ったら、そうですか。お泊りですか。
コテージ?っていうのかな。
山の上の方の一戸建ての宿泊施設。……た、高そう。え、私払えるかなって……心配した目で学くんを見たら笑われた。
お嫁さんの分は、当然俺が払うよ。って……そういうところ!そういうところだよ!君の悪いところ!
温泉もあるし、マッサージチェアもあるし、卓球台まであるなんて!
……あったら全部制覇しちゃうよね。
温泉は、一緒に入りたそうにしてたけど断った。一緒に入ったら……ぜったい上せちゃうから……。
でも、実は。学くんが服を脱ぐところは覗いて見てた。
あの鋼の体に、私はおかしくされた。……私より強い人なんて、滅多にいなかったのに、彼は悠々とそのラインを飛び越えていった。
あっ……目が合っちゃった! にげろ!
上がった後は2人で卓球をして、今は並んでマッサージ。
考えていたのは……。
旅行、旅行か……。
真理愛とは日帰り旅行は出来ても、お泊りは出来なかったな。
ねぇ、と学くんに言いかけたら。
「次は皆で旅行しようか」
って……君はエスパーなのかな。
それにしても、学くんの弱点が卓球だったとはね。
ようやく、君の弱いところを見つけたよ……ってなに?え?胸元が……
ひぅ!
そういうことは早く言ってよ!
ごちそうさまでした、じゃ、な~~~~~い!!
寝室は……あぅ……やっぱりベットが1つ。
さっきので気まずいのに。
「ね、ねぇ学くん」
慌てた私は場を繋ぐため、学くんへ話しかけることにした。
「ひ、一目惚れって本当なのかな。だって真理愛は可愛いし、時子は綺麗じゃん。私なんか、ぜんぜん比べ物にならないよ!」
大学の時にたまに見た、呆れた顔で私を見てくる。
「嘘ついてどうする。……とはいえ言語化は難しいな。笑顔に撃ち抜かれたのか?いやでも少し影があるような感じも良かったり、あと距離感近くてドキドキしたな。甘い香りも本当にやばかった」
「待って!待って!本当に待って!」
待たないよって壁際に追い詰められた。壁ドンなんて、馬鹿みたいって思ってた。これ、だめ、逃げられない。
なんで、私は。いつの間に、この人のことを。こんなにも……。
気づけば耳元に学くんの顔がすぐそばまで来ていた。
「なあ聖奈、俺のものになってくれないか」
この声だ。
この声が私をおかしくする。
今まで持っていた罪の意識も。
常識も、恋愛観も。
全て塗り替えられた。
そして今、自分がこの後の人生でどうあるべきか、という生き方すらも
塗り替えられた。
「ひゃい……」
真理愛、ごめん。逃げられない。
そこから30分。
言葉だけで足腰立たないくらいに……ドロドロに溶かされた。
でも……その後は、もっとすごかった。
良かった、山の上で。
良かった、周りが林で。
良かった、誰にも聞かれなくて、本当に良かった……。
翌朝には私も南雲聖奈に名前を変えられていた。
指輪をお姫様に差し出すように付けられた。
好きだよ、可愛いよ、愛しているよって何度も言われた。
親友と同じ人を好きになって、一緒に結婚するなんて……考えてもいなかったよ、学くん。




