おまけ一話 真理愛デート
真理愛──
その日、正を聖奈ちゃん達に預けて、がっくんがデートに誘ってくれた。
時子さんがくれた可愛い服を着て、がっくんにエスコートされて……。
私はがっくんにデートへ連れ出された。
映画を見て、カフェに行って、街をブラブラして……最後は夜景の見えるレストランでお食事をした。
ずっとずっとカッコ良くなったがっくんを見ていた。
もう絶対に出来ないと思っていたから。
涙が出そうになった。
今は、がっくんから手を繋いでくれて公園を散歩している。……もしかしてプロポーズとか、してくれるのかなぁ。って期待した。
でも、10分経っても、20分経っても、一向にそんな話題は出なかった。
時子さんの旦那さんだもんね。
でも……聖奈ちゃんには一目惚れだって、言ったんだよね……。
じゃあ私は……?
わっ……。
考え事していたら、止まったがっくんにぶつかっちゃった……。
にっこりと優しい笑顔で見つめてくれてる。
立ち止まって私を見つめてくれる。優しい瞳。
でもこれじゃあ前と……中学の頃と変わらない。
私はがっくんの……何なんだろう……。
「今日は楽しめたか?」
がっくんが笑顔のまま私に問いかける。
「……」
私は……なんとなく答えられなかった。
「……どうした?」
楽しかった。楽しかったよ、最高に!
出来ないと思っていたデートがやっとできたの。
がっくんがずっと手を握ってくれたの。
もう絶対に出来ないと思っていたのに。
でも、でもまだ怖いの。
夢なんじゃないかって。
嘘なんじゃないかって。
まだ信じられない自分がいるの。
だから、そんな自分の言ってはいけない本音が零れてしまった。
「……なんで私にだけ好きとか愛してるって言ってくれないのぉ」
がっくんのこと、困らせたくないけど、でもやっぱり辛くて……。
「必要か」
がっくんの笑顔が消えちゃった。怖い顔で私の顔をじっと見てくる。
「必要!だよぉ……」
勇気を振り絞って、気持ちを伝えた。
「じゃあ」
「これから言うから」
「もし……ったら罰ゲームな」
「えっ」
「いくぞ」
「待って待ってがっくん待って!」
「真理愛、好きだ。愛している。……もう、絶対に離さない」
はひゅっ……。
それは耳元で囁かれた。
一音一音が、私の頭を揺さぶった。
腰が抜けて座り込みそうになる……だけじゃない。罰ゲームになっちゃう……。
「まってっていったにょにぇ」
呂律が回らない。
「おっと……大丈夫か、真理愛」
座り込みそうな私を優しくがっくんが抱き留めてくれた。
それだけで体が簡単にがっくんを受け入れる準備を始めてしまう。
「だめぇ……」
「どうする?家まで我慢できるか」
「できにゃい……」
「どうしたい?言わなきゃこのまま連れ帰っちまうぞ?」
「あそこ……に寄りたいです」
「ん?どこかな」
「がっくんいじわるしないでぇ……。わかってるのにぃ……。ホテル……ホテルに、寄りたい……」
「いつの間に、真理愛はそんなにエッチになっちゃったんだ……」
わかってる、わかっててこの人はイジワルしてくる。
でも何も言えなくて、俯いてしまう。スカートの端をギュって握って……。
「……今、少しでも他の男のことを考えたか」
がっくんが、私の目を覗き込んでくる。獣の目で私のことを品定めするようにじっと見てくる。
あ……だめっ、その目はだめなの!
「……まだ、足らなかったか」
今度こそ、本当に腰が抜けてしまった。
ビリビリと電気が走る。ここ、外なのに!
がっくんの目に炎が宿る。
だめ、だめだよがっくん。そう思っているのに私の心も体も、既にがっくんを受け入れる状態に成っていた。
がっくんが、私のことをお姫様抱っこして、そのままホテルに連れ込まれて……罰ゲームは朝まで止まらなかった……。
朝……昼?時間がわからない。でも、起きたら薬指に指輪が付けられていた。
ふわって後ろから抱きしめられて。
「真理愛、愛してる。結婚しよう。……拒否は認めないけどな」
呼吸が止まりそうになる。
溢れた涙で、指輪が見えない。
いいの?私がお嫁さんになってもいいのかな?
だって、だって……。
「真理愛、拒否は認めないと言った。お前の返事は頷くだけだ」
その日、私は南雲真理愛に 名前を変えた。




