第二十四話 昨夜はお楽しみでしたね
学──
3人で風呂から上がり、髪を乾かす。どうしても時子が長いから、先にリビングへ真理愛を連れて向かうことにした。
「聖奈ちゃん!動いて大丈夫なの!」
先に扉を開けた真理愛が驚く。
俺もリビングを覗いてみると、正にミルクを上げる聖奈の姿があった。
「少し歩くくらいなら、もう大丈夫。正もお腹すいちゃったし」
そう言って慣れた手つきで正にげっぷをさせる聖奈であった。
「それよりも~昨夜はお楽しみでしたね」
ニヨニヨとした顔で真理愛と俺に舐めまわすような目線を向けてくる。
真っ赤になる真理愛と……。
「あぁ!めちゃくちゃ楽しんだぞ!」
俺には効かない。
「うわぁ~つまんない~」
俺を酒の肴にでもしようとしたのだろうが、そうは問屋が卸さない。
「聖奈ちゃん、変わるよ」
「ん、あんた寝た?私なら大丈夫だけど」
「大丈夫、それにだっこしたいから」
「ん、さんきゅ」
真理愛と聖奈は、慣れた手つきで正をあやしている。これが、俺の子供か……。
「ねぇ真理愛。学くんにも抱っこしてもらいなよ」
!?急に振られて俺も困惑するしかない。いやでも俺の子供か!え、どうやって抱けばいいんだ!?
「がっくん、抱っこしてもらっても良いかな」
おずおずと真理愛が俺に聞いてくる。
「そういう遠慮はもう要らないって昨日、言っただろ」
「あ……うん!正のこと抱っこしてあげて!」
「任せとけ!」
ぶりゅりゅりゅりゅ。
抱っこした途端に、これですか……。いや不良親父が悪いんだ、ほんとごめんな、正。
2人の連携が凄すぎた。おむつ交換がそんな一瞬で終わるのか!?俺なら出来ない!もちろんこれから練習するが、何だあの速さは!
「慣れればすぐだよ」
「練習あるのみ」
なるほど、俺も出来るように頑張るしかないな。
「ねぇ学くん。言えなかった事やっぱり言っておくね」
聖奈が珍しく緊張した面持ちで、そう話しかけてきた。
「言おうとすると緊張するな……怒られても、仕方ないし。もしかしたら殴られるかもね……」
真理愛も思い当たることがあったのか、暗い表情を浮かべている。
ごくりと喉を鳴らす。
「あのね、この7年半くらいで、一番真理愛を抱いたのは……私なんだ」
「え!?」
リビングの扉を開けて入ってきたまま固まっている時子がとんでもなく大きい裏声で驚いた。
「殴っていいよ、学くん。私はそれだけのことをした」
「いや殴らんけど」
「そんな!だって私は真理愛のピーーーーをピーーーーしたり、一晩中ピーーーーしたりしたんだよ!あと会社の試作品試させたり、感想書かせたり!まり」
「もうやめて!」
真理愛がクッションを聖奈に投げつけた。
「そういう人、ほんとにいるんだぁ」
じゃない時子!興味を持つな!キラキラした目で2人を見るな!
「聖奈は真理愛を7年間も守ってくれた恩人だ。だから怒ったりしないよ」
「学くん……」
「それに俺の方が真理愛を気持ちよくしたしな」
「あ゛?」
「聖奈よりも俺の方が上だから」
「はぁ?素人が何ほざいてんじゃボケ。お前表出ろ!」
ギャースカギャースカ、リビングが騒がしくなったが、視界の端には呆れる時子と真理愛が談笑する姿を見た。
あぁ今、俺幸せだ。ありがとう時子。ありがとう聖奈。ありがとう真理愛。
俺が、これからみんなを幸せにするからな。




