今日もあの人がいた。
今日もあの人がいた。
もう空は夕焼けで、朱色がそろそろ薄暗くなる頃。私は窓際で、あの人が走る背中をただ見つめていた。
背番号は四番。私の好きな数字を背負って、一生懸命にボールを追いかけている。
あの人はそうやって、一人でボールを追いかけることが好きみたい。私と似ている気がする。
キーンコーンカーンコーン。
……音が廊下に響いて、私のところで止まる。ちょっとびっくりした。
「時間って、早いのね」
自然と口から出る声色は、どこか艶めかしく大人びている。喉が熱いせいだろうか。
私は我慢できずに、唾をつくり飲み込む。
あの人はまだボールに夢中で、ずっと下を向いている。周りには誰一人いない。本当に無防備だ。
――――頭がちょうど真下にきた。
そっと窓を明けて、手にしたものを角度をつけて降り落とす。
ぐさっ。
そんな効果音が聞こえてきそうな程、深々と刺さった。そのままあの人は膝から崩れて、倒れた。
頭からは細い糸のようなものが、いくつも飛び出していく。赤くてどす黒い。それはあの人の本性を表しているようで、とても素敵だ。