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出会い

 

「うおおおおおおお!!!!!!!!」


 夏休みが終わって少し経つ9月中頃平日の昼、俺は昼休み学校を抜け出してパン屋へ走っていた。

 走っている時の向かい風が涼しい。

 なんでわざわざ抜け出してパン屋へ向かうかだって?そんなの決まってる。


 学校から少し離れた商店街にある、木曜昼限定カレーパンを食べるためだ!!

 毎週このカレーパンを食べるために学校を抜け出している。カレーパンなんかコンビニに買いに行ったの買えばいい?学校の購買で買えばいい?

 ・・・うるさい!!商店街のカレーパンを食べたことがないからそんなこと言えるんだ。

 カラッと揚がったパン生地の中に眠っている絶品ちょい辛カレー。想像しただけでよだれが出る。


「カレーパン♪カレーパン♪」


 カレーパンに胸を躍らせ、味を思い返しながら走っていた。

 そのせいだ。


 右から飛び出してくる人がいたことに気が付かなかったのは。


「「えっ」」


 ドンっっっ!!!


「きゃっ!」

「うおっ!」


 避けるまもなく衝撃が走り、俺は倒れた。

 向こうも相当スピードを出していたのか、衝撃で体が痛い。


「いってー」


 立ち上がりながら、ぶつかってしまった人を見る。


 女の子だった。しかもとてつもない美少女。今まで見たことがないような綺麗な金色の髪にパッチリとした青い目。まるで物語から出てきたと言われても信じてしまうぐらいの美少女が倒れていた。

 ってか見惚れてる場合じゃない。


「すみません!大丈夫ですか?」


「いえ、こちらこそ、ごめんなさい」


 謝りながら俺が出していた手を掴んで女の子が立ち上がる。着ている服が制服っぽいな。こんな昼になんで学生が。俺も人のこと言えないけど。


「本当ですか?」

「えぇ、平気よ。ほらっどこも怪我してないわ」


 制服のスカートを払いながら少女がそう答え、クルッと回って大丈夫と言ったように笑って見せる。

 確かに見たところ大丈夫そうかな。怪我していないならもういいか。

 じゃあパン屋に行こう!こうしてる時間がもったいない!!


「それじゃあ、急いでいて、失礼します!」

「私も失礼するわ!」


 挨拶してパン屋へ走りだす。まっすぐ走っていけばあと3分でパン屋だ。

 それにしてもさっきの子可愛かったなー。お姫様みたいで。

 、、、どっかで見たことあるような。まあいっか、どうせ会うことももうないだろうし。

 そんなことよりカレーパン♪


「「あー、楽しみ~」」


 、、、ん?なんか声が被った。横から聞こえてきたような。


「「え?」」


 横を見るとさっきぶつかった美少女がすぐ横で走っていた。

 走りながら無言で見つめ合う俺と彼女。脳内に猛烈に嫌な予感が浮かび上がる。


「、、、あの、もしかしてですけど狙ってます?」

「、、、何をかしら?」

「カレーパン」

「、、、ええ狙ってるわ」


 そして再び無言になる俺と彼女。

 木曜昼限定カレーパンはその名の通り限定品なのだ。

 すなわち買いに来る人も多くカレーパンが無くなっていることも多々ある。

 もちろんそのためにわざわざ学校を抜け出して走って買いに行っているのだが。

 彼女も同じだろう。カレーパンが無くなる前に買うために走っている。


 つまり敵なのだ。俺たちは。カレーパンを狙うもの同士。

 俺たちの間に緊張が走っていく。


「ゆっくり行ったら!?さっきぶつかったばかりだし!」

「いえいえそちらこそ、歩いて行ったらどう!?怪我をしてるかもしれないわ!?」


 喋りながらもお互いに走るギアを上げて行く。道行く人には変に絶対に変に見られているだろう。

 だが譲るわけにはいかないのだ。

 万が1いや億が1でもカレーパンを失うわけにはいかないのだから。


「絶対ゆずらねえぞおおおおお!!!!!!」

「こっちのセリフよおおおおおお!!!!!」


 気づけばお互いに全力で走っていた。そう負けるわけにはいかないのだ。

 カレーパンを食べるために!!

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