第七話 給食の危機!?
「ですから校長先生!これはいったい!ど・う・い・う・ことですかぁー!」
私、ユキはただいま校長室に怒鳴りこ・・おっとアブナイ。質問に来ています。
事の詳細は、5分前にさかのぼる。
「ユキ、大変だー!また校長先生から依頼(無茶ぶり)が来たぞぉ!」
とリョウが駆け込んできた。
「はあ、また?なんなのあのたぬき・・」
私の口がこんなに悪くなるのには訳がある。今までも幾度となく無茶ぶりが来たからだ。私とミユキはそれぞれ学級の副委員長、委員長だけど、なんとなんと、高校とかだと生徒会?に位置する、学校会の会長とかも務めてる。ちなみにこっちは私が会長、ミユキが副会長、あと6年のひとが一人副会長。学年は関係なく立候補からの投票で決まるので、5年生が食い込むことも別に珍しくはない、はず。上層部に二人は異例らしいけど。そしてなんとリョウも会員だ。学校会というのは、学校をよくするために活動する会だ。クリエイティブな考え方、客観的に物事を判断する力が必要といわれているためか、立候補する人自体いつも前に出ている人が多く、その中からふさわしい少数精鋭に絞る。そのため激務なのだが、今年は特にそれが顕著らしい。それもこれも、あの校長がいままでにない、無茶ぶりをしてくるからだ。
「ほんっとに、何考えてるの。あのくそじ・・・」
「ちょい待ちユキ、それは言っちゃいけないヤツ。」
そう言って私に声をかけたのはケイ。ミユキとともに私とリョウの最後の砦。そしてこのケイもまた、学校会の会員。
「でもでもー!」
「いや待て。今回のことは今までとはちょっと違うらしいぞ。」
ちょっとやばい言葉が出そうになった私を止めて、リョウが言った。
「なんでも、学校給食の危機を救ってほしいとどっかのお偉いさんから依頼がきたらしい。詳しいことは校長室で教えるから、学校会の8人、なるべく全員を連れてこいってさ。」
「仕事だね。切り替えるか。」
公私は分けるべきだと考えている。今、この時は公だろう。ノートパソコンと、書記用の普通のノートを持つ。
「「「はい、会長」」」
リョウ、ミユキ、ケイがそろってニカっと笑いながら返事をした。
そして今である。
「ですから校長先生!これはいったい!ど・う・い・う・ことですかぁー!」
確かに公私はわけるべきだといった。だが、だが。一度聞かないことには気が済まない。それもこれも、校長室に入ったとたんに、
⋯国のお偉いさんがあと五分で到着する。心の準備をして待っていないさい。まあ、大丈夫だと思うがな。
なんて言われた日にゃあ、こんなことにもなるでしょう。
「すみません、取り乱しました。改めてお聞きいたします。いったい、どういうことなのでしょうか。」
「さすがはわが校の学校会だね。切り替えが早い。まあ、まあ。ことの仔細はそのお偉いさんが教えてくれるから。」
「そのお偉いさんのお名前をお聞きしてよろしいですか?挨拶のときに、『お偉いさん』なんて呼ぶわけにもいかないでしょう。」
「たしかにユキくんのいう通りだ。しかし本当に、肝っ玉が据わってるねえ。ユキ君が学校会長になってくれてうれしいよ。でもまさか、スイッチを入れた姿しか見たことがない下級生は思うまい。いたずらとかのほうでも、5年生メンバーは校長室の常習犯だということはね。それで君たちが知りたいのは、お偉いさんの名前でいいんだね?」
「一言余計ですね。はい。私もある程度時事はやれますし、何よりミユキ副会長がいますから。」
ー確かにミユキ君の時事知識には目を見張るが、ユキ君も十分小学生離れした時事知識を持ってるから。
ある程度じゃないから。ほんとになに、この子達。
悪そうな顔をした校長がこのようなことを内心で思っているとは知らず、ユキは真剣な顔で次の一言を待つ。そしてその間にノート書記をすることになっているケイがノートを準備する。
「この学校に来るお偉いさんの名前はねえ、文部科学省大臣・広江 正文大臣だよ。」
思考がフリーズしかけた学校会。そして、
「「「文部科学省大臣、広江 正文ぃー!」」」
と、叫ぶほかなかった。
この物語はフィクションです。