第四話 5-2の日常四
ぐうー。腹の虫がなる。当たり前だ。あと一時間で給食なのだから。もうおなかペコペコ。
だというのに・・・・・・四時間目は、体育なのだ!小学校の科目の中で一番エネルギーを消費する。なぜ、なぜ四時間目に体育をするのか。それは永遠の謎である。
「あーもう、腹減ったー!ユキ、なんか菓子とか持ってない?」
そう話しかけてきたのはリョウ。なんで私に聞いてくるかというと、私がいっつもお菓子をポケットに忍ばせているから。『非常食』なんて言っていっつも登下校中に食べてる。またの名を、『校則違反の塊』。
結構センスがあるでしょ?うふふん。
「この私がもっていないとでも?まあでも、リョウにはあーげない!日頃の恨み!ほしかったらその生意気を治すんだな。」
「へえ、持ってるんだあ。先生に行っちゃお♪いわないでほしかったら、わ・た・せ。」
「くうー!その手はずるいだろー!卑怯者!」
そう言って私とリョウは取っ組み合いを始める。
「まあまあまあまあ。落ち着いて落ち着いて。てかなんでユキはお菓子持ってきてるの!おいてきなさいっていったでしょ。そしてリョウも。そのお菓子を取り合うんじゃないの。やめなさいって。やめなっていってるでしょ?二人とも、給食ハンデくらいたいの?」
給食ハンデとは、その日に悪いことをした人がくらうハンデである。増やしたい人には大きく、みんなが増やし始めてから10秒は取りに行けない。そしてこのハンデを食らう人を決めるのが、学級委員長であるミユキと、先生なのだ。ちなみに私は副委員長。投票のとき、1票差で負けた。
なんでこんなハンデが存在するかというと、5-2の増やしたい人たちは、いたずらっ子が多い。わたしとリョウがその代表ではあるけど、ほかにもいたずらっ子はいる。だからいたずら防止のために学級委員会で決まったのだ。もちろん、いたずらっ子たちは前科がありまくるため反論できず、唯一反論できるような言い分(屁理屈)を考えれそうな私は『中立』を義務付けられた司会に封印されて、みな成すすべもなく、ほかの人たちの満場一致によってきめられてしまった。学級委員会では委員長と副委員長で司会を回しているが、たまたま私が司会のときだった。もしかしたらこれはすべてミユキの策略だったのかもしれない。
「「やめます。やめますから給食ハンデだけはやめてー!」」
そんな風にじゃれあっていたら、小原先生の声が響いた。
「皆さん、そろそろ始めますよー。今日は、バスケットボールをします。いつものチームですよ。女子と男子に分かれてください。そのうえで、給食当番のAはんとBはんです。」
わたしはAはんだ。じまんじゃあないけど、私は背が高い。だから結構バスケも強い。そして何より、今のチームにはミユキがいる。いつも支持を出してチームをうまく回してくれる。安心してボールを取って、周りの子にパスできる。やっぱり、ミユキはすごいのだ。リーダーとして必要なことをしっかり兼ねそろえている。まあまじめすぎるところはあるけど、そこまでがミユキ。わたしが大好きな親友なのだ。わたしが調子に乗って、踏み外しそうになった時にストッパーになってくれる。お姉ちゃんみたいな存在。
「ミユキ、頑張るよ。」
「うん。」
ピー。試合開始の笛が鳴る。
まずはジャンプボール。審判がボールをあげるから、そのボールを各チームから一人ずつ出して、ジャンプして自陣に入れる。
そこからがスタート。わたしがチームの中で一番背が高いから、ジャンプボールは私の役目。ボールが上がる。全神経を研ぎ澄まして、ボールを取りに行く。ジャンプして、自分が出せる最大の力でボールをはじく。ぺしっと小気味よい音がして、ボールがミユキのほうに飛んで行った。
そしてミユキがアイリにパスする。アイリは私たちの学年の中でもトップクラスの体力を誇り、個人競技、団体競技どちらともで優勝している。アイリの高速ドリブルのパンパンっという音がコート内に響く。そのままゴールのまえまでいき、あっという間に一点が入った。
支持はミユキが出してくれる。シュートはアイリがしてくれる。わたしはこの体格を生かせるように、ボールを取る役目を任されている。今はただ、そこに集中するだけ。シュートをしたら、今度は相手がボールを持つ。だから奪いに行く。わたしたちにボールが渡れば、連係プレーでシュートされてしまうから相手チームはボールを守ることに必死。ドリブルをしながら私たちの陣に近づいてくる。思ったより守りが固い。同チームのほかの子が取ろうとするけれど、ボールに手が届いていない。でも、その瞬間に生まれた防御の隙を私は見逃さなかった。肩幅の広さを利用して、ボールを持っている相手の周りを囲う。そして混乱した相手の隙を狙い、ボールを取る。そしてそのままアイリにパス。順調に点数が入っている。このようなことが何回か続いた後、試合終了の笛が鳴った。
相手チームには一点も入れさせず、20-0で私たちのチームが勝った。そうして4時間目が終わる。
次は、給食だ。