第十三話 給食会議
お偉いさんが再来した昼休みから二時間後。五時間目と六時間目が終わったユキ達学校会は放課後の業務を終わらせ、給食会議に入っていた。
「これより給食会議を始めます。」
ユキの号令で会議が始まる。
学校会室には、狸校長、ミユキ、六年生の副会長、リョウ、ケイ、五年の役員がいる。
「さて、ついこないだ緊急会議を開きましたが、またまた広江大臣様が本番が一か月後という大爆弾を落としてくれました。これからはこの議題の会議の名前は給食会議とします。そして、肝心の依頼内容の詳しい報告をします。ケイ君、お願いします。」
書記のケイに紹介をお願いする。
「はい。まずもう一度確認しますが、広江大臣からの依頼内容は『給食費の無償化』の法案可決のための国会の場でのスピーチです。費用などの大人の問題は大臣方の方がお話されるようですので、私たちには給食のすばらしさを子供の口でアピールしてほしいそうです。この法案は政府提出法案で、子ども家庭庁の政策の一部だそうです。政治家ですらないわたしたち未成年が国会の場に行けるのも子ども家庭庁の取り組みによるものです。この取り組みが大々的に世間に公表されるのは明日で、本番の国会があるのは一か月後の1月13日となります。報告は以上です。」
何度聞いても信じられない。正式な場である国会に私たち子供を出すというのに、準備期間が一か月というのは正気なのか。
「ケイ君、ありがとうございます。先ほどの報告にあったように、準備期間は一か月です。そのうち土日を抜くと私たちが活動できるのはだいたい二十日程度。その中で公の場で大人に引けを取らないほどのスピーチの用意、そして立ち振る舞いなどの勉強もします。普段の学校会の業務と並行しながらですので、とても大変になると思いますが、頑張りましょう。今後の日程ですが、昼休みの毎日の活動時間を今まで通りの業務の時間とし、水曜日を除く放課後活動時間を国会での準備時間としたいと思います。よろしいでしょうか?」
「「「「はい。」」」」
すると、いままでずっと黙っていた校長が口を開いた。
「さて、すこしよろしいかな。まず、スピーチの依頼、おめでとう。これは君たちが今まで頑張ってきた成果だろう。こんな田舎の小学校に依頼が来たのだからね。」
そう言うと校長は微笑んだ。その時の校長は、教え子の成果を心から喜ぶ、教師の顔をしていた。
今までなんとなく茶化すような称賛しかもらったことがなかっただけに、学校会一同びっくりしている。
「「「「「っ!?・・・ありがとうございます。」」」」」
そして、みなで微笑み返した。また校長が話始める。
「さらに、君たちが国会へ未成年で参加する記念すべき第一号だよ。この取り組みの正式名称を教えてもらったのだけれどね、「未来を担う若者の育成政策」の中の「政治家育成プログラム」だそうだ。」
「別に、政治家になるつもりなどみじんもないのですけど。」
と、ユキ。
「とにかく、国を引っ張ていく素質のある若者を育成することを目的としたもので、その第一号なのだから、とても栄誉な・・ってそんなのわかってるし、興味ないのか。まあとりあえず、国会の日の新聞の一面を飾るだろうね。」
「すっげえ楽しみ!」
リョウはウキウキの様子。
「校長先生、ありがとうございます。とにかく、私たちはそのとーっても「栄誉」あるお役目の準備を頑張りましょう。これで、会議を終わります。」
給食戦争開戦まで、あと30日。学校会が今後の方針を決めた。