表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

君と僕の表情

作者: 彩情 一式

 ずっと空を眺めていた。朝も昼も夜もずっと星が浮かぶ空を。僕もいつかあの星のように自由に浮いてみたかった。


「何してるの?」


「星を見てる」


「そ、今日はどう?」


「いつもより楽しそうだよ」


 僕はいつも星の表情を見ている。表情といっても、星の動きがゆっくりかどうかや星同士が混在してできる模様のようなものを見て勝手に解釈しているだけだ。


「ふーん、あなたは楽しい?」


「いつも通りかな」


「あやふやだなぁ」


 さっきから話しかけてくるのは唯一の友人で、空を眺めているといつも声をかけてくる。どうやら僕が星の表情をいつも決めつけているのが面白いらしい。


「君は僕と話して楽しいの?」


「楽しいよ。あなたの感性は独特だもの」


「そっか、それならいいけど」


 会話はいつもこの程度で、後は友人が寝落ちするまで星を眺めている。こんなところで寝たら風邪ひいちゃうから、友人が寝たらいつもおぶって帰るんだ。


「今日は眠くないかも」


「珍しいね。昼寝でもし過ぎたの?」


「いや、昼は散歩してた」


「なら少しは疲れてるんじゃない?」


「さぁ?どうだろうね?」


「君自身のことじゃないか……」


「私は君と話したい気分なんだ」


「いつも話してるじゃないですか」


 暇人なのかもしれない。それなら他のことをして暇を潰してほしいと思う時もあるが、今は少し心地よくなってきている。


「私の表情は見てくれないの?」


「君の表情?」


「星ばっか見りてないで、たまには私を見てほしいな」


 確かに表情をよくみたことはない。いつもどんな表情をして僕と星を見ているのだろうか。


「お、見てくれるのかい?」


 飄々としている感じの表情だな。昨日はどうだったっけ。確か、疲れて眠そうだったような。


「どうかな、私は?」


 でも今日は昼間散歩したと言っていた。昨日は疲れていたんじゃなくて単純に眠かったのか。


「おーい」


 今日は星よりも楽しそうな気がするが、それは笑顔を間近に見るのが初めてだから、僕がそう感じているだけなのかもしれない。


「……そこまで見つめられると照れるんだけど…」


 いつも会っているからわかるだろうと思ったけど難しいな。今どんな表情をしているのかわからない。


「………」


「痛ッ」


 急にほっぺをつねられてしまった。僕が何をしたっていうんだ。


「…見過ぎ」


「見てって言ったのは君だろう?」


「そうだけど……どうだった?」


「わからない。けど、そうだな……星よりも君の表情の方が好きかな」


「…………そう」


「明日から君を眺めるのもいいかもね」


 コロコロ変わる表情は面白い。星も変わるが雨や曇りの時は見えない。


「明日から…?私を?」


「うん」


「……いいよ」


「ありがとう。明日も来てくれる?」


「うん」


 こうしていつの間にか星の表情から友人の表情を眺める毎日に変わっていった。友人も毎日楽しそうだから僕は嬉しい。彼女の表情を見ている僕は、どんな表情をしているのかな。


「あなた、幸せそうな表情をしてるよ」


 一度聞いてみたらそう返ってきた。僕は今、幸せなんだ。僕もそう感じているから間違いない。これからもずっと、彼女の表情を見れるのなら、僕の表情を見ていてくれるのなら幸せだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ