きっかけ4
前回のあらすじ
吹雪はなんとモップのキャンペーンに当選してしまった。専属スタッフとリアルで会うことになって…
翌日
家の前に黒塗りの高級車が停まっており、とても困惑した。そこから降りてきたのは、ビシッと決まったスーツを着たシュッとした女性だった。
「どうも、サナ様、私、橘響と申します。響とお呼びください」
そう言い、名刺を渡してくる。
「あ、ど、どうも、ふぶ…いえ、サナです」
緊張しながら挨拶を交わすと、響は車に戻り、こちらを呼んできた。
「サナ様、お乗りください」
「あ、あの!助手席にのってもいいでしょうか」
「後部座席でも助手席でもどちらでも良いですよ」
私は助手席から眺めることが好きなので、助手席に座った。
「あ、そういえばこれからカフェに行くんですよね?」
「そうですね、まぁ、そのあとに一つ、上から連れて来いと言われたので本社へいきます」
疑問を投げかけるとすぐに答えが返ってくる。すごいなぁ、さすが大人の女性といったところかな。
窓の外を眺めること15分。
「ここです。もう予約はとっていますので」
連れてこられたのはどこか落ち着いた、完全に個室な部屋だった。
「注文とかしていいんですか?」
「どうぞ、経費から落ちますので」
そう言われ、モニターを操作する。最近のカフェはメニューがモニターで表示されるから本当に便利。
「あ、これおいしそう。……っすぅ」
値段がおかしい。ふつうのカフェってコーヒー一杯で700円かかるものなの?
「どうしました?顔色が悪いようですが」
「あ、大丈夫です。企業の強さを実感しただけなので」
「そうですか、安心しました。それで、どれにしますか?」
「あ、このコーヒーとふつうのショートケーキでお願いします」
そう告げると、響さんはスマホを操作した。どうやらスマホで注文を取ったようだ。
「注文したものがくるまで世間ばなしでもしましょうか」
「そうですね」
「サナ様はなぜモップのあのキャンペーンに?」
早速質問をもらってしまった。でも、これくらいは予想済み。
「友人にモップについて教えてもらったんです。で、SNSでいろいろと調べていた見つけて、応募した感じですね」
「そうだったんですね。…ちなみに、当選した時の気持ちはどうでしたか?」
「えっと…恥ずかしいんですが、気持ちの整理がつきませんでした。確認してから10分はベッドで足をバタバタさせてました」
めっちゃ恥ずかしいんですけど、子供っぽいとか思われてないかな。
「かわいらしい反応ですね。やはりあなたを選んだのは間違いではなかったようです」
「あ、ありがとうございます?」
どういうことだろう。私にはあまり関係ないことだよね。
「あ、注文したものが来ましたね。いただきましょうか」
「あ、そうですね。響さんは私と同じですか?」
響さんが注文したものは私が注文したものと似ている。それと、注文したのが来るのがとても早い相当混んでない限り3分かからずに来るのかな?
「コーヒーが違いますね。サナ様はブラックですが、私は砂糖が入っているので」
私は甘いものばかりだと飽きるからブラックにしたけど、響さんはブラックダメなのかな?ま、今は関係ないことだよね。
「…では、改めまして当選、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「当選者のサナ様には、フルダイブセット1式が無料レンタルされます。また、我が社セントアースの全面的なサポート付きで、です」
「はい……え、聞いてないですよ。サポートの話」
サポートの話なんて手紙でもDMでもきてないよ。もしかしてサプライズ的な?いや、それはないか。
「サポートの話は後程するとして、もう一つ、専属のエンジニアがサナ様につきます」
………え?
「…え、エンジニアですか…しかも、私専属の?」
「そうですね、サナ様専属のエンジニアスタッフですね。彼女はかなりの凄腕なので、安心して任せちゃってください」
そのエンジニアさんとやらは女性らしい。相談とかしやすそうだし、女性の方でよかった。でも…
「なぜ私専属のスタッフが必要なんですか?フルダイブ機器ならセントアース社に問い合わせれば修理してもらえると聞いていますが」
そう、セット一式をレンタルするだけなのであれば専属スタッフなんていらないだろう。
「それにつきましては、後程本社に行った際にわかると思います。ここだと説明してもご理解できないかもしれませんので」
「そうですか、わかりました。…あ、サポートとはどのようなものなのですか?」
「その件も本社でするとわかりやすいのですが、いくつかあります。一つ目は、万が一壊してしまった際、修理費が全額本社が払うことになっています。ですが、壊すことも、故障することもないでしょうね。彼女が担当になるとそのようなことが絶対に起こらないようにしますので」
そんな壊すことなんてできるものなんだろうか。借りているものだから丁寧に扱うものだと思うのだけど。
「二つ目ですが、サナ様からの報告や通報、その他運営に対して送る連絡が素早く、ほかのプレイヤーたちより優遇されるというものです。」
報告が素早く送られるんだ。不具合とかがすぐに修正されるってことなのかな?
「ここでできる話は終わりました、質問は…先ほどされたのでいいですよね」
「そうですね、なんとなくわかりました」
「では、食べましょうか」
「はい」
まだあまり食べ進めていなかったケーキを口に運ぶ。
「んっ、おいしい」
クリームの甘さが口の中のコーヒーの苦みを消して、幸せな気分になる。
「そうですね。私もよくここに来るのですが、いつもはケーキなど頼まないので新しい発見です」
その後も雑談などを交わしながらケーキを食べた。食べ終わり、会計に行こうとすると、響さんに止められた。
「サナ様、代金は前払いしていますから大丈夫です。車に乗りましょう」
そうなんだ、これからどこに行くんだっけ。
「また同じところに座ってもいいですか?」
「どうぞ、それでは行きましょうか。
本社へ」
え?敬語が下っ手くそだって?……知ってますよ…私の日常で敬語を使うことがないから…
投稿する日を決めました。金曜、土曜、日曜に投稿します。できる限り頑張ります。
7/16
文章を少し修正