憧れの先生とエレベーターに閉じ込められて…
永瀬裕太は高校で化学を教えている今年30歳を迎える教師で、優しげで派手さは無いが整った顔立ちと、感情をあまり表に出さない落ち着いた雰囲気、また特別なトレーニングをしている訳ではないが、スリムながらにそれなりにしっかりとした胸と肩が白衣の上からでもよく分かり、180cmを越える長身で女子生徒の中ではとても人気が高かった。かと言ってそれに浮かれて調子に乗るようなタイプでもなく淡々と教師としての日々を過ごしていた。
「せーーーーーんせっ!!」永瀬の背中にドカッと体当たりをするように、高校2年生の瀬戸遥菜が後ろから抱き付いてきた。
「ちょ…こら、瀬戸!俺、淫行教師だと思われるだろ~!」と永瀬が返すと「へへへ、私、先生とだったらインコーしたいも~ん♪」とおどけて、永瀬と腕を組もうとまとわりついてくるのを「はいはい」と永瀬は軽くいなし、「先生が白衣の腕まくりしてるの好きー!肘の下の腕の筋肉の所がたまらん♪」「じゃあもう腕まくりすんのやめよ。」「先生~お姫様だっこして~♪」「ダメ。てかなんでだよ。(笑)」等といつものように微笑ましいやり取りをして、永瀬は化学準備室に戻って行った。
瀬戸遥菜は158cmと比較的小柄ながら、均整の取れたスタイルを持つ明るい美少女で、肩より少し伸びた美しい髪の毛をサラサラとなびかせ、キラキラと弾けるような可愛らしい笑顔を見せながら、窓から降り注ぐまだまだ夏の暑さの残る9月の日差しを浴びて、女友達と一緒に制服のスカートを揺らしながら軽やかに廊下を走って教室に戻って行った。
高校入学当初から、いわゆる一目惚れのような形で、遥菜はずっと永瀬に憧れて想いを寄せてきた。しかし年齢差や立場もあって、こんな風にふざけたように永瀬にアプローチをかけるのがやっと、という所であった。
男子生徒から告白をされるような事も度々あったが、どうしても永瀬以外の男性を好きだと思うことが出来ず、彼氏を作らないまま今に至っていた。
一方の永瀬は、当然、遥菜からの好意には気が付いているものの、立場を理由に対象外だと決め込んでいた。
教師・生徒としての立場や、年齢による法的な部分は大前提だが、実際の所は、もしも自分が遥菜に溺れてしまうような事が起きたとして、とっくに青春時代の過ぎてしまった自分と違って、これから大学進学、就職と未来が広がっている遥菜がいつかは自分から去って行ってしまうという事実に傷付きたくなくて、立場を言い訳にして遥菜の気持ちも自分の気持ちも見ないようにしているだけなのかもしれない。
遥菜の若さは自分には眩し過ぎる…自分への好意も一時的なものに過ぎないだろう…永瀬は心のどこかでそのように思っていた。
永瀬の勤務する、遥菜の通うこの高校は私立のいわゆる新設校で、校内はとても美しく環境も整っていて、オフィスビルにも見えなくないようなとても綺麗な建物だった。教師が教材を他のフロアに運ぶ時には教師専用のエレベーターを使用可能で、その日、永瀬は午後に授業で使用する資料を小脇に抱えてエレベーターに乗り込んだ。そろそろ昼休みが始まる時間帯で、これを運んだら今日の昼は何を食べようか等とぼんやり考えていた。
エレベーターのドアが閉まる直前、いきなり遥菜がエレベーターに飛び乗ってきた。
驚いた永瀬が「おい!瀬戸、挟まれたら危ないだろ!て言うか、このエレベーターは生徒使っちゃダメだって!」と声をかけたが「えへへ、ラッキー♪一瞬だけど先生と密室で2人きり~」といたずらっぽくキラキラの笑顔を見せるので、永瀬も思わず口元が緩んで「ホントお前は仕方ないなぁ…」と遥菜につられてつい微笑んでしまう。
エレベーターが上昇を始めた直後、ガッ!!!とエレベーターが異音を立てて、エレベーター内の電気がいきなり消えた。
「キャーーー!!」と突然の暗闇に驚いた遥菜が咄嗟に永瀬に抱き付く。永瀬は「瀬戸、大丈夫だよ、一時的な停電だろ。」と遥菜を落ち着かせた。電気はすぐついたがエレベーターは依然止まったままで開閉ボタンも利かない為、永瀬はエレベーター内の緊急ボタンを押し、エレベーターの管理センターへ連絡を試みた。
永瀬と管理センターでやり取りをした結果、どうやら管内で大規模な一時停電が起き、電気はすぐに復旧したものの、突然の電力供給のストップの影響でエレベーターのモーターの電気系統のどこかに異常が発生したようで、今から原因究明と復旧を行うとの事であった。
「先生、閉じ込められちゃったね♪ふふ。先生のこと、襲ってもいい?」と遥菜がいたずらっぽく笑う。「お前なぁ…それって普通、男の台詞なんじゃないの?」「じゃあ襲ってくれる?」「俺はオトナの女しか襲いません。」「じゃあ私がオトナの女になったら襲ってくれるの?」「…ああ言えばこう言う。。」と、軽快なやり取りをしているうちに、いつの間にか15分ほどの時間が過ぎていた。
ふと気付くと、少し前まで楽しそうに話しかけてきていた遥菜が黙り込んでいる事に気が付いた。「あ、昼だし腹減ったよな。」と永瀬が声をかけると「ううん…別に平気。」と答え、また黙り込んでしまった。少し心配になった永瀬が「具合悪いか?」と声をかけても「平気…。」と言葉少なに答えるのみの遥菜だったが、あまり気にもとめず、永瀬は午後の授業で使用する資料に何となく目を通し始めた。
しばらくの間、資料に集中していると、「とんとんとんとん…」と、エレベーターの床から音がして、ふと顔を上げると、遥菜が軽く足踏みをしていた。永瀬は、あっ!と気が付き「すまん、気が利かなくて。瀬戸、お手洗い行きたいんじゃないのか?」と聞くと、遥菜はカァッと顔を赤くし「…うん…。」と消え入りそうな声で、恥ずかしそうに頷いて俯いてしまった。いつも明るくて豪気な遥菜の珍しく恥じらう姿に、永瀬は純粋に可愛いな…と思った。ただ、この状況があまりに長く続くと遥菜も限界を迎えて我慢が出来なくなってしまうと思い、永瀬は再び管理センターに連絡し、エレベーター内に提出物を手渡そうとして乗り込んだ生徒がいる事、またその生徒が具合が悪くなってしまっているので一刻も早く復旧をお願い出来ないだろうかと伝えた。
遥菜が教員用のエレベーターを使ったと後から責められないように咄嗟に提出物を手渡そうとした事にして、またこれ以上遥菜に恥ずかしい思いをさせないよう、お手洗いを我慢している生徒が居るとは伝えずに、具合が悪くなってしまった生徒が居ると伝えた。
「先生…言わないでくれて、ありがと…。」遥菜は苦しそうな弱々しい声で、軽く微笑んで永瀬にお礼を伝えた。
遥菜は尿意を永瀬に悟られ告白した事で、もう隠さなくていいという安心感からか、さっきまでより落ち着きがなくなり、両足を擦り合わせたり、はぁ…はぁ…と苦しそうに吐息を漏らしたりしていた。その後、意を決したかのように「先生…。子供みたいで恥ずかしいんだけど…」とまで言って、恥ずかしさのあまり急にしゃくりあげて、大きな瞳からポロポロと涙をこぼしながら「もう…押さえてないと我慢できなくて…先生の前で…すごく恥ずかしくて嫌なんだけど…押さえててもいい…?」と聞いてきた。あまりのいじらしさと奥ゆかしい恥じらいに永瀬は胸を締め付けられそうになりながら「そんなの気にしなくていいから。俺は見ないから、押さえてていいから。」と伝えた。遥菜は涙を流しながら「うん…。」と頷き、大好きな人の前でこんな姿を晒している自分の情けなさと恥ずかしさに、ひっく…ひっく…としゃくりあげながら、制服のスカートがぐしゃぐしゃになるほど強く、遥菜のおしっこの出口を両手でぎゅっと押さえ、あまりに激しい尿意に耐え切れず腰をくねらせながら、前屈みになりお尻を後ろに突き出した“くの字”の姿勢で膝をガクガクと震わせながら、ひっきりなしに小さくステップを踏み続けて必死に尿意に耐えていた。
永瀬は何とか遥菜を救ってやりたいが、何もしてやれないもどかしさにやきもきとしていた。
遥菜は身体をブルブルと震わせながら、
「先生…寒い…。先生に寄りかかってもいい…?」と聞いてきた。確かに全館にエアコンの効いた校内はじっとしているには肌寒く、身体が冷えて汗をかかないから余計にその分の水分が遥菜の膀胱に送られてしまっているのは明らかで、永瀬は「いいよ」と遥菜を受け入れ、遥菜を後ろから抱き締めるような形で、白衣の前を開けて遥菜を後ろから包み込むようにして抱き締めてやり、遥菜の肩や腕を優しく摩擦して暖めてやった。
身長差がある事で逆に救われたが、永瀬の太ももくらいの高さに後ろに突き出した遥菜の柔らかなお尻があたり、また永瀬の顎の下の遥菜の艶やかな髪の毛から甘い香りが漂い「これは俺にとってもある意味拷問だな…」と永瀬は自責の険しい表情を浮かべた。
エレベーターに乗ってから45分が過ぎ、お昼休みも終わりかけた頃、遥菜はいよいよ限界が近付き、はっ…はっ…と息も絶え絶えに、永瀬にも伝わってくる程にブルブルと全身が震えていた。後ろを振り返って、涙で潤んだ大きな瞳で上目遣いに永瀬を見上げた遥菜が「…せんせぇ…もし…もし…私がお漏らししちゃったら…先生、私の事、嫌いになる…?」と弱々しく聞いてきた。今にも病気で命を落としそうな薄幸の美少女のように蒼白になり息も絶え絶えになりながらも、そんな心配をしてくる遥菜を永瀬は心底愛おしくいじらしく思い、「嫌いにならないよ。」とはっきり答えた。「えへへ…よかったぁ…。先生、優しい…。」遥菜は力なく微笑んだ。
永瀬は遥菜に、「俺は後ろを向いてるから、下着を下ろして、してもいいぞ?」と念の為確認してみたが、案の上、「好きな人の前で…そんな事…絶対出来ないよ…。」と答えが返ってきた。それから
「せんせぇ…もう…私…我慢出来ないよ…もう…漏れちゃいそう…汚しちゃうけど…本当にごめんなさい…。」と伝えた直後「あっ…あっ…ダメ…おしっこ…出ちゃうっ…せんせぇ、見ないでぇ…!」と遥菜は叫んだ。永瀬は咄嗟に遥菜を自分の方に向かせて、向き合った状態で遥菜の頭を永瀬の大きな手で包み込むようにして遥菜の身体をぎゅっと抱き締め「こうしてれば見えないから大丈夫」と伝えると、遥菜は安心したように永瀬の胸に顔を埋め、永瀬にしがみつきながら「あっ…あっ…せんせぇ…せんせぇ…」と絶頂を迎える女の子のように色っぽくも聞こえるような声色で喘ぎながら限界を迎え、じゅっ…じゅわっ…じゅ…じゅうぅぅぅーーーーーっ…じゅうぅぅぅーーーーーっ…と、遥菜がお漏らしをする音がエレベーター中に響き渡った。永瀬はその瞬間、遥菜を優しく強く抱き締めながら、心の中で「俺の敗けだ…」と呟いた。
じゅうぅぅぅーーーーー…じゅうぅぅぅーーーーー…という音を立てながら遥菜の下着をびしょびしょに濡らして遥菜の太ももを伝うおしっこ、また太ももを伝わずに下着からエレベーターの床に直接こぼれるおしっこのパラパラ…パラパラ…という音も小さく響いた。遥菜のおしっこの匂いがエレベーター中に漂ったが、永瀬は不思議と不快感を感じず、むしろその柔らかな香りに、遥菜に対する愛おしさが高まるような気がした。
遥菜のお漏らしが終わってからもしばらく2人で放心したまま抱き締め合っていたが、遥菜の呼吸が落ち着いたタイミングで、永瀬は白衣を脱いで遥菜に羽織らせてやり、何も言わず優しく遥菜の頭を撫でた。遥菜は少し無理して明るく「私が着ると、ロングワンピースみたい!」と、まだ涙で濡れた顔で微笑んで見せ、永瀬は優しく微笑み返した。
お昼休み終了の10分前、ようやくエレベーターの復旧作業が終わったようで、ウィーーンというモーター音と共に、ボタンを押した階に結果的に50分もの時間をかけてエレベーターが到着した。
立ったままのお漏らしだったので幸いにもスカートはさほど濡れずに済んだ為、制服に薬品がかかってしまったので永瀬の白衣を借りたという事にして、すぐに靴下を脱いで体育館シューズと体操服に着替えて、午後は体操服で過ごすよう永瀬が伝え、申し訳なさがる遥菜に床は俺が拭いておくからと伝え、午後の授業までに遥菜は教室に戻る事が出来た。
それ以降、遥菜は前までのように永瀬に気軽に話しかける事はなくなり、永瀬としても一抹の寂しさのようなものを感じたが、これで良かったんだ、今ならまだ引き返せる…と、自分の遥菜への愛情に目を向けないよう、それまでのように淡々と毎日を過ごしていった。選択科目との兼ね合いもあり、遥菜から積極的に永瀬にコンタクトしない事で、呆気ない程、互いに顔を合わせる機会はなくなり、生徒数の多さもあってごくたまに遠目で姿を確認する程度になってしまった。
それから約1年半の時が過ぎ、遥菜の学年の卒業式式典を終え、永瀬はひとり化学準備室に戻って物思いに耽りながら窓の外を眺めてコーヒーを飲んでいた。
「先生…」懐かしい声に永瀬が振り向く。そこには窓からの日差しを浴びて、すっかり大人びて美しく成長した遥菜の姿があった。
これだから女は怖いんだ…たった1年半の月日でこうも美しく変わってしまう…。諦観にも似た、しかしながらどこか清々しい諦めを永瀬は感じていた。
少し開けた窓から吹き込んだ風に遥菜の胸の下あたりまで美しく伸びた髪の毛がなびいて、永瀬は眩しそうに目を細めた。
「先生…私、やっぱりどうしても先生が好きです。私と付き合ってください。」永瀬を真っ直ぐな瞳で見詰めながら、遥菜は永瀬に告白した。
永瀬は思った、俺は臆病者だ、と。瀬戸遥菜の向こう見ずで純粋な若さを、眩い程のまっすぐな潔さを、自由に生きる美しさを怖がって怯えていた。言い訳を並べ立てるのはもう止めよう。ただのひとりの男として、今の自分が感じている正直な気持ち、自分がどうしたいか、それが全てじゃないのか?と心の中で自問し、ゆっくり立ち上がると、遥菜の前に歩み寄り、
「俺も瀬戸が好きだよ。こちらこそ、俺と付き合ってください。」と伝え、遥菜をそっと抱き締めた。
「せんせぇ…好き…大好き…」離れていた時間を埋めるように一気に気持ちが溢れ出し、永瀬にしがみつく遥菜の熱を帯びた甘い声に、永瀬は懐かしいあの日を思い出し目を閉じた。
窓から優しく吹き込む春の予感を感じさせる風が、2人の髪の毛を優しく揺らした。
〈あとがき〉
前作よりも登場人物たちの心情や心の動き、恋愛要素が多めかもしれません。
永瀬のモデルは、実在する私自身の憧れの人です(/▽\)♪
後日談「V・i・r・g・i・n」という作品をR18のミッドナイトノベルズに投稿させて頂きました(*^^*)
https://novel18.syosetu.com/n5859hh/
ミッドナイトノベルズも無料でご覧頂けますので、もし宜しかったらそちらもお願い致します♪