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土塊の戦士  作者: ライブイ
2章 王都
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第9話 王都トラビア

「まもなく王都です。もう見えてきましたよ」


 御者台から小窓を開けてエーリクが声をかけた。子窓越しに見える立派な石造りの外壁から王都トラビアに到着したと分かる。

 トラストの故郷の田舎町リゼラとは違い、その外壁は高さが三十メートルはあり、聞くところによるとマジックアイテムの魔方陣が刻まれていて物理的な強度を持つ結界を発生させることも出来るそうだ。大国の首都に相応しい立派な外壁を見て、トラストたちは安堵の息を吐いた。


「トラビアに来るのは初めてだな。今までの街で一番でけぇ」

「この国で一番難易度が高いダンジョンがある街だからな。あの外壁は魔物を外に出さない役割もあるんだろう」

「建国王でも攻略できなかったダンジョンだからね~魔物の素材も宝箱もすごいらしいな~」

「でもその分滞在する冒険者の質も、街にある支援も充実してるの。挑戦する価値はあるの」


「ようやくついた……お尻痛い……」

「お姉ちゃん、大丈夫?」


 「風の四竜」が興奮して気合を入れ直している横で、トラストたちはお尻を撫でていた。なれない馬車はきつかったのである。


 この世界で無数に発生しているダンジョンだが、現在では冒険者ギルドがその脅威度を調査しており、王都トラビアにあるダンジョン、通称「大地と地獄の宮殿」はA級ダンジョンに認定されている。

 ダンジョンは危険なものだが、ダンジョン内で見つかる貴重なマジックアイテムや魔物の素材は大きな利益を生み出すのだ。千年前に建国王がこのダンジョンに挑み、その補給基地としてダンジョンの周囲に街を作った。それがこのヒブムライン王国の始まりと言われている。


 そんな偉大な建国王でも攻略できなかったA級ダンジョンは危険度以上に攻略すべき目標だ。仮に攻略できれば国の英雄扱いになるほどの偉業とみなされ、血気盛んな冒険者や国の騎士団がこぞって迷宮に挑んでいるのだ。


 トラストの聞いた話によると、現在判明している限り「大地と地獄の宮殿」の最高踏破階層は建国王が到達した90層。90層のボスに敗走したと記録されており、現在は再び並ぶことができず、現在の最高踏破階層は騎士団の70層が最高らしい。


 あくまで聞いた話であり、まだ実際に見たわけではない。ダンジョンとはどのようなところだろうか。トラストはそんな思いを秘めてワクワクしながら外壁をくぐるのだった。


「ご乗車ありがとうございました。「風の四竜」の皆さん、トラビアに着いたので護衛依頼はここまでですね。依頼達成のサインをしましたのでこれをどうぞ」

「は~い。確かに貰ったわ~」

「それじゃあ坊主たち、またな」


 リゼラからトラビアまで一週間。途中で魔物や盗賊が襲ってきたが、強敵だったのは最初の盗賊だけだった。日本ではありえないほど物騒な旅であり、それ以上に馬車の乗り心地が悪い旅だったが、トラストは初めての旅にそれなりに満喫していた。


「そうだトラスト君、これあげる~」

「ありがとうございます……?ってこれ、あの盗賊が使っていた本じゃないですか!」


 別れ際にフラグラが本を渡してきた。

 それは最初に襲撃をしてきた盗賊が持っていた本であり、トラストが回収しフラグラに渡したものだ。


「それはたぶん、最近噂の魔導書だと思うわ~」

「魔導書、ですか?」

「う~ん。手にもって呪文を唱えると誰でも魔術が使える不思議な本だよ~。でも、私が聞いていたよりも威力が遥かに高かったけどね~」

「僕にくれるんですか?こんなすごいものを……衛兵とかに届けなくていいんですか?」

「トラスト君のおかげで勝てたからね~。それに盗賊の持ち物は討伐した人が全部もらえるから~なんか言われたらその時適当に対処すればいいのよ~」


 おっとりした口調だが、その眼に宿る意思は決定事項を述べているように見えた。

 トラストに本を渡すと、急いで先に行った三人に合流しに走っていっていた。


「それではアレナちゃん、トラスト君。宿まで案内しますよ」

「へ?宿がもうあるんですか?」

「ええ。ボレトさんから宿に泊まるのも目撃するまで着いていてくれと頼まれていますので」


 トラストはアレナと顔を見合わせながら過保護すぎないかと考えたが、12歳の少女と10歳の少年の二人組なら妥当だろう。





「今日は協会に顔だしてくるから、借家探しをお願いするわね」

「分かってるよ。俺は冒険者ギルドで仕事を見てくるね」


 商人の区画にある宿に泊まった次の日、アレナは教会へ登録しに、トラストは冒険者ギルドへ仕事探しに出かけた。


 トラビアは円形に外壁に囲まれた街であり、大まかに四つに分けられている。王城とその城下に立ち並び貴族街。王城とは反対側にあるダンジョンとそのすぐそばに建てられた冒険者ギルド、そしてその周囲に乱立する宿屋や商店。そしてその二つに挟まれた一般人たちが暮らす場所、食料品や雑貨などの日用品を扱う商人の区画と、それ以外の天気屋や郵便屋などの雑多な区画だ。

 冒険者たちの区画に向かうトラスト。目に入るのはリゼラとは大違いな賑わいを見せる大通り。屋台や露店が立ち並び店主たちがひっきりなしに客寄せに励んでいるが、トラストの目には武具や防具、各種アイテムを売りさばく商人が映っていた。

 命を懸けるダンジョンで栄えた国の首都なのだから当然だが、どれもリゼラでは見られなかったものだ。


「冒険者ギルドでっか!」


 大通りを抜けた突き当り、冒険者ギルドが君臨していた。

 君臨、という様に、あまりにも巨大だ。リゼラの冒険者ギルドの十倍は大きい。高さは三階建てだが、奥行きがあまりにも広い。隣接した建物も冒険者ギルドの管理下にあり。一番手前にある役所の様な建物で依頼の受注や金銭のやり取りを行い、素材の鑑定や解体は周囲の建物で行っているのだ。

 総じていえば、王都トラビアの中に冒険者の街がもう一つあるようなものといえる。トラビアの南側の区画全体が冒険者ギルドを中心としたショッピングセンターのように出来ており、冒険者ギルドが全て取り仕切っているのだ。


 トラストは興奮しながら冒険者ギルドに入る。

 時間的に昼前であるため、人はほとんどいなかった。


 冒険者ギルドに入り、依頼票が掲示されている掲示板に近づいていく。

 どこの冒険者ギルドであっても、収入源は依頼の報酬だ。行政から危険な害獣の駆除の一環として魔物の討伐を依頼されるが、ダンジョンの場合は基本的に討伐依頼の必要性が薄く、素材の買取りが主な依頼だ。

 その中でも魔物からとれる魔石が定番だ。一般人にも普及しているマジックアイテムは魔力を注ぎ込むと起動するが、一般人は魔力が低いため魔石を使い代用する。役割としては地球で言う電池に近いため需要は無くなることは無くいつでも一定の売値が付く。ただし魔石にも質があり、低ランクの魔物からとれる魔石はクズ魔石と呼ばれ大した値段は付かない。グラムいくらで売られるものであり駆け出し冒険者が主に集めるものだ。対して高ランクの魔物からとれる魔石は質が高いため、一般人ではなく軍や騎士団が戦闘用のマジックアイテムの制作につかうため非常に高値が付く。


「魔石以外だとやっぱり魔獣の毛皮とか肉がいいのか……この街で出回っているオークの肉や魔兎の肉は高級品らしいし、ボア系や狼系の牙は武器の素材になるのか。じゃあ適当に魔物を退治してクズ魔石を剥ぎ取って、大物の魔物の肉や素材をメインにするのがいいかな。あ、でも肉や素材ってどのくらい重いんだろう」

「そこの君、新人かい?」


 トラストはん?と疑問を浮かべて振り返ると、そこには十五歳くらいの少年がいた。皮の鎧に要所のみ金属装甲を当てた防具を身に着け、腰には剣を下げている。少年は自分を笑顔で見下ろし、後ろには三人ほど同じ年代の少年たちがいてこちらを呆れた目で見ている。


「君、見たところ新人かな?僕はヘクタ、僕たちは5階層あたりを狩場にしているんだけど、良ければ僕たちと一緒にダンジョンに行かないかい?ちょうど荷物持ちが欲しかったんだ」


 どうやら荷物持ちの誘いのようだ。冒険者は戦うことが主な仕事でありその戦果を金銭に変えるがが、持ち帰れる戦果の量には限りがある。背負子なポーチを持ち込みいっぱいになればそれ以上は持ち帰ることができないため、それ以上の戦闘は無駄になってしまうのだ。

 そのためボーダーやサポーターと呼ばれるもの荷物持ちとして雇うことがある。

 しかし、トラストは不審者を見る目でジト目を向ける。


「荷物持ちはいいですけど……今からですか?」

「うっ……い、いや実は約束していた荷物持ちがこれなくなってしまってね。代わりを探していたんだよ」

「もうすぐお昼なので、むしろダンジョンから帰ってくる人の方が多いと思いますよ?この時間からダンジョンに行くんですか?」

「そ、それは……そうだ!俺たちはこの街の孤児の間では出世頭?として有名でな。いうことを聞いていればいいことが…‥」

「ヘクタ、もうあきらめようぜ」

「そうだよ。また明日探そうよ」

「いや……でも……」

「お前も悪かったな、俺たちは行くから」


 少年たちが去っていく背中を、トラストは不審げな顔で見つめていた。


「ま、いいか。とりあえず依頼を覚えたし、さっそくダンジョンに行ってみるか」


 頭を切り替えて、冒険者ギルドの向かいにあるダンジョンに向かった。


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