北斗七皇の誕生
それからは不良高校生が襲ってきた以外にはその日は何もなく夕方を迎えた。左の手の甲にある順位は2位のままだった。一方でミサキの手には何も書かれていない。ミサキはこのデスゲーム参加者ではないのか。すると、あの時殺した不良高校生のボーナスアップ分はどうなったのだろうか。そもそも、こんな異常な状態とはいえ、殺しが正当化されるべきなんだろうか。
自分の中で考えがグルグルと回っていく。
ミサキと共に夕焼けに染まる街を静かに歩いている。
時間が止まっても太陽は動くようだ。日は暮れてあたりは真っ暗になっていこうとする。それでも、周りの街を歩く人、車を運転している人、街中に群がる鳩、皆それぞれ不自然な形で静止している。そのおかげで僕たち以外の足音以外何も聞こえない。異様な静かさだ。暗くなるのに街灯がつかないってことは、やはり電気は通ってないのだろう。しかし、大きな道の通りにある巨大なモニターは静かにカウントダウンを映している。
残り時間は65:29:31。例外的に動くものもあるのだろう。
「今晩どうするの?電気はほとんど来てないようだし、このままだと完全に暗闇になりそう。」
ミサキはそう尋ねてくる。
「まずはお腹がすいた食料だ。コンビニで食べ物を買おう」近くにコンビニが見えたのでそういった。
コンビニ入ってもいつもの入店音がならない上、部屋は電灯が灯っておらず、やはり電気が来てないようだった。
僕は用を催したので、お手洗いに行った。すると水は流れた。水道は生きているようだ。
手を洗うと突然、手が強烈な閃光を放った。なんだろう。しかし、なぜだか分からないが本能的に僕の能力が誘発したのだと気づく。
一体なんだ??
「どうしたの?」
ミサキが両手いっぱいに菓子パンを抱えた状態でそう尋ねる。
「いや何でもない。水道は生きているようだけど、使わない方がいい。たぶんだけど、何かがある。」
「だったら、早く出た方がいいね。商品いっぱいもらって早く行こう。」
「でも、なんかそれ万引きみたいじゃないか?」
「私たちが生きていくためには食べ物が必要だよ。それにレジも止まっているみたいだし。」
確かに会計中のままオジサン二人が向かいあったままで止まっている。ちょっとそのシュールさに笑ってしまった。
するとミサキも笑った。僕の初恋の人であったミサキ、そのものように笑った。
確かにそうだ。この異常事態、食べるために食料を盗むことは正当化されるのかもしれない。
よく考えたら僕自身、しばらく何も口にしていなかったことに気づく。デスゲームの始まる前、昼も夜も関係なし自分の部屋の隅でずっと座っていたのだ。いつからモノを口にしていないのだろう。そう考えたら猛烈にお腹が空いた。
僕は片っ端からコンビニおにぎりを食べ始めた。
「もう食い意地張りすぎだよ。」
ミサキはニコニコ笑う。
自分でもこの空腹感は我慢できなかった。ただガムシャラに飯を食べるそれに一生懸命だった。
「あ、ハーゲンがある!」
彼女はうれしそうに言うとアイスを取り出した。電気が止まっているので冷凍庫も静止しているのに、アイスはまだ凍った状態のままだった。一体この世界はどんなルールで動いていて、そして止まっているのか。
「私お腹いっぱい大好物のハーゲンを食べるのが夢だったんだ。」ミサキはカゴいっぱいにハーゲンを詰めだす。ああこの天真爛漫さはミサキそのものだ。
「じゃあ、早く出よ。夜は暗くなりそうだから懐中電灯ももらっちゃおう!」
僕たちは、たらふくカゴに食料品と飲み物、そして懐中電灯をもって店から出た。
辺りはもう薄暗くなっていた。しかし、月は出ていた。その月は満月であり、それが明るさを示してくれて救いだった。
「とりあえず、その辺のホテルに泊めてもらおうかな」
僕はそう提案する。
彼女はほんのりと頬を赤らめながらうなずいた。
でも結局近ただのビジネスホテルだった。
二人はロビーでオジサンが店番をしている傍から、空いている部屋の鍵を盗みとり、その部屋と向かった。
するとベットが一つしかなかった。部屋の種類はダブルと書いてあったので、てっきりベッドが二つあるのかと思ったが、セミダブルのベッドをダブルと書いてあったのだ。
「部屋を変えよう」
「待って」
ミサキは裾を引っ張る。
「君の生きている温もりが欲しい。一緒に同じベッドで寝よう。」
ミサキは恥ずかしながらそういった。確かに僕は自殺しようとした身だ。心配になるのも無理はないだろう。
僕はうなずいて一緒のベッドで寝ることを決心した。
すると、暗い部屋の中でテレビのモニターが光った。
ッザザーーーー!
「こんばんわ。諸君。元気にお過ごしかな。」
砂嵐の後、暗い背景に黒いフードを被った人物が画面に現れた。あの時、デスゲームを説明をした人物だ。
「順位が大きく変動している。面白いことに、天運の才能を持つ者か、早くもゲームを理解して手段を択ばず能力を上げた者で傑出した者が私を除いて7人いる。」
じっと自分の左手の甲を見る。その数字は相変わらず「2」だ。
「自分の順位が低くて嘆く者もいるだろう。そこで挽回のチャンスを与える。これからその7人の今いる居場所を教える。」
するとディスプレイに街の地図と7つの光の点が映し出された。
その点の中には、このホテルの場所と合致する点もあった。まずい、この場所がバレる。しかし、この点の配置には見覚えがあった。
「そう偶然にもこの点は北斗七星の並びと酷似している。そこで彼らのことを[北斗七皇]と呼ぼう。」
「彼らを殺すことができたら大幅に自分の能力が見込まれる。あと64時間57分後には5000位以内に入れることは確実だろう。」
「順位の低い諸君、[北斗七皇]を殺せ。それが生き残るための道だ。」
ッザザーーーー!プツン
モニターからは何も映らなくなった。
ますいことになった。自分が[北斗七皇]とやらになってせいで、この街の能力者から自分が狙われる。
とりあえず、ミサキの手を引いて、ホテルの外へ飛び出していった。