能力者との初めての邂逅
それからは画面が何も音も聞こえなくなった。
止まったこの世界彼女の嗚咽する声のみが聞こえた。
僕はどうすることもなく彼女を抱きしめていたままだった。
何が起こったのか分からない。
でも、このまま彼女を放っておくことはできなかった。
「バチバチッ!ドカッーン!!!!」
遠くの方から爆発音が聞こえた。
止まった世界で動けるのは僕らのような人間しかいるはずがない。もしかしたら、そこに誰かいるかもしれない。
「ミサキ、行ってみよう。」
彼女の手を引っ張って、そう促した。彼女は涙ぐんだ目のまま、うなずいた。
そこでミサキ以外の人に会うことができたら、何かこの世界のことも分かるかもしれない。
僕はミサキと手を繋いだまま、爆発の起きた方向へ向かっていった。
すると、「バチバチッバ!ドカッーン!!!」
爆発音が断続的に聞こえ始めた。どうやら何回も爆発しているしているようだ。おかげでどこで爆発しているかが分かる。その音が鳴る方に近づいていく。
ドカーン!ドカーン!!音が徐々に大きくなるにつれて、焦げ臭ささが匂ってきた。そこに近づくにつれて肉の焼けたような独特の匂いがして、段々とその匂いが強くなってくる。
黒いマネキンが遠目からいくつも見えた。
いや、よく見るとこれ違う。これはマネキンなんかではない。
焼け焦げた人間なのだ。消し炭のように焼け焦げてしまって、辛うじて人の姿を保っているだけなのだ。恐ろしい光景に思わず前進の鳥肌が立った。
人が無残な姿で殺されている。コイツはヤバイ。意図的に人間を殺している。間違いなく出会うと殺される。まずい!
コツン。
ビルの曲がり角から、一人の男が歩いて現れた。
学生服を着ている様子からどうやら高校生のようだ。けれども、その学生服は改造してあり、あまり素行のよい生徒ではない様子だった。
「コイツは驚いた。この世界に本当に動いている人がいるとはな。お前が、例の能力者か。」
金髪のヤンキー風の高校生がそう呟いた。本能に殺気を感じた。コイツは僕たちを本気で殺す気だ。
僕は彼の姿を見るなり、ミサキの手を引いて踵を返して逃げ始めた。
「おいおい、逃げるのかよ。それにこんな時に女のとデートとは呑気なもんだな!!」
彼は悪意のある笑みを浮かべる。
「お前を殺したら、一気に能力の順位が上がるのか?この辺の止まっている雑魚どもを殺したら結構順位が上がったが、能力者であるお前を殺したらどの程度順位が上がるか興味がある」
金色に染めた髪の間から黄色い電気が迸る。
まずい。彼はこちらに攻撃するつもりだ。
僕はミサキの手を引いて思わず逃げ出した。
バチバチバチッ!!!
後ろから大きな音がする。
僕は思わず目をつぶった。すると目の前に電柱が爆発をした。
「チッ!はずしたか。」
僕は一目散に逃げた。
その後、何度かバチバチバチと轟音がしたが、わき目をふらず逃げ出したことが功を奏したのだろう。
あの不良学生から逃げきることができた。
とりあえずミサキと近くにある車の車庫の陰に隠れた。
バチバチドーン!!
辺りで大きな音がする。どうやらあの不良高校生は僕らを探しまわるためにあちらこちらに攻撃をしているようだ。