デスゲームの開始
止まった世界、僕とミサキだけが動いてしばらく見つめあった。
すると、ミサキは走ってきて僕を抱きしめた。
「何で死のうとしたの!!!」
彼女は号泣して、僕を強く強く抱きしめた。
僕は口ごもった。
っこういうとき何と言えばいいのだろう。
うまく答えることができない。
僕は黙ったまま、ミサキに抱きしめ返した。
「バカ…バカ…」
彼女は嗚咽交じりに、そう口にする。
音のない静止した世界で、彼女のすすり泣く声が残響していた。
その時である。
街にあるビルに埋め込まれたテレビが突然点灯した。
……ザーッザーッ…
砂嵐の後、暗い背景に黒いフードを被った人物が画面に現れた。
「諸君、世界は変わった。今の状況を見ればまあ分かると思うが。」
テレビの人物は老人にも機械的な合成音にも聞こえた。
「諸君、これからデスゲームを行ってもらう。そのルールを説明する。」
何を言っているんだ。
「諸君らには、何らかの異能力を授けた。ほらこの通り。」
テレビの中の人物は、左で林檎を掴み掲げた。
その人物の左手は老人のようであり、赤い文字で数字の「1」が書かれていた。
次の瞬間左手の林檎が赤い霧になって消えた。
「御覧の通りだ。私は林檎を消して見せたが、みな個人で能力は違う。例えば、炎を操る者、空を飛ぶ能力を持つものもいるだろう。」
「能力は種類も違えば、もちろん強さも違う。その強さはランキングで示され諸君らの左手に示される。」
僕は彼女を抱きしめている左手に目を落とした。そこにはいつの間にか赤い文字で数字の「2」が記されていた。
「この街には13万人いるが、この世界で動けるものは1万人。まずは3日後に5000位以内に入れ。5000より上の順位の者は死ぬ。」
話は半分信じられないが、とりあえず自分の順位が相当高くてほっとした。だが、最初の順位が5000より上の者はどうすればいいのだろう。
「諸君らの能力は、人を殺すことによって向上する。その対象は今静止している一般人でも、この世界で動くことのできる能力者でも構わない。まあ、初心者は時間が止まっている人を殺せばいいんだ。良心の呵責も痛みにくいだろう。無論、強い能力者を殺した方がより能力の向上が期待できるが。」
コイツは周りの人間を皆殺しにしろとでも言いたいのか…
「諸君、頑張って3日間生き残ってくれ。それでは3日後また会おう。」
…プツンとテレビの画面は黒くなり、デジタル時計が表示された。
残り時間「71:59:58」
カウントダウンは始まったのだ。
ミサキを抱きしめたままであることに気づき、僕は離れる。
ミサキは呆然としていた。
彼女の左手には何の数字も書かれていなかった―