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メリル市からの叙勲と表彰

ててーーーん!!!

書籍化します!!!

色々な作業で更新が滞っていましたが、これからまた定期的に更新します。(だいたい週1回くらい)

「──エミリア・メルクリオ。メリルリ古代迷宮踏破の功績を讃え、あなたを【白銀馬級冒険者】として認定いたします」


 メリル広場では叙勲式という大々的な催し物が行われていた。

 主役はエミリア。

 難攻不落の古代迷宮を踏破した勇者、そして街のバザールで人助けを繰り返す街角の聖女様として慕われる彼女に、冒険者協会ギルドから名誉階級である【白銀馬級】の位が与えられることになったのだ。


「さぁ、どうぞ。我らが聖女様」


 メリル市の市長は『麗しのロザリア』と呼ばれる美女だ。

 実際の年齢については、バザールの長老株であるミセス・ソーセージバゲットと同じくらいという噂もあるが、真実は誰も知らない。


「あっ、あっ、ありがとうございますっ」

「ふふ、可愛いわね。緊張しているのかしら」

「ひゃい……!」


 年齢不詳の美女ロザリアに微笑みかけられて、エミリアはぴゃんっと飛び上がる。

 アビゲイルも健康的でとても美人だ。

 けれど、ロザリアはなんというか、迫力がある。

 メリルリ古代迷宮の奥にあった宝石回廊にあったような大ぶりの宝石を、ペンダントから指輪までたくさん身につけている。それが、とても似合っているのだ。

 ロザリアに宝石たちに負けないくらいの迫力があるからだろう。


 街中の人が集まった広場の真ん中で、ド迫力の美女に功績を讃えられる。

 陸の孤島にある女子修道院で、誰にも省みられない生活をしていたエミリアにとって、あまりにも刺激が強すぎるものだった。


「あなたのおかげで、古代迷宮(ダンジョン)のすべての階層に採掘に出かけることができるようになりました。メリル市はこれからさらなる栄華を極めるでしょう」


 演説に喝采。

 メリル市冒険者協会のお偉い人たちや、エミリアを慕っているバザールの人々が歓声をあげる。エミリアはなんだか照れ臭くなって、きょろきょろと視線を動かす。


 ぱちん、とアビゲイルと目があう。

 にこりと微笑んだアビゲイルに、エミリアは小さく手を振った。


「やったじゃないか、【白銀馬級】とは恐れ入った。引退時に名誉称号としてもらうやつらも多いと聞くのに」

「わわわわ、私なんかが貰っていいモノなのでしょうか……!」

「ああ。この銀馬バッヂがあれば、大陸中のどこでも働き口には困らんだろうさ、天歌教の聖女じゃなくってもな」

「は、はい……」


 こくこくと頷く。

 なんだか、こんなに盛大に褒められるのは落ち着かないし、今すぐここから離脱したかった。


「エミリア様!」

「がっはっは、さすが聖女様と大魔女様!」

「あ、リンさん! ソーセージバゲットさん!」

「まぁさか、メリルリ古代迷宮(ダンジョン)を本当に踏破しちまうなんてねぇ……アタシが若い頃にゃ、考えもしませんでしたよぅ!」

「あ、いえ……たまたまです。しかも、私が……世界樹の生まれ変わりとか……」

「え?」

「おーっと、エミリア」

「むぐ! あ、あ、ごめんなさい! なんでもないです!」


 いけない。

 あのあと、アビゲイルと話しあって決めたのだ。

 『メリルリ古代迷宮の奥で見たことは、二人だけの秘密にしよう』と。


 手に入れた聖乙女の戦杖(ホーリー・メイス)もアビゲイルの自慢の魔道具、超大容量収納ポシェットにしまってある。

 アビゲイルとお揃いの小さなポシェットは、エミリアのお気に入りだ。

 聖乙女の戦杖(ホーリー・メイス)は、世界樹の力を使うための重要な鍵のようだ、とはアビゲイルの分析。

(いまだに信じられないなぁ、私が、世界樹の魂を持ってるなんて)

 あの、かつて世界を支えていた世界樹の精の生まれ変わりが自分だなんて、まったくもって信じられないけれど、たしかにそんなことは言いふらさないほうがいい。

 そんな情報なくたって、人助けはいくらだってできるのだから。


「あっはっは! まぁ、冒険譚は今度たっぷり聴かせてくださいよぅ。今度、大規模な酒場を開くことになりましたからねぇ、ソーセージバゲット酒場をよろしく!」


 大慌てのエミリアに、ミセス・ソーセージバゲットが豪快に笑い声をあげる。

 とたんに人だかりができた。

 握手を求められてあわあわしているエミリアの肩を、アビゲイルが庇うように抱いてくれる。


「おっとそこまで。我らが小さな聖女様はお疲れだ、続きはまた今度〜」

「あ、アビゲイル様ずるいです!」リンがぷぅっと頬を膨らませる。

「ふふ、君もだいぶ元気になったようだね」

「はい、アビゲイル様」


 つやつやの頬でリンが笑う。

 親の借金のせいで酷い目にあっていた彼女だけれど、今は健康そのものだ。ミセス・ソーセージバゲットやギルドの受付嬢ナディアが可愛がってくれているおかげだろう。


「それでは、諸君。ごきげんよう! いくぞ、ジョン!」

「わふっ!」


 大きな飼い犬、もとい、世界樹を守る聖獣のうちの一柱である氷狼フェンリルの背中に飛び乗る。

 アビゲイルとエミリアを乗せて、ジョンは風のように走り去った。


◆◆◆


「すごいじゃないか、エミリア!」


 森を駆けながら、アビゲイルが言う。


「人助けしまくる聖女様に、また一歩近づいたな!」

「そ、そうでしょうか」

「ああ、白銀馬勲章を持っていれば、各地の冒険者ギルドからも引っ張りだこ。個人で人助けするにも、すぐに信用してもらえるぞ」

「おおお、そうなのですね……!」


 わくわくとエミリアの胸が高鳴る。

 困っている人を放っておけないエミリアだけれど、「お困りですか」と声をかけても得体の知れない少女への警戒心から、逃げていってしまう人も多かった。特に、とても貧しくて、とても困っていそうな人ほど。


「天歌教団の見習い聖女服も……ちょっとキツくなってきましたからね……」


 セレネイド女子修道院を追い出されたときに着ていた、見習い聖女の服が最近は少し小さく感じるようになってきた。

 ほんの少しだけれど、そう、おもに胸のあたりが!


「ふふふ……私もアビゲイルさんのようなかっこいいボディに一歩近づいたってことですよね……!」

「うん、正直見た感じはわからんが」

「ええっ! ひどいっ!」

「ははは、でもこうすればわかる」


 ぎゅう、とアビゲイルがエミリアを抱きしめる。

 ジョンの背中に乗るときにはエミリアがジョンの首の方に、アビゲイルが腰の方に並んで乗ることが多いのだ。


「わきゃっ」


 エミリアは頬が熱くなるのを感じた。

 アビゲイルの体の柔らかいところが、むぎゅりとエミリアの背中に当たっている。


「……うん、大きくなってる」

「そ、それほどでもぉっ」


 思わずジョンの毛皮を掴むと、抗議するように「わふふっ」と唸った。

 普通に喋れるジョンだから、「やめろ、我が盟約主」とか言いそうなものなのだけれど、たぶん空気を読んでくれたのだろう。

 だって、エミリアの心臓はバクバクとうるさいくらいに脈打っているのだから。


2021年8月5日にKADOKAWAドラゴンノベルスさんから書籍版が発売します。

「腹ペコ聖女とまんぷく魔女の異世界スローライフ!」という題名になりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エミアビてぇてぇ(’ヮ’*) [一言] 書籍化おめでとうございますッ!(’ヮ’*)
[一言] 書籍化おめでとうございます。 続きを楽しみにしてます。
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