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メリルリ古代迷宮、隠し階段 ~きらきら琥珀糖サイダー~

 地下へと続く階段。

 天井は意外にも……というか、かなり高い。

 暗闇で光を放つ宝石が、天井の真っ暗闇のなかでキラキラキラリと光っている。

 まるで、夜空のようだ。



「栄養補給は、すみやかに」



 ダイヤはちょこんと腰をかけたまま、抑揚なく言う。



「ふふふ、栄養補給ってだけが目的じゃないんだよ」


 アビゲイルがポシェットから取り出したのは、小さな箱。

 大きさはひとかかえくらい。超小型ではあるが、ジョン――氷狼フェンリルの権能で冷気を閉じ込めてある、フェンリル印の『冷蔵庫』だ。

 そこから、アビゲイルは飲み物の瓶と、壺を取り出した。



「アビゲイルさん、それ何ですか?」

「あぁ、メリルのバザールのために私が開発した新商品……サイダーだよ」

「サイダー!」

「……さい、だー?」

「あのね、ダイヤちゃん。サイダーっていうのはね、甘くってシュワシュワの飲み物だよ!」

「あま……い…‥?」



 アビゲイルは、グラスを三つ(・・)取り出した。



「ジョン、氷をたのむ」

「わふ。流しソーメンのときのようなものか?」

「あぁ。できれば、もう少し細かい氷がいいな」

「心得た」



 ジョンがもふっとしっぽを振ると、空中からしゃらしゃらと細かい氷の粒がグラスにふりそそぐ。



「ストップ!」

「む、まだグラスの半分にもなっていないぞ」

「そうですよ、アビゲイルさん。いつもサイダーはキンキンに冷えた氷たっぷりがいいって言ってるじゃないですかー」

「焦るな。ここに、これを――」



 アビゲイルが、壺の蓋を開ける。

 その中から取り出して、グラスの中に入れたのは――。



「わぁ、宝石!?」

「む……まさか、ここから盗んだのか」

「違うよ、これは……琥珀糖だ」

「琥珀! やはり、宝石を盗んだのか……!?」

「ちがうちがう、ほら。コレは食べ物だよ」



 アビゲイルは、壺の中身をひょいっとダイヤの手のひらに押し付ける。



「む……! 我は、食べ物など……!」

「食べ物、というか。まぁ、ほとんどは砂糖だよ」



 アビゲイルは、壺の中身をグラスにも入れていく。

 色とりどりの輝きをまとった、氷砂糖。



「すこしゼラチンも使っているが……綺麗だろう?」



 赤、青、緑に藍色。

 アビゲイルが天然の食紅で色を付けた、キラキラの宝石のような、琥珀糖。

 細かな氷と交じり合って、洞窟内のわずかな光源でもピカピカと光り輝いている。


 無表情な宝石少女ダイヤの目が、その美しさに少しだけ見開かれる。




「そして、ここにサイダーをそそげば……!」

「う、うわぁ~!」



 きら、きら、きらり。

 はじける炭酸が、色とりどりの琥珀糖を包み込む。


「……!」



 ちいさな宝石ゴーレムの目は釘付けになる。


「きらきら……している」

「わぁ! 綺麗!」

「そうだろう。まぁ、ダンジョン攻略ということで、気持ちがくさくさする時もあると思ってな」

「アビゲイルさん、やっぱりこのクエスト楽しみにしてたんじゃ」

「こ。こほん! とにかく、早く飲もう」

「はい! すごくきれいで、飲むのがもったいないです! ごくごく!」

「そう言いながらためらわずに飲むのが、エミリアのいいところだな!」

「……」


 ダイヤは、自分の手にある琥珀糖と、きらきらサイダーをじっと見比べている。

 そのとなりで、ジョンが大きなしっぽをぱたぱた振った。


「……わ、我のぶんはないのか!」

「グラスが三つしかないんだ。私のをわけてあげようか」

「わふっ!」



 ジョンは嬉しそうに、耳をぱたぱたした。

 それにつられて、ダイヤも琥珀糖を口に放り込んだ。



「これは目にも涼しいものだ! 甘いな、うまいな!」

「気に入ったか、ジョン」

「あま、い。これは、あまいというのか」



 口の中で、しょりしょりと琥珀糖を味わうダイヤ。

 宝石で出来たストーンゴーレムであるダイヤには体温がないため、琥珀糖がなかなか溶けないらしい。


 サイダーも、こくりと一口。



「……ぱちぱち、はじける。これが、人間の作ったもの。食事の楽しみ……」



 思わずつぶやくダイヤ。

 エミリアは――ダイヤと同じく、修道院にいたころは食事の本当の(・・・)楽しみをしらなかったエミリアは、そっと補足する。



「……たぶん、食事の楽しみって、こうやって景色やお互いの顔を見ながら、おしゃべりすることだと思うんです。きらきらのサイダーと、きらきらの天井のおかげで……こうやって、はじめてあうダイヤちゃんとも少し打ち解けた気持ちになりますから」

「あぁ、みんなで食べるのはいいことだ」

「そう……これが、人間の作った……善きもの」



 ダイヤは、天井を見上げる。

 暗闇に光る宝石たち。

 彼女にとっては見飽きた、ただの物質だったはずだけれど――今日はひときわ輝いて見える。

 ダイヤは、そう思った。

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―――

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★★★★★評価 →超面白いじゃん! 琥珀糖サイダー、気になる!

★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪

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★★☆☆☆評価 →今後に期待かな? 

★☆☆☆☆評価 →うーん、微妙……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「む……まさか、ここから盗んだのか」 「琥珀! やはり、宝石を盗んだのか……!?」 「む……! 我は、食べ物など……!」 あれ?ダイヤちゃん口調がジョンになってる…?
[一言] 野外でサイダー…いいっすねぇー
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