メリルリ古代迷宮、第7層~隠し階段~
「これは……!」
魔導を行使する「魔法使い」としてではなく、魔導具を使ってあまねく人の暮らしをよくしたい――そのための研究の道を究める『万能の魔女』アビゲイル。
そのアビゲイルが、驚きの声をあげた。
エミリアたちに心を開いて古代迷宮の『案内人』となってくれた宝石少女、ダイヤが進んだのは宝石に彩られた洞窟の奥の奥。
一見すると行き止まりにしか見えない場所だった。
「――選ばれし人たちを、偉大なる墓所へ」
ダイヤの声に呼応するように、色とりどりの宝石の柱が飛び出ていた壁が左右に開く。
まるで、扉のようだ。
ごごごごぅ、と低い音をたてて開かれた道。
大理石のつるりとした階段が、下へ下へと続いている。
整然と左右に立ち並ぶのは精霊や幻獣を模した美しい彫刻群――いままでのメリルリ古代迷宮で見た風景とは、わけが違う。
「ここから、最奥まで行けると?」
「そう。ここが『扉』」
「これは、ダイヤしか開けないのか?」
「ダイヤしか開けないの。ここに来た誰かがダイヤを倒したら、ダイヤが再生するまでこの扉は閉ざされる」
「再生する? ふむ…・・・・自動修復の魔術式まで組み込まれているのか。再生にはどれくらいかかるんだ?」
「100年」
「なっ!」
「わぁ、100年って長いですね!? おばあさんになっちゃいます」
「老人になるどころじゃないぞ、エミリア。私たちをはじめ人間などの短命種族の寿命はせいぜい80年……長命種族のエルフやドワーフでもなければ、もう2度と探索はできないということか」
「この階層から宝石を持ち出そうとすれば、宝石の呪いで迷宮は崩れる。案内人であるダイヤを倒してしまっても、道は閉ざされる」
「はぁ……しかも、この下にあった階層はすべてフェイクだろう……? 初見殺しもいいところだ!」
「――。道は、選ばれしあなたのために」
あなた、と言ってダイヤはエミリアをじっとみつめる。
ジョンは先ほどから、ずっと押し黙っている――ここから先に続く階段に、なにか感じているのだろうか。
ダンジョン最深部に続いているという階段。
エミリアは、暗くてよく見えない階下を見下ろして「おおお……」と声を上げる。
吹き上げてくる風が、切りそろえた銀髪を揺らした。
「……あの、アビゲイルさん」
「うん、なんだ?」
「えっと、これは私の勘なんですが」
ぐううぅぅ、と。
いざ最深部へ、という緊迫感の中、へにょへにょの腹の音が響く。
「お、おやつの時間にしませんかっ!」
「ふむ……まぁ、いい時間だし、この先は未知の領域だ。腹ごしらえは重要だな」
アビゲイルはポシェットから、色々と材料を取り出す。
おやつ。
焼いてきたスコーンにクッキー、バターケーキもある。
「さて、何にしようか」
「えへへ、いっぱいありますね!」
はしゃぐエミリアの後ろで、もともとほとんど表情のないダイヤが突っ立っている。
「ニンゲンは、そういったものを摂取しないといけないのですね。難儀なものです」
ダイヤは手ごろな宝石の塊に、ちょこんと腰かけた。
どうやら、おやつに参加する気はないらしい。
次回、ちょっと変わったメシ回です。
【お知らせ】
大変です。8月31日発売の『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記~かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』(GCノベルス)の表紙や口絵が届きましたが、想像を絶する「可愛さ」です。よろしくお願いします。
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