メリルリ古代迷宮第7階層 〜宝石少女ダイヤ〜
「ほんとうに、かいたいしない? ほんとう?」
「無論だ」
「アビゲイルさん、ちゃんと謝って」
「え? あ、あー……ご、ごめんなさい……」
アビゲイルから距離をとり、完全におびえている宝石少女――宝石を原料としたストーンゴーレムにアビゲイルはふかぶかと頭を下げる。
魔導具を仕込んでいる大きなつばあり帽子もとり、正座をし、ぺっこりと謝罪。
エミリアもなぜか隣で正座をしつつ、うんうんとうなずいた。
「どうかな……アビゲイルさんも反省しているので、今回だけは許してくれませんか……?」
「うん……そんなにあやまるなら、いい」
「ありがとう、宝石ちゃん!」
「ほうせき、ちゃん?」
宝石少女は、こてんと首をかしげる。
「えっと、お名前がわからないから」
「なまえは、ない。わたしは、すとーんごーれむ」
「すとーんごーれむ……」
「なんでエミリアまで片言になるんだ」
「はっ! すみません、つい!」
「……あなたがたは、えらばらしもの」
「ふむ、さっきからそればっかりだなぁ」
喋るとはいえ、宝石少女の言葉はカタコトで瞳もぼんやりと焦点を結んでいない。
ダイヤの髪、サファイヤの瞳、手足に輝く色とりどりの宝石。
それを、エミリアはじーっとながめて……「そうだ!」と叫ぶ。
「ねぇ、宝石ちゃんにも名前を付けていい?」
「な、まえ?」
「わふっ、心配するでない。ゴーレムよ。エミリアは我にも名をくれたぞ。我が名はジョンだ!」
「じょん……あなたは、えいこうある、ふぇんりるでは……?」
「いかにも、世界樹を守りし幻獣がうちの1柱、フェンリルだ。そしてジョンだ」
「……じょん」
伏せた姿勢のまま、ずいずいと小さな少女に鼻先をつきつけるジョン。
宝石少女は、ジョンの前足にすっと手を伸ばし、「もふもふ……」と呟く。
「名前、つけてもいい?」
「……そ、んなにいうなら」
やったぁ、とエミリア。
「えっと、じゃあ……」
きらきらと輝く髪の毛をじっとみつめるエミリア。
「アビゲイルさん、この子の髪……すごくきれいですが、なんていう石なんですか?」
「ふむ? 目視での同定にはなるが、水晶……ではないな。ダイヤモンドだ、最高級の宝石だぞ」
「ダイヤモンド! じゃあ、決めました。あなたの名前は、ダイヤちゃん」
「そのまんまだな!?」
「とっても綺麗だから! よろしくね、ダイヤちゃん。私はエミリア。こっちはアビゲイルさんで、こっちがジョン!」
「わふっ」
「……ダイヤ」
宝石少女あらためダイヤは、なんども「だいや、ダイヤ、私の名まえは、ダイヤ」と呟いている。
「ありがとうございます、選ばれしあなた。私はストーンゴーレムのダイヤ。あなたがたの案内人」
「っ!? 知能が上がった……!?」
「上がったのではありません、あなたがたがダイヤを敵ではなく仲間とみなし、名前を授けてくれたおかげで――ダイヤとエミリアの間に『縁』が結ばれたのです」
「縁……?」
「さぁ、行きましょう。選ばれしあなた。この迷宮の最奥へ」
ダイヤは手を差し伸べる。
待ってくれ、とアビゲイルはそれを遮った。
「迷宮の最奥って、ここはまだ第7層だぞ? 第8層も第9層もすっとばして……」
「そこからは、最深部にはいけません」
「……は?」
「ですから、最深部にはこの第7層から行くのです」
「な、なんだとおおぉ!?」
「世界樹を守護せしフェンリルをつれたあなたがたは、ここの宝石に欲をもって手を触れることをしませんでした。ダイヤに危害を加えることも……まぁ、ぎりぎりしませんでした。それどころか、友愛をもって私に『ダイヤ』という名をくれた。あなたがたは、この迷宮の最深部に行くのにふさわしいとダイヤは判断します」
「……。もしも、ここの宝石を盗掘したり、お前を攻撃していたとしたら……?」
「――……この迷宮が、あなたがたに牙をむいたでしょう」
ダイヤの言葉に、アビゲイルは頭を抱える。
「エミリアに助けられたな……」
「え?」
「なんでもない」
アビゲイルは、エミリアの手を取る。
「ダイヤ、案内してくれ――このメリルリ古代迷宮の、最奥へ」
ダイヤはこくんと頷いた。
【お知らせ】
大変です。8月31日発売の『突然パパになった最強ドラゴンの子育て日記~かわいい娘、ほのぼのと人間界最強に育つ~』(GCノベルス)の表紙や口絵が届きましたが、想像を絶する「可愛さ」です。よろしくお願いします。
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