メリルリ古代迷宮第7階層 〜宝石少女すとーんごーれむ〜
キンキラキンキン、という音が聞こえてきそうなほどに周囲は宝石だらけだった。
メリルリ古代迷宮、第7層。
エミリアとアビゲイルのほかは、記録上では誰も立ち入ったことのないダンジョン深部だ。
「うーん、サンドイッチ美味しかったですねぇ。アビゲイルさん!」
「あぁ。ジョンの『冷蔵庫』があるにしても貝は日持ちしないからな。先に食べておけてよかった」
「なるほど!」
「しかし……こう周囲が宝石だらけだと、食欲もわかないな」
「綺麗ですね!」
「ああ」
アビゲイルは頷く。
「だが、これは……帰還魔法陣を設置して、冒険者たちが進入しやすくなったら……これは盗掘されるだろうなあ」
「宝石、綺麗ですからね」
「ああ、あとは高く売れる」
ほぅ、高く……エミリアは周囲を見まわす。
天歌教団の偉い人が、修道院の視察にきたことがある。その人の服でキラキラときらめいていた宝石と同じだ。もっともっと大きくて、数も多いけれど。
「どこに帰還魔法陣を設置するんですか?」
「そうだなぁ、他の階層みたいにモンスターがこない小部屋があるんじゃないかと思うが」
「うーん、でも」
周囲を、もう一度見まわす。
今までの階層のようにモンスターの気配は感じない。
ふたりと一匹、とことこ歩く。
「……モンスター、いないな」
「いませんねぇ」
「うーむ、この古代迷宮がファイアドラゴンの言っていた通り『最深部にある何か』を守っているとしたら……この何もない、というか宝石しかない空間はなんの意味が……?」
「あはは、アビゲイルさん難しい顔してる」
「む、考察を重ねていただけだ」
アビゲイルの照れたような顔。
エミリアは思わず吹き出してしまう。
ふたりでこうして冒険をするのは楽しい。
美味しいご飯を食べて、たっぷり眠れるのと同じくらいにーーこうして知らない場所を冒険するのは、楽しいことだ。
「ふふふ、ねぇ、アビゲイルさん」
「ん?」
「楽しいですね」
「……あぁ、楽しいな」
「私たち、冒険者になるのもいいですね! 人助けもたっくさんできます!」
「いや、冒険者とか嫌だからな。私の研究が妨げられる!」
「えー」
「……まぁ、フィールドワークということなら悪くないが」
ただ、こうして歩いているだけで。
とても、楽しい。
歩いていると、隠されている小部屋にたどり着いた。
帰還魔法陣を設置するのに良い場所かもしれないーーけれど。
「……っ! エミリア、気を付けろ」
「ふぇ?」
「あそこで、なにかが動いた」
「わふっ!」
壁面や床に露出する宝石、宝石、宝石。
そのなかで、不自然な光を放つものがあった。動いている。
わっ、とエミリアは飛び上がってアビゲイルの手を握る。
不自然に光を反射している一角を、じっと眺める。
もこ、もこもこもこ。
身じろぎをするように、それは動いてーー
「ふ……ふぁーわ」
大あくびをした、ように見えた。
「わっ?」
「こ、子ども?」
子ども、だ。
というか、少女。
しかも、体が宝石で出来ている。
キンキラキン。
「見たことないぞ、こんなモンスター……」
アビゲイルの言葉に、メリルリ古代迷宮第7階層ではじめて遭遇した生き物(?)、宝石少女は口を開いた。
「おねぇちゃんたち、えらばれたものだね?」
「喋った!」
「わたしは、『あんないにん』だよ。ようこそ、ここへ」
ぺこり、と頭をさげた子ども。
「キミは?」
「すとーんごーれむ」
「何!? ストーンゴーレム……しかも自律式? というか、こんなに人間に近い形を保って、しかも喋るゴーレムなんて聞いたことがないぞ!? どういう魔術式になっているんだ、よかったら解体させてくれ!」
「ひっ?」
「アビゲイルさん、だめだめ!」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだからー!」
「ひゃうー!?」
「アビゲイルさんってばぁ〜!」
これはいけない。
アビゲイルの研究モードだ。
「ジョン〜! アビゲイルさんを止めるの手伝ってぇ〜!」
「我にまかせろっ!」
指をわきわき。目はギラギラ。
完全に「悪い顔」になっているアビゲイルを、ジョンと協力して止めた。
きらめく宝石でできた少女は、完全にヤバイ人間を見る目でアビゲイルを見ていた。
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