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メリルリ古代迷宮、第3階層③ ~ダンジョンの秘密~

 ひときわ大きなファイアドラゴンが、エミリアとアビゲイルの足元にひれ伏してグルグルと唸っている。

 敵意はなさそうだ。懸命に何かを伝えようとしているように見える。



「なんでしょう……おしゃべりしてる?」

「ふむ……」

「前に卵を分けてもらったときにも、こんなかんじでグルグル言ってましたけど……ファイアドラゴンさんと喋れればいいのになぁ」

「……こんなにおとなしいなら、できるかもしれん」

「え?」


 ジョンの氷狼の権能に守られたまま、アビゲイルがそっとファイアドラゴンに近づく。

 腰に吊り下げたポシェットに、細くてしなやかな指をかけると――するするする、と美しく輝く布を取り出した。

 深い森の緑色。

 とろとろと光沢を放つサテン生地――リボンだ。

 ただしその大きさはテーブルクロスのようで、リボンというよりももはや巨大な布である。

 


「うーむ。まさかこの大きさを使うことになるとはな」

「うわぁ、綺麗……!」

「ジョン、今からファイアドラゴンに近づくから加護を頼む」

「わふっ!」

「よぅし、いい子だ。少し大人しくしていてくれよ」

「ガルウルゥ!?」



 アビゲイルは、大きな布を華麗に扱ってファイアドラゴンの首にリボンを巻き付ける。

 可愛らしい蝶ネクタイのような形に結び目を整えると――



「おお……この美しい布は……!」



 巨大で恐ろし気なファイアドラゴンの喉から、美しい女性の声があふれだした。



「ほああああ~~! ドラゴンがしゃべったー!!!」

「キャウン!?」

「いや、ジョンは驚くなよ。君も『喋る犬』だろう」

「我は犬にあらずっ! 我が名はジョン、世界樹を守りし四幻獣が一角フェンリルなりっ!」

「あぁ、やはりフェンリルでしたか……世界樹が『果て』に消えてから、こうしてその御姿を目にできるとは」



 ファイアドラゴンは、ゆったりと言葉を紡ぐ。



「アビゲイルさん、これって……」

「あぁ。ジョンと会ってから、モンスターと喋れたら便利なんじゃないかと思いいたってな。あのリボンに刻んだ翻訳回路(コード)に、エミリアの魔力を大量に注入したんだ」

「すごい……!」

「私の魔力でも森の大気中にあるマナでも、まったく上手く動かなかったんだが……エミリアの魔力でだけ、どういうわけか機能するんだ」

「おぉ、あなたの名はエミリアというのですね……清らかなる魔力を持った御子よ」



 ファイアドラゴンが、頭を下げエミリアの銀髪に鼻先で触れる。

 うやうやしく挨拶をしているようだ。



「ファイアドラゴンさん、もう苦しいのは治りましたか?」

「えぇ。あなたの……まるで、そう、伝説にある世界樹のもたらすマナのような清廉なる魔力によって、私の胎内に巣くっていた蟲は去りました。本当にありがとう」

「よかった! どういたしましてっ」

「……。それこそ【神竜級】の絶大な魔力量、しかもその性質も異様に高く清らか……エミリア、君は一体?」

「? 私は人助けをしたい『聖女見習い』ですよ」



 にこり、と微笑むエミリアに、周囲を取り囲むファイアドラゴンたちがざわめく。

 リボンをかけていないので、何を言っているかはわからないが――



「皆も喜んでおりますよ。この迷宮を守っていた【神竜】様のご加護も年々うすらいでおり、あのような蟲がはびこるようになりましたゆえ……」

「む、神竜の加護だと……?」

「おや、人の子らは知らないのですか。古代迷宮は、世界樹と神竜の物語を――いつか生まれ来る『再臨者』に伝えるためのものだと」

「なっ、どういうことだ? 古代迷宮は、モンスターを生み出す魔窟じゃないのか!」



 大発見だぞ、とアビゲイルは鼻息荒くペンとメモを取り出した。

 魔導研究者として、新発見を期待してダンジョンに潜っているアビゲイルからしたら垂涎ものの情報である。

 モンスター……それも、ファイアドラゴンという上級な存在から直接話をきけるなんて!


 アビゲイルは、翻訳機りぼんを開発した自分に感謝した。



「わふ……『再臨者』か……」

「ジョンも何か知っているんですか?」

「うむ……世界樹と神竜の、愛の物語だ……。我が目覚めたのも、おそらくはこの世に『再臨者』誕生の兆しがあったからなのだが……」



 ファイアドラゴンは、ゆっくりと首を横に振る。



「この迷宮も、そこに息づく我々も――最深部にある秘密を守っているのです。真実は、あなたがたの目で見極めなさい。きっと、心優しきおふたりにはその資格があるでしょう。迷宮に導かれた子らよ。……ひとつだけ言っておくとすれば、人の子らの記憶と歴史は信用なりません。勝者によって紡がれる、都合のよい物語……」



 ぐきゅるるうっるるるる……!



「あ……」

「エミリア……」



 なんか重要な話をしている感があった空気が、エミリアの腹の音によって粉砕された。



「ご、ごめんなさい~……ドラゴンさんのために一生懸命お祈りしたら、お腹がすいちゃって~!」

「ふふふ……愉快な御子だこと」

「わふ!」



 メリルリ古代迷宮、第3層。

 この日は、ファイアドラゴンたちの巣で野営をすることになった。




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―――

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[一言] 流石燃費が悪いぞ!エミリア!(笑)
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