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メリルリ古代迷宮、第3階層② ~寄生虫~

「グルルルルルルルゥ」



 低く唸る、ファイアドラゴンの恐ろしい声。

 エミリアはひるまずに進む。



「これは……おい、エミリアあぶないぞ!」

「いかん、アビゲイル!」

「っ!? なんだ、ジョン」

「わからんのか……この熱、我が氷の権能でまもられておらねば、ニンゲンなどたちまち蒸発するぞ」

「なっ!? エミリアは大丈夫なのか!」

「わからん。我の権能とは関係のない力で守られている……あの清浄なる魔力が、エミリアを守っているぞ」



 くぅん、とジョンは喉を鳴らす。



「あの魔力……やはり間違いではないのか、エミリアはやはり……」

「ジョン?」



 前回に訪れたときには、エミリアの姿を見るとなぜか快く卵を分けてくれた気のいいファイアドラゴンたち。しかし今は、多くのファイアドラゴンたちが、ぐったりとしたひときわ大きな個体を遠巻きにみつめている。


 そのとき、近づいてきたエミリアに怯えるようにファイアドラゴンが身じろぎをする。



「グオォオ!」

「……苦しいんですね」



 ごぅ、という熱気とともに周囲に蜃気楼が立ち上る。

 アビゲイルは怯んだ……けれども、エミリアはいっこうに意にも介さずファイアドラゴンに近づいていく。



「おい! やめろエミリア、危険すぎる! 発情期のドラゴンに近づくバカがいるか!」

「これ……違います、この子苦しんでる……」

「グウウゥウ」



 エミリアがファイアドラゴンの傍らに立つ。

 普通の人間であれば熱波でたちまち蒸発してしまうレベルの熱気のはずなのだが……エミリアの体は魔力の膜に守られている。

 アビゲイルはジョンのそばから離れられない自分に歯噛みする。



「ファイアドラゴンさん、この苦しみ……私が取り除きます。私に祈らせてください」



 目をつぶり、祈る。

 ファイアドラゴンの苦しみが取り除かれることを祈り――聖なる歌【天の歌】を口ずさむ。

 体内の魔力を他人に譲渡するための術式を、歌詞と旋律に変換したものだ。

 天歌教の『聖女』が歌う【天の歌】は、美しい旋律と有用性から世界中で愛されている――けれど。



「これは……なんて美しい……」



 エミリアの歌う【天の歌】の響きは格別に美しい。

 本気で歌っているわけではなく、口ずさんでいる程度でこんな響きだとは。

 アビゲイルとジョンは、うっとりと歌声に聞きほれる。

 すると……。



「グガァアアァァ!」



 ファイアドラゴンが、咆哮する。

 ドラゴンの腹で、歌に悶え苦しむようにどす黒いなにかがうごめいている。



「あれは……まさか、寄生虫か!」



 発情期の動物の胎内にもぐりこみ、その身体を食い尽くす寄生虫――しかも、宿主の体を利用して、周囲の環境を破壊しつくす危険生物だ。



「大丈夫……大丈夫ですよ、苦しみはすぐに去りますので……」

「グルルァアアア!」

「まずいぞ、寄生虫が外に出てしまえばエミリアが狙われる!」



 巨大なファイアドラゴンが、ぐぅっとえずいて――寄生虫を吐き出した。



「あっ、あぶない!」

「――ッ!」



 もぞもぞと気味の悪い動きをする寄生虫が、エミリアに襲い掛かる。

 ――そのとき。



「ギャァアアァァ!!!!」



 寄生虫の体が、炎に包まれた。

 周囲で様子をうかがっていたファイアドラゴンの群れが、一斉に灼熱の炎を寄生虫に浴びせかけたのだ。


 燃えつきる寄生虫。

 歓びの声をあげるファイアドラゴンたち。


 寄生虫を吐き出した巨大なファイアドラゴンは、すっきりとした表情でエミリアたちにひれ伏した。

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―――

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― 新着の感想 ―
[一言] 喜びの声をあげるドラゴン…シュールだね!(笑)
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