穏やかな日常 ~風邪撃退のスタミナスープ~
「ぇっくち!!」
「大丈夫か、ジョン」
「うむ……なぜだか、くしゃみが出た」
「あ、誰かがジョンの噂してるんですかね? 噂話されるとくしゃみが出るって聞いたこと……ふぁっくしょん!」
「エミリアもか。うーむ……もしかしたら、風邪かもしれんな。夏風邪はなんちゃらがひくというし」
「あっ、アビゲイルさん、いまちょっとひどいこと言いましたねっ!」
「ははは、気のせいだ」
「頭撫でないでくださいよ~、1歳しか違わないくせに~!」
いつか背も伸びて、かっこういいスタイルになってやるんだから。
エミリアは決意した。
「しかし、本当に風邪だったらマズいな。夏とはいえ、森の朝晩は冷えるからなぁ」
「そうですね、今もちょっと寒いです」
とっぷりと、日は暮れている。
「特製スープを作るから、今日ははやく寝よう」
「と、特製スープ!」
「あぁ。タマネギもニンニクもたっぷりあるからな……期待しておいてくれ」
「わーい! でも、煮込むのに時間かかりませんか?」
「大丈夫だ、すぐにできるぞ」
アビゲイルは、籠からタマネギを取り出すとスライスしはじめた。
そして、ジョンのおかげで開発できたばかりの冷蔵庫からは卵をいくつか。
「スライスしたタマネギを水から煮て、私の開発した簡易調味料、鶏ガラ出汁キューブで味を付けたら、割りほぐした卵を入れて……」
「わぁ、卵がほわほわですね! 美味しそう……」
「ここに、にんにくとショウガをすりおろして、たっぷり入れる!」
「おお、たっぷり……!」
「たっぷり!」
「本当にたっぷりですね!?」
「ここでケチケチすると、薬効が中途半端になる」
「え、薬効?」
「よし、ひと煮立ちしたら、水で溶いたでんぷん粉を回し入れ、とろみをつける。塩コショウなどで味を調えれば……」
「ふぉおぉ……」
「風邪の引きはじめの、あったかスタミナスープの完成だ」
黄金色の卵が美しいスープ。
ニンニクしょうがのよい香りに、食欲が刺激される。
「いただきます!」
「うむ、我もいただこう!」
「熱いから気をつけろ」
「あつっ!!!」
「……ジョン、だから言ったのに……」
「すまない……犬も猫舌なのだ……」
ひとくち啜れば、生姜とにんにくと鶏ガラ出汁の味が口いっぱいに広がる。
卵のふわふわした食感、優しいお味。タマネギの甘みが、なんとも優しい。
そして食べすすめるうちに気づく。
このスープはとろみがついているので、冷めない。
熱保存の魔法陣などついていなくても、あつあつだ。
「はふ、はふ……なんだか、汗が出てきました」
「あぁ、それが薬効だ。生姜には身体をうんと温める効果が、ニンニクには滋養強壮効果がある。具材はどれも消化しやすいからな、このスープを飲んで、温かいうちにベッドへ行けば風邪もたちまちに治る」
「おおぉ~!」
「ふむ、人の子の知恵だな」
「よき魔導研究は、よき生活から……だからな」
アビゲイルは、ぱちんとウィンクする。
エミリアは、はたと気づく。そういえば、このところギルドから請け負った仕事で忙しく立ち働いていて、しっかり休めていなかったかもしれない。エミリアがいれば、どんな難易度のクエストも楽に達成できると評判で様々なパーティにサポートで入っているのだ。まぁ、忙しいとはいえ、食事も睡眠もばっちりとっているので修道院にいたときよりも、うんと元気だけれど。
「ありがとうございます、アビゲイルさん」
「……さぁ、なんのことだか。貴重な研究対象には元気でいてもらわねばならんからな、ひとり立ちするまでは」
その日は早々に就寝した。
ジョンも、庭につくってもらった大きな犬小屋にすっかりなじんだようだった。
――明日は、『冷蔵庫』をある場所に売りに行くことになっている。
さてさて、穏やかな日常も束の間、次回から大きくお話が動き始めます!!
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