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『フェンリル印の冷蔵庫』

「満足である……!」

「ジョン、よく食べたなぁ」



 ジョンはぴかぴかになったお皿を前にしっぽをふった。



「ふぅ……おいしかったです」

「エミリアは相変わらずよく食べるな、うん」

「だって、アビゲイルさんのご飯美味しいんですもん! カレーさいこう!」

「……アビゲイルよ、質問があるのだが」

「なんだ、ジョン?」

「このスパイスのきいたカレーも野菜も最後までアツアツであった。これはいかにして温度を保っているのだ?」

「ああ、これは温度維持の魔法陣を使っているんだ」

「ほぅ、人の子の業であったか!」



 温かいものを温かいままにしておくための箱が、キッチンにおいてある。

 アビゲイルが開発した魔導具のうちのひとつだ。


 メリル市のバザールでは、弁当を売る行商人が使っている。

 とはいえ、ソーセージバゲット屋のように店を構えている料理人からは「だったら火で鉄板あっためてた方がいいじゃないか、わかりやすい」という意見が多く、普及に至っていないのだが。



「貴重なマナや魔力を争いと破壊にばかり使っておるのが人の子だと思っていたが、そなたは違うのだな」

「争いか……ふん、くだらん」



 ぷい、とアビゲイルはそっぽをむいて、さっさと皿を下げてしまう。

 エミリアは思う。

 アビゲイルはとてもやさしい魔女だけれど――どこかいつも、寂しそうにしている……と。



(アビゲイルさん……なんだか、いつもここにはいない誰かを探しているような顔をしている)



 きっと、昔に何かがあったんだろう。人には誰しも、傷を抱えているとエミリアは思う。

 ――エミリアが家族の温かさを知らずに育ったように。



「ふむ……しかし、張り切りすぎてしまったかもしれんな」

「どうしたんですか、アビゲイルさん?」

「あぁ、トマトがすっかり余ってしまった」

「トマト!」



 ざるに積まれた、赤くつやつやのトマト。

 カレーのおともにトマトサラダにしたけれど、それでも余ってしまったようだ。



「カレーを作るときに、タマネギと一緒に炒めてベースにしてもよかったかもしれんな……今は暑いから、早めに食べてしまわんと」

「冬なら、お野菜もお肉も長持ちするんですけどねぇ……ん、なんですかジョン?」

「冷えていれば、食物は長持ちするのだろう。温度維持の魔法陣とやらではどうにかならんのか?」

「あー……魔法でモノを温めるのは簡単だが、温度を『冷やす』というのは難しいんだ。氷魔法というのは高度だし、魔力の消費も大きい。エミリアのような魔力タンクがいれば話は別だが、常時冷やし続けるというとなぁ」

「ならば、あの箱が冷えていればいいのだろう?」



 わふ!

 自信満々に鳴いて、ジョンは『温度維持』の魔法陣が刻まれた箱に歩み寄る。

 ジョンが、ぶるるると全身の毛皮を逆立てて震わせると――。


 ひょう、と冷気が部屋に満ち、温度維持の魔法陣を刻まれた『箱』に流れ込む。



「なっ、これは――!?」

「我は氷狼フェンリル、ジョンである……エミリアの清らかなる魔力とアビゲイルの美味なるカレーライスへの恩としてこの権能はそなたらにあずけようぞ!」

「す、すごいです、ジョン!」



 ジョンの氷の魔力が、箱に吸い込まれる。

 温度維持の魔法陣が機能し、冷気を循環させている。



「す、すごい! 魔法陣にはエミリアの魔力を大量に込めているから、数年単位でこの冷気が維持できる計算になるぞ」

「じゃあ、あの箱の中はずっと冷え冷えなんですね!」

「わふ……っ!」

「でかした、ジョン! これは発明だ、大発明だ! 新たな魔道具を開発したぞっ!」

「アビゲイル、礼ならばすでに旨い野菜カレーでうけておるが……どうしてもというのならば――」

「頭か? 頭を撫でればいいんだな!?」

「うむ、わっしわしと頼む」

「よーぉし、えらいぞジョン! でかした!」



 わしわしわし。



「きゃうんっ!」

「わーい、私も撫でたいです! よしよしジョン、えらかったですよ!」



 きゃんきゃん、わふん。

 すさまじい氷の魔力を見せたフェンリルが、お腹を見せて転げまわっている。

 ひとりしきジョンを撫で終えると、アビゲイルは冷気を封じ込めた箱をしみじみと見つめる。



「これで、夏の間も食材を長期間保存できるぞ――この魔導具に名前を授けよう、そうだな」

「冷え冷えボックスとか……!」

「エミリア、それはちょっと却下だ」

「あわっ、そ、そうでしたか」

「――よし、決めたぞ。この魔導具、冷気を封じ込めた箱の名前は……『冷蔵庫』だっ!」

「冷蔵庫!」



 ――のちに、この『フェンリル印の冷蔵庫』がメリル市のバザール、ひいては大陸中で空前の大ヒット商品となり、販売代行をしたソーセージバゲット商会に巨万の富をもたらすことを、エミリアたちはまだ知らないのである。

タイトルを『腹ペコ聖女とまんぷく魔女の異世界スローライフ! ~チート魔力で【精霊女王】に成り上がったので、もう「ぐうたら」とは呼ばせません!〜』に変更してみました!


***


下段に【評価欄:☆☆☆☆☆】がありますので、


★★★★★評価 →超面白いじゃん! グリル野菜カレー食べたいいい!!

★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪

★★★☆☆評価 →まぁまぁかなぁ~? 

★★☆☆☆評価 →今後に期待かな? 

★☆☆☆☆評価 →うーん、微妙……。


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― 新着の感想 ―
[一言] あー。もうジョンは普通の犬にしか見えない…(笑)
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