氷狼フェンリル、その名はジョン
世界樹に仕えし四柱の幻想獣。
炎竜スマーグ。
雷虎ユピテル。
海鳥セイレーン。
そして、氷狼フェンリル。
世界に轟く力をすべる最強の幻獣である。
その存在は、世界中の宗教に語られている。
遠い昔、世界の果てに世界樹が封印された際にともに姿を消し、静かに眠りについたと伝えられている。
「本当に……氷狼フェンリルだというのか……⁉︎」
「さよう。気高き魔力により呼び覚まされしフェンリル。我が名はジョンである」
「あわわわわ……ジョンが喋ってる……しかもフェンリルって、天歌教でも唄われている最強の幻獣だよ……!」
「人の子らはそのように我らを呼ぶのか」
「おお、偉大なるフェンリルよ、そなたの目覚めの秘密を我らに語ってはくれまいか!」
ひざまずいたアビゲイルの言葉に、美しき獣フェンリルは答える。
「いや、我が名はジョンだってば」
「し、失礼をいたしました」
「あとその改まった喋り方やめて」
「あ、はい。すみません……」
「あと我が頭を撫でてほしい。わしわしっと」
「わ、わかったぞ、ジョン」
わしわしわし。
アビゲイルはジョンの頭を撫でる。
巨体に似合わぬ犬しぐさで、ジョンはもふもふの尻尾を振り回した。
「満足である。それで、なんだ……我が目覚めた理由か?」
「ああ、幻獣フェンリルの復活だなんて、研究者としては見逃せない現象だ!」
「ふむ……清らかなる魔力に導かれた、という他はないな。そこな娘が発する魔力は、世界樹に宿っておられた【精霊王】に近しいような……」
「エミリアの魔力か……!」
ふむ、とアビゲイルは考える。
(やはり、エミリアの魔力は『普通』じゃない……体内に蓄積できる量もそうだが……食べて眠れば無限に増えて、簡単に他人に分け与えられる……)
「そこで長き眠りより目覚めたわけだが、すっかり魔力も消耗しておった。世界樹も以前のようなマナは発してはおらんからな」
「ふむ……世界樹枯渇仮説は本当ということか……?」
「ともかく、我は知力も魔力もほとんど封じられたままの老犬としてこの森をさまよっていたわけだ。清らかなる魔力にひかれてやってきたわけだが、そこの娘の【祝福】によって元の姿に戻ることができた。ぜひとも我が盟約主として仕えたい」
「なに! フェンリルと契約を結べるというのか!?」
「そそそ、それってすごいことですよね!?」
エミリアとアビゲイルは顔を見合わせる。
「仕えたい……のだが」
「……だが?」
「……。その代わりといってはなんだが、盟約の証としてひとつ頼みたいことがあるのだ。お主、名はなんという?」
「私か? アビゲイルだ」
「そちらは?」
「私ですかっ、エミリアです! セレネイド女子修道会からきました、『聖女見習い』ですっ!」
「アビゲイルにエミリアか……改めて、頼みがある」
「な、なんだジョン? フェンリルの頼みとあらば善処するぞ!」
「はい! お困りのことがあれば、私がお助けしますよ、ジョン!」
陽光に輝く、白銀の毛並み。
気高い立ち姿。
氷狼フェンリルはゆっくりと口をひらいた。
「……この土地の」
「この、土地の?」
「……うまそうな野菜が、食べてみたい!」
「は、はぃいぃ!?」
「アビゲイル、エミリア。そなたたちの育てている旨そうな野菜を……我に食べさせてくれ!」
最強の幻獣いわく。
フェンリルは元の姿に戻る術もないままに、畑にたわわに実った野菜たちが、おいしそうでおいしそうで……畑を駆け回っていたらしい。毎日。
「ま、任せてください! すっごくお料理が上手なんですよ、アビゲイルさんは!」
「ああ。『よき魔導研究は、よき生活から!』、だからな!」
「おおお……!」
その言葉にフェンリルは「きゅうっ」と体に似合わず可愛く唸って、もふもふの尻尾をふった。
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