老犬、なつく。
「わぁ、よく食べていますねぇ」
「当然だ。最高級のチキンだぞ……」
わふわふと嬉しそうにしっぽをふってえさを食べている老犬。
よぼよぼに痩せているけれど、思ったよりは元気そうだ。
自分でえさも食べられているし、足取りもたしかだ。
「納得できん……犬が最高級チキンを、私たちが茹でた芋を食べている……」
「あはは、でもお芋おいしいですよね」
「それが納得できんのだ……!」
掘りたてのジャガイモを、ぽっくぽっくと口に運ぶ。
甘味を感じるでんぷん質と、ほのかに香る土の味。
ねっとりとしたジャガイモに、すこしだけ塩をまぶして頬張るのは手の込んだ料理とはまた違った美味しさがある。
「……茹でた芋が旨いなんて、初めて感じるよ」
「いっしょに食べるとおいしいって、いったじゃないですか!」
「わふわふっ! キャンッ!」
チキンを食べ終えた犬は、かなり元気を取り戻したようで、たたたっと駆け出して行った。
「あ! 待て、この犬!」
「またねー」
「きゃうんっ!」
むぅ、と唸るアビゲイル。
「しかし、この辺に野犬が出るなんて妙だ」
「そうなんですか?」
「大気中の魔力……マナの量が多いからな。植物はよく育つし、動物もそれに応じて豊富なのだが――あまり人に姿を見せないんだ」
「へぇ?」
「ようは、人間の助けなどなくとも動物たちだけで生きていけるということだ。他の地域の動物たちよりも、強く、知能も高い」
マナ――世界の果てにそびえ立つ世界樹が生み出す大気中の魔力。
天歌教でも重要視されているエネルギーだ。
なんでも、聖女は世界樹の化身である『天帝聖母』の使いとして、他者に魔力やマナをわけてあげる存在だという。
「じゃあ、さっきのわんちゃんも森で生きていけるといいですね」
「そうだな。まぁ、おおかた迷い犬だろう。誤ってこの畑にたどり着いてしまっただけ……森で生きるなり、街で野良犬として生きるなりするだろう」
「そっか……ちゃんとお別れしておけばよかったです」
「たかだか老いた犬に感傷的だなあ、エミリア」
「出会いは天帝聖母様のお導きですからっ!」
「……君は本当に天歌教にどっぷりだな」
「当然ですよっ。いつか、聖女達を統べる大聖女様になって、世界中の困っている人たちを助けたいんです!」
「人を助けるより先に、自分のことを大切にしたほうがいいと私は思うがな」
アビゲイルは、ほくほくとジャガイモをかじってそう言った。
***
――翌日。
「キャンッ!」
「わぁ、また来ているのか!?」
「いらっしゃい、わんちゃん!」
老犬はまた畑に現われたのだった。
そのつぶらな瞳が、まっすぐにエミリアをみつめていることに彼女たちはまだ気付いていなかった。
「このわんちゃん、飼ってもいいですか!?」
「なに? こんなよぼよぼの犬を……」
「アビゲイルさんが名前つけてくださいよっ」
「いや、だからまだ飼うとは……ふむ、しかし名前をつけるからには優美で高貴な名前がいいな?」
「ふふふ、もう名前つける気マンマンじゃないですか」
老犬は、わくわくの表情で2人のやりとりを眺めていた。
しっぽ、ぶんぶん。
おめめ、きらきら。
よぼよぼとはいえ、とても可愛い犬である。
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