一件落着 ~ほっこりホワイトグラタン~
エミリアの快気祝いは、楽しく行われた。
寝かされていたのは、ギルドと提携している宿屋のスイートルームだった。倒れたエミリアのために事情を知ったバザールの人たちが手配してくれたらしい。
「んん~~~、おいしいですっ!」
「本当です……こんなに美味しいグラタン、はじめて……」
「ね、リンさん! アビゲイルさんはとっても料理上手なんですよぉ。チーズとろぉ、玉ねぎ甘ぁ……」
「……エミリア様が本当に美味しそうに召し上がるので作りがいがあると……アビゲイル様がおっしゃっていました……」
「リン! あまり余計なことを言わないでくれ」
つやつや輝くホワイトソースと、こんがり焼き目のパン粉とチーズ。
ふやふやに茹でられたマカロニと、しんなり甘いスライス玉ねぎに、蒸しチキン。
エミリアの快気祝いは、魅惑のグラタンだ。
ふぅ、ふぅ、と冷ましながらあつあつのグラタンを頬張るエミリアとリンの瞳は輝いていた。
ギルドの受付嬢のナディアも、「アビゲイル様がこんなにお料理がお上手なんて」と目を丸くしている。
アビゲイルが宿のキッチンで作ったグラタンは、ミセス・ソーセージバゲットの舌をも唸らせているようだ。
「グラタンは、ホワイトソースと具材を混ぜたタネさえ用意しておけば、あとはオーブンで焼くだけだからな……エミリアの胃袋に対応するのにはちょうどいい」
「はふはふっ、さっすがアビゲイルさんです! おいしいですね、リンさん!」
「あの、エミリア様、アビゲイル様……本当に……どうお礼をしていいか」
「気にしないでください。聖女見習いとして、とーぜんのことをしたまでですっ!」
「いやいやいや、当然ではないだろう……5億だぞ、5億」
「がっはっは! さっすがエミリア様じゃあないか、豪気な聖女様だっ!」
「聖女様の形容として、なかなか『豪気』というのは珍しいですねぇ」
「ん~、冷めてきたグラタンもホワイトソースがふるふるしてて、味が濃く感じておいひぃですぅ~。アビゲイルさん、おかわりください!」
「グラタンをおかわりするのは君ぐらいだよ、エミリア……あと5分で焼きあがるからお待ち」
「わぁい!」
あはは、と笑い声が食卓に満ちる。
これにて、一件落着だ。
***
「ふぅ、やっと我が家ですね」
「……我が家、か」
メリル市近くの森の奥深く。
一見粗末な小屋に見える、アビゲイルの『豪邸』に帰り着く。
「しかし、エミリア。君をひとり立ちさせるのは、まだまだ先だな」
「え? でも、ギルドのお仕事はちゃんとできましたよ?」
「他人のために無茶苦茶な働き方をするのは、ぜんぜん『ちゃんと』じゃない。結局、実入りになった2000万サキュルもほとんど寄付するなんて」
5億サキュルの借金を返済してもなお、2000万サキュルが手元に残っていた。協力してくれた人へのお礼と、滞在費のほかはすべて孤児院に寄付してしまったのだ。
「結局、半端な額だからって3万サキュルだけ押し付けられちゃいましたけど……」
「それくらいはもらっておけ。あのファイアドラゴンから、無傷の卵を10個も奪ったんだから」
「奪ったんじゃないです、ゆずってもらったんですよ!」
「……まぁ、どっちでもいいが。しかし、頻繁に街と行き来するには少々この家は遠いな……なにか便利な魔導具を考えられるといいのだが」
ぶつぶつ言っているアビゲイル。
エミリアは、「うーん」と腕組みをする。
「アビゲイルさんの魔導具研究に、わたしの魔力はそこそこお役にたってるんですよね……? もう少し、一緒にいてもいいですか?」
「ん? あぁ、もちろんだとも。君を野に放つのは心配すぎる。それに、使えるエネルギーが多ければ多いほど、魔導の研究開発は捗るからな」
それに……、とアビゲイルは言い添える。
「やっぱり、君がうまそうに食事しているのを見るのは……嫌いじゃない」
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