表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/78

聖女の掟

『――汝、ためらうなかれ』

 そう、一瞬でもためらえば、きっと助けを求める人を取りこぼしてしまうから。


『――汝、迷うなかれ』

 そう、迷えば助けを求める人のもとに駆け付けるのが遅れてしまうから。


『――汝、疑うなかれ』

 そう、天歌教の教えを疑えば、きっと助けを求める人に差し伸べる手が鈍るから。



***



 汝、ためらうなかれ。

 汝、迷うなかれ。

 汝、疑うなかれ。


 天歌教会の『聖女』たちに課せられた、絶対の掟。

 セレネイド女子修道院で毎朝復唱する、大切な教え。


 エミリアは、幼い頃からその教えを胸に生きてきた。

 18才の年に行われる『聖女選抜』にむけて、貴族の子女は15才になると天歌教の修道院を訪れる。


 家から『聖女』が出たとなれば、それはそれは箔が付くのだ。

 けれども、エミリアは言葉もおぼつかない幼子の頃から、修道院で『見習い聖女』として暮らしてきた。


 汝、ためらうなかれ。

 汝、迷うなかれ。

 汝、疑うなかれ。


 ためらわなかったから、自分の食べ物を貧しい子供に全部渡せた。

 迷わなかったから、多額の借金を自分で背負ってあげられた。

 ――疑わなかったから、これからも『人助け』ができる。


 だから、これでいいのだ。

 聖女を目指す『見習い聖女』、エミリア・メルクリオの在り方はこれでいい。

 これで――。



「うぅん……?」



 ぱちん、と瞼がひらく。

 知らない天井。

 ここは、どこだろう?



「エミリア!」

「……アビゲイルさん?」

「エミリア、また3日も眠り続けていて……体は大丈夫か」

「3日? ま、またそんなに!?」



 アビゲイルと出会ったばかりのときに、宿屋『飛ぶ蛙亭』で三日三晩眠り続けてしまったことがあった。

 また、そうなってしまったのか。


 でも、体中に元気が満ちている。



「おはようございます、アビゲイルさん」

「……あぁ、おはよう。エミリア」

「心配させてしまって、ごめんなさい」

「……。別に、心配なんかしていない」



 ぷい、とアビゲイルは顔をそむける。

 その頬になにか光るものがあるのを、エミリアは見つけた。



(アビゲイルさん……泣いてる……?)



 いや、そんなことはないか。

 エミリアは思いなおす。


 アビゲイルは、いつも自信満々で強くて賢い女性だ。

 様々な魔導具を操る、【万能の大魔女】――エミリアを心配して泣いてしまうなんて、そんなそんな。



 ぐゅぅうぅ~。

 お腹からしょぼくれた音が響く。



「……エミリア、腹が減ったのか?」

「は、はい! おなか、ぺこぺこです」

「そうか……おいで、エミリア。階下で皆が待っている。ミセス・ソーセージバゲットも、ナディアも、それにリンもな」

「あっ! リンさんっ! 彼女は無事ですか?」

「あぁ、無論だ。ただ、元の家が落ち着くまでは、ミセス・ソーセージバゲットが引き取って育てることになったそうだ」

「そうですか、よかったぁ~!」



 ちゃんと、人助けができた!



「……なぁ、エミリア。あんな無茶は今回限りでやめてくれ。君の魔力はまだ不安定……クエストで動き回って、ずいぶん消耗していたみたいだ」

「無茶……?」

「5億の借金を勝手に肩代わりするなんて、無茶以外のなにものでもないだろ!」

「それは……難しいですね」

「は?」

「汝、ためらうなかれ。汝、迷うなかれ。汝、疑うなかれ――それが、聖女のモットーですから!」

「……エミリア」



 アビゲイルが、エミリアの手をぐいと引く。

 豊満な体に、抱きしめられる。

 エミリアは「ひぉ?」と間抜けな声をあげた。



「……エミリア。君は、もう少し自分を大切にしたほうがいい」

「それは、私には難しいです。アビゲイルさん」



 だって、聖女は困っている人をみんな助けるための――特別な存在なのだから。


面白い、続きが気になる、がんばれー! ……と思ってくださる方は、下段に【評価欄:☆☆☆☆☆】がありますので、ぽちっとお願いします。執筆の励みになります。


★★★★★評価 →超面白いじゃん!

★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪

★★★☆☆評価 →まぁまぁかなぁ~? 

★★☆☆☆評価 →今後に期待かな? 

★☆☆☆☆評価 →うーん、微妙……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] エミリアも真に大切な人が出来ればきっと考え方も変わりますよね?(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ