クエスト完了&借金返済!
「ただいま帰りました!」
「待たせたな」
メリル市の冒険者ギルドに、エミリアとアビゲイルが帰ってきた。
手ぶらのふたりを見て、ナディアは「あっ」っと声を上げた。
「ああ、心配するな。首尾は上々だぞ」
「はいっ! ファイアドラゴンの卵、持ってきました!」
アビゲイルの肩掛けポーチから、人間の赤ん坊よりも二回りほど大きい卵が取り出される。
ギルド専属の鑑定士を呼び、卵の価格判定をする。
駆け付けたミセス・ソーセージバゲットやリンが見守る中、鑑定士は震える声で言った。
「間違いありません……正真正銘、希少種ファイアドラゴンの卵、しかもすでに胎動の始まっている『A級品』……ほぼ間違いなく孵化する、生きた卵です!」
「おおお!」
「すごいです、アビゲイル様、エミリア様! 成功報酬5000万サキュルのほかに、A級品ということで特別手当も支給対象ですね!」
「よし、これで5億の借金も少しは返せるか……」
「あ、でも……」
高額報酬クエストの達成に沸き立つギルドの入り口に、モヒカンたちが立っていた。
「へぇ、成功か! 運のいいやつだなぁ?」
「お前たち!」
「だが、この間教えてやったとおり、このギルドに高額クエストが舞い込むのは、今日限りだ。むこう1ヵ月、このギルドには30万以上の報奨金が出るクエストは出回らねぇ!」
「事前手当も全部あわせても、今回の報酬はたった7000万サキュルだろぉ? 見習い聖女様がお優しいことに肩代わりした借金の5分の1にも届かねぇ!」
「ぎゃはは! まぁ、7000万の分、ちっとは『ご奉公』の期間が短くなるといいなぁ? 『天帝聖母』様に祈って歌ったらどうだ、見習い聖女様よぉ?」
にやにやと下品な笑いを浮かべるモヒカンたち。
アビゲイルとエミリアは、顔を見合わせた。
「なるほど……今回の報酬は受け取れるわけだな?」
「……あ?」
「それなら、借金の返済は問題ない」
アビゲイルは、肩にかけた空間圧縮術式を使った小さなバッグから、ひょいひょいと大きな物体を取り出した。
すべて、ファイアドラゴンの卵である。
「なに!!??」
「報酬としては、ひとつ5000万サキュルと設定されていたわけだが……ここに卵はひとつ、ふたつ、みっつ……ちょうど10個ある」
「じゅ、10個だと!? てめぇら、ファイアドラゴンの巣を壊滅させたってのか!?」
「そんなことありませんっ、違いますよっ!」
「……あぁ、エミリアの言うとおりだ。信じがたいことに、違う」
「なっ……!?」
ふぅ、とアビゲイルは溜息をつく。
「エミリアがな、目を離したすきに第3層のファイアドラゴンの巣に乗り込んでいったんだ。それも、戦闘用の杖も持たずにだ。さすがに肝を冷やした……」
「なんで生きてるんだよ!? ファイアドラゴンっていやぁ、獰猛で危険な希少種だぞ!?」
「卵を分けてもらうように、お願いしたんです。メイスっていうので殴ったりしたら、きっと痛いでしょうし……」
「お願いだと?」
「はい。そうしたら分けてもらえたんです。ファイアドラゴンさんに感謝しなくちゃですね!」
「く、狂ってやがる……!」
モヒカンたちが驚愕のあまり床にへたり込む。
アビゲイルは、ちょっと肩をすくめる。
「……正直、同感だ。無尽蔵の魔力といい、その魔力のファイアドラゴンを手なずける清らかさといい……エミリアには謎が多すぎる。だが、」
カウンターに並べられた10個のファイアドラゴンの卵。
モヒカンたちは「ひぃっ」と鳴く。
今回のクエストのために呼び出された鑑定士は、大きくうなずく。
「すべて、本物のファイアドラゴンの卵です」
「というわけで……これで、5億の借金は返済だ」
「これでリンさんは自由ですよ! やりましたねっ、アビゲイ……ルさ……ん……、くぅ」
「エミリア!?」
ばたん、とエミリアが倒れた。
ぐううぅう~、と腹の虫を鳴らしながら――爆睡していたのである。
お察しの通り、アビゲイルのモデルはド〇え〇んです(とりよせバッグほしい)。
―――
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