クエスト途中経過 ~サンドイッチのお弁当~
――メリル市、冒険者ギルド。
ほかほか湯気を上げるマグを持った受付嬢のナディア。
お盆には、チョコチップクッキーが載っている。
シナモンほんわり。チョコレート、ザクザク。
ナディアが毎日楽しみにしている秘蔵のおやつだ。
「リンさん、お茶とお菓子をどうぞ。このクッキーおいしいですよ」
「えっ……!」
「ミセス・ソーセージバゲットからの差し入れです」
「わぁ……お菓子なんて久しぶりです」
「ずっと借金取りから逃げて、路上で暮らしていたんですよね」
「はい……エミリア様とアビゲイル様が助けてくれなかったら、今頃は……」
リンはぽろぽろと涙をこぼした。
大のモヒカンに取り囲まれて怖かったこと、自分の身の上のつらさ、エミリアたちへの申し訳なさやらありがたさやらが極まって、涙を止められない。
「おやおや、リン。そーんなに辛気臭い顔してどうしたね」
「あっ! ミセス・ソーセージバゲット!」
「エミリア様たちなら大丈夫。あの方たちは、きっとメリル市にはもったいないくらいにすさまじい人たちだよ。アタシのカンがそう言ってる!」
「えぇ、その通りです。エミリア様もアビゲイル様も、きっと無事で……クエストクリアをしてくださいますから!」
「は、はい……!」
ナディアとミセス・ソーセージバゲットの言葉に、リンは少し励まされたようだった。
「おうおう、邪魔するゼェ!」
「なんだいお前たち、なんでここに!?」
「ババァ!」
「おうとも、アタシはババァさ!」
「ここは冒険者ギルドだろぉ? 受付には誰が出入りしたってかまわねぇじゃねぇか、公共施設みてぇなもんだしなぁ!」
モヒカンたちが数人、ギルドにぞろぞろと入ってきた。
しかし、「ギルド破り」のような威勢のよさはない。
にやにやと笑みを浮かべて、そこかしこにどっかりと腰を下ろしていく。
「……リンさん、こっちへ」
「ナディアさんっ!」
「あの見習い聖女様とアビゲイルのやつが、クエストを無事にクリアできるかここで待たせてもらうぜェ!」
「なに? 借金の返済期限は1ヵ月のはずだろう!」
「けけけ! このギルドに高額クエストが舞い込むのは、今日限りだ。むこう1ヵ月、このギルドには30万以上の報奨金が出るクエストは出回らねぇ!」
「なっ、なんですって!?」
「俺たちのカシラは、色々と顔が利くんだ。今回のクエストに万が一失敗すりゃあ、借金返済のメは薄くなるぜぇ?」
「卑怯な奴らめ……!」
モヒカンたちに、ミセス・ソーセージバゲットがツカツカと歩み寄る。
「表に出な! その捻くれた根性、ソーセージみたいにまっすぐにしてやる!」
「なんだババァ、やるのか!」
「ババァだからって容赦はしねぇぞ!」
モヒカンのひとりが、ミセス・ソーセージバゲットを殴る。
拳が、ミセス・ソーセージバゲットに触れたその瞬間。
「ぎゃあああああああ!!!」
「あ、アニキ!!???」
モヒカンが吹っ飛んだ。
ミセス・ソーセージバゲットには傷ひとつない。
「こ、これは一体……!?」
「なんだいこれは……ち、力がみなぎってくる……まるで若いころみたいだ!」
ミセス・ソーセージバゲットの体が光り輝き、筋骨隆々になっていた。
彼女の殴ったモヒカンは、強靭な体幹によって弾き飛ばされたのである。
エミリアの【祝福】の光だ。
「お、覚えてやがれ、ババァ!」
「おうとも、アタシはババァさ! 一昨日きやがれってんだ!」
轟くミセス・ソーセージバゲットの声に怯んだモヒカンたちは、そそくさと去った。
***
……一方、そのころ。
メリルリ古代迷宮、第2階層入り口。
【癒しの噴水】近くの仮設休憩スペース。
「ほゎあぁ~、サンドイッチおいしいですっ! パンがふあふあで、卵のペーストがむにっって!」
「ミセス・ソーセージバゲットが手製の弁当を持たせてくれたから、てっきりソーセージバゲットかと思っていたが……たしかに、ガーリックバゲットは冷めれば固くなってしまう。サンドイッチならば柔らかいまま食べられるな」
「ん~、なんておいしいんでしょうっ! あんな早朝にお弁当を持たせてくださるなんて!」
エミリアは、卵サンドやツナサンドを頬張ってうっとりと呟く。
「あぁ……どうぞ親切なミセス・ソーセージバゲットに祝福がありますように……!」
「ははは。おおげさだなぁ、エミリア」
「大げさじゃないですよっ! ……あれ、なんだかまたお腹が減ってきました」
「……。私の分、少し食べるか?」
「わぁい!」
メリル市の冒険者ギルドで、このエミリアの【祝福】がファインプレーを演じていたことを、ふたりは知る由もないのであった。
面白い、続きが気になる、がんばれー! ……と思ってくださる方は、下段に【評価欄:☆☆☆☆☆】がありますので、ぽちっとお願いします。執筆の励みになります。
★★★★★評価 →超面白いじゃん!
★★★★☆評価 →普通に続き読みたい~♪
★★★☆☆評価 →まぁまぁかなぁ~?
★★☆☆☆評価 →今後に期待かな?
★☆☆☆☆評価 →うーん、微妙……。




