借金の肩代わり
「きゃああ!」
「ヒャッハーーァ! やっと見つけたぞ、このガキァ!」
声のする方を見ると、小さな女の子が地面にしゃがみこんでいた。
その周りを、屈強な男たちが取り囲んでいる。
モヒカンだ。
ギルドに殴り込んできた男といい、流行っているのだろうか。
バザールにいた人々が、小声でささやきあう。
「あいつら……マフィアの下っ端だろ。また騒ぎを!」
「あの娘っ子、借金のカタかなにかにされたんだな……」
「かわいそうに」
エミリアは考えるより先に走り出した。
あの子を助けなくちゃ。
人助けがしたい、という一心で聖女を目指すエミリアにとって、男たちに取り囲まれている女の子が悲鳴を上げているという状況は絶対に見て見ぬ振りはできなかった。
すると、エミリアが声をかけるより先に、雷のような大声が響いた。
「アンタたちっ! 何してんだいっ!!!!」
「ソーセージバゲット屋のお婆さんっ!?」
エミリアの【祝福】のおかげで、ものすごく元気になったソーセージバゲット屋のお婆さんだった。
「なんだ、ババァ!」
「おうさ、ババァだよ! そこのお嬢ちゃんから離れなっ!」
「うるせぇ、これが目に入らねぇのかっ!」
モヒカンは、ぴらりと1枚の紙を取り出した。
借金の証文だ。
「この嬢ちゃんのお父上はなぁ、俺たちのパーパに5億の借金がある」
「ご、5億!?」
「お貴族様の生活を保つための見栄と、逆転目指したバクチみてぇな無理な事業拡大! それでこさえた借金のカタがこの嬢ちゃんだァ! ここにちゃぁんと書いてあるッ!」
-
「それともなにか? ババァが肩代わりしてくれるってぇのかよ?」
お婆さんが、一瞬口ごもる。
少女はあきらめたようなうつろな表情で、はらはらと涙を流している。
「待ってくださいっ!!」
「……あ? なんだ、嬢ちゃん」
「せ、聖女様っ!」
エミリアは、お婆さんと少女の前に立ちふさがる。
「……お嬢ちゃん、口の端に青のりついてるぜ」
「おっと……!」
たこ焼きボールにかかっていた青のりを、あわててハンカチで拭う。
そして、エミリアは毅然としてモヒカンたちに言った。
「その子の借金、私が肩代わりします」
「え……!?」
「聖女様、何をおっしゃっているんですか。5億ですよ!?」
「えっと……5億っていうのは大金だというのはわかるんです。でも、その子を放ってはおけません」
「せ、聖女様……」
「私は天歌教会見習い聖女、エミリア・メルクリオ。お困りの方は、私が必ずお助けします!」
エミリアは、小さな身体の背筋をピンと伸ばしてモヒカンたちに宣言する。
少し遅れてきたアビゲイルが、地面に震えていた少女をそっと抱きあげてモヒカンたちから引き離す。
「もう大丈夫だ」と、普段のつっけんどんでクールな態度からは想像できない優しい声色で少女を抱きしめる。
「くくく、面白れぇじゃねえか!」
「アニキ!?」
エミリアを見下して、ボスモヒカンが高笑いをした。
「3ヵ月だ! 3ヵ月間だけ、お嬢ちゃんにこの借金を肩代わりさせてやる。だが、その間に返済ができなきゃ、ガキもお前も俺たちのもんだ。見りゃあ、なかなかの別嬪だ。しかも、その格好は天歌教会の見習い聖女ときた! こいつは高く売れるぜぇ!」
「わかりました、いいですよ」
「ヒャハハハハ! 3か月後が楽しみだぜぇ!」
去っていくモヒカンたちの背中が見えなくなる。
バザールに、賑わいが戻ってくる。
―――
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