魔力測定器の故障
エミリアが去ってすぐ、院長室に秘書係の修道女がやってきた。
天歌教団の花形である『聖女』にはなれなかったものの、セレネイド女子修道院で『見習い聖女』たちの教育を担う修道女のうちのひとりだ。
「よろしかったのですか、修道院長?」
「なんのことでしょう?」
「エミリア・メルクリオです」
「あぁ、もう出ていったようですね」
「たしか彼女は、天歌教の最高指導者である大聖女様が直接に拾った孤児では……」
「あれはあの御方がまだ一介の聖女だったときの話でしょう。もう孤児ひとりのことなど覚えていらっしゃるはずがありません」
修道院長は冷たく吐き捨てる。
それ以上は何も言えない秘書は、執務机のうえに置いてある魔力測定器に目を止めた。
「これは……?」
「あぁ、エミリアの魔力を計ったのです。案の定、針は動きませんでした」
「でもこれは……針が振り切っているのでは?」
「え?」
修道院長は、魔力測定器の針を確認する。
たしかに、針は「最大値」のところでピタリと止まっていた。
エミリアのことを落ちこぼれだと思い込んでいたせいで、針が少しも動いていないと見間違えたのだ。
「……ありえないでしょう。測定限界を超えたと言いたいのですか?」
「そうですね、ありえないことだとは思いますが」
しかし、修道院長も秘書もこんな反応をみたことはなかった。
この魔力測定器はたしかに壊れていないはずなのだけれど。
「ま、まぁ、教団を破門にしたわけでもないですし、『聖女見習い』としてどこか別の修道院に再入門もできますし」
「え、ええ、その通りですね。修道院長!」
「……私は仕事にもどります」
「はい、私も……」
修道院長と秘書は、ひとつの決断をくだす。
測定器の故障をもとに見習いを追放してしまったかもしれないという事実と、その見習いが万が一、億が一だけれど、『とてつもない魔力』を持っていた可能性から、目を逸らすことにしたのだ。
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