第五話 アルテーシア
アルテーシアさんが主役です。なるべく毎日更新したいです。
父さんとサイラス公爵家の方々を屋敷に案内した。
今日はモンスターに襲われたこともあったので、昼食会は中止となり、各自部屋で休んでいる。
そして夕食の時に改めて、ガラム公爵とアルテーシアに魔物から助けたお礼を言われた。
「このような優秀なご子息がいてグランが羨ましい」
ガラム公爵は俺の戦いの様子を父さんや母さん、シアに語っていた。
その武勇伝を聞いたシアが誇らしげに、「ふふん、お兄様なら当然です」と答えるから俺としては恥ずかしくてしょうがない。
「そうだ。ユート君、アルテーシアの婚約者にならないか」
!!!
公爵様はとんでもないことを言ってきた。
「だ、だめです!」
ガラム公爵の提案を真っ先にシアが否定した。
「アルテーシアさんとユートは同じ年で、知らない仲でもないし、私は良いと思うけど」
母さんは賛成みたいだ。
当の本人であるアルテーシアは顔を真っ赤にしてうつむいている。
「アルテーシアさんのように綺麗な方と粗暴なお兄様は釣り合いません!」
シアが俺の評価を落としてくる。
さっきまで俺を褒めていたシアはどこに行った。
「やっぱり、お兄ちゃんを取られるのが」
「ち、違います!」
母さんが言い終わる前にシアが否定してくる。
まあけど、アルテーシアと俺は身分も違うし、釣り合わないだろうな。ガラム公爵もお酒が入っているので、酒の席の話ってことかな。
「ガラム公爵、お戯れを。アルテーシアさんみたいな素敵な方と私は釣り合いません」
アルテーシアにも申し訳ないので俺は、遠回しに断りを入れる。
「私はそうは思わないが、その気になったらいつでも言ってくれ」
ガラム公爵はとりあえず婚約の件を保留にした。
俺はわかりましたと答えておく。
そのやりとりを見て、シアは安心した顔を、アルテーシアはガッカリした顔をしていたが俺は見ていなかった。
またこの話を蒸し返されるのも困るので、話を変えよう。
「父さん、今回公爵様が来られたのは、モンスターの討伐の件ですか」
「さすがユート君、よくわかったな。後私のことはガラムでいい」
「わかりました。ガラムさん」
その答えに満足し、ガラムさんは神妙な顔で話し始めた。
「最近我がムーンブルク領とローレシア領の境でモンスターの被害が増えてきている。気のせいかもしれないが、普通のモンスターと違って、何か指向性があるようにも見える」
今回も整備された街道で、50匹ものゴブリンに襲われているので、確かに何かありそうだ。
「何か心当たりはありますか?」
「女神様の加護がなくなったこと以外は今のところ思い浮かばない」
それにしてもゴブリン50匹は多い。
「まずは公爵家とシェフィールド家合同の探索チームを作り、調査に当たる。可能ならそのまま討伐する予定だ」
ガラムさんは顔をしかめて答えた。
そんなガラムさんの気分を変えるためか父さんが言葉を発した。
「皆様今日はお疲れでしょう、部屋でゆっくり休んでください」
父さんの挨拶で夕食会は終わった。
夕食会の後、俺は自室のベットの上でステータスを確認していた。
ステータスオープン
名前:ユート・フォン・シェフィールド
種族:人間
性別:男性
年齢:十歳
レベル:12
称号:シェフィールド子爵家次男・異世界からの転生者・女神から祝福を受けし者・ゴブリンハンター
HP:312
MP:52,314
力:352
魔力:35,332
素早さ:232
魔法
火魔法:4
風魔法:4
土魔法:5
水魔法:6
神聖魔法:12
スキル
剣術:5
格闘術:6
料理:5
祝福
鑑定:1
魔力回復:1
模倣:1
???
レベルが上がってステータスが結構上がった。
神聖魔法は12か。
これならあの魔法が出来るかもしれないな。
俺はこの後部屋である魔法の練習をしていた。
その日の夜。
「コンコン」
誰かが俺の部屋のドアをノックした。
まだ寝る時間でもないので部屋へ招き入れる。
「夜分遅くに申し訳ありません。アルテーシアです。今お時間はありますでしょうか」
そういえばモンスターから助けた後話があると言っていたな。
「大丈夫だよ。昼間話していたことかな」
「はい」
アルテーシアは暗い表情で返事をする。
部屋だとつかえないので俺はアルテーシアを庭へと誘う。
「もし、良ければ庭に行きませんか?」
アルテーシアは頷いた。
庭は屋敷からの灯りが射し込み、少し薄暗い程度の明るさだった。
「話はなんでしょうか?」
アルテーシアは下にうつ向いたままだったが、意を決して話し始めた。
「昼間ユート様が使っていた魔法についてお聞きしたいことが」
やはりその事か。
アルテーシアには神聖魔法を使っていたことがバレている。
俺は言葉で語るより祝福を使った。
聖回復魔法
「これは神聖魔法、やはりユート様も神聖魔法が使えるのですね。」
俺の魔法をみてアルテーシアは嬉しそうだ。
俺はアルテーシアに鑑定を使う。
名前:アルテーシア・フォン・サイラス
種族:人間
性別:女性
年齢:十歳
レベル:1
称号:サイラス公爵家長女 お転婆娘
HP:28
MP:4,213
力:10
魔力:3,051
素早さ:82
魔法
火魔法:1
風魔法:1
土魔法:1
水魔法:2
神聖魔法:2
スキル
掃除:4
料理:7
礼儀作法:5
祝福
聖女の祈り(神聖魔法を使用することができる)
魔法系のステータスが結構高いな。
そして聖女の祈りの影響で神聖魔法が使えるようだ。
「アルテーシアも神聖魔法が使えるだろ」
「はい、お父様から使い手が少ない魔法だから、人前では使用するなと言われてますが」
「俺もだ。今まで神聖魔法を使える人達は、この国の歴史の英雄しかいないからな。下手に魔法を使って、利用されることを恐れたんだろう」
実際俺もそれを恐れて、神聖魔法は極力使わないようにしてるし、ステータスも隠蔽している。
「ユート様はなぜ、今回人前で使わないはずの神聖魔法を使用したのですか」
アルテーシアが笑顔で俺に理由を聞いてくる。
これは何で俺が神聖魔法を使ったかわかっている顔だ。その顔を見て俺は少しイタズラ心が芽生えた。
「公爵であるガラムさんを助けるために、無我夢中だったのであまり覚えていないなあ」
アルテーシアは自分が思っていた答えではなかったので落ち込んでしまった。
予想以上にガッカリしているなあ。
この後色々話しかけたが何を言っても上の空だった。
自分でこの状況を作っておいてなんだが、こんなアルテーシアは見たくない。負けたようで癪だが本心を言おう。
「あの時神聖魔法を使ったのは、ゴブリンからアルテーシアを護りたかったからだ」
俺は照れ臭そうに答えた。
キリッとした表情で言えれば良いが、俺はそこまでイケメンじゃない。
しかし、それでもアルテーシアは俺の本心を聞けて満足そうだった。
「ユート様は相変わらずイジワルですね」
頬っぺたを膨らませながらアルテーシアは俺に言ってきた。
「お転婆だったアルテーシアがおしとやかになってたからちょっとからかっただけだよ」
「お転婆は余計です」
「ごめん」
「アルテ⋯⋯。昔のようにアルテって呼んでくれたら許します」
前はアルテーシアをアルテと呼んでいた。
公爵令嬢だしその呼び方は気安いと思っていたので、今回はアルテーシアと呼んでいたがアルテーシアが望んでくれるなら。
「また会えてうれしいよ。アルテ」
「私もです。ユート様」
俺の答えにアルテは満面の笑顔を見せたくれた。




