第十一話 インペリアルナイツ
毎日更新がんばります、ナイツという言葉に震える今日この頃です。
皇帝騎士
武力、知性、品格など一際優れている者が任命される。
戦闘力に関しては一個師団に匹敵し、冒険者ランクS級以上の実力が求められる。権限は大きく、軍部では将軍クラスのものが、また、爵位として公爵並の地位が与えられる。
皇帝の騎士と言われているが、有事の際は軍に従わず、独自の考えで国や民のために動くことが許されている。
午後の光がいくらか薄れ、あたりに夕暮れの気配が混じり始めたころ、王都からの援軍がサイラス家の屋敷に到着した。
皇帝騎士のアレス卿を含む援軍の数は500人。ガラムさんはその受け入れ準備に追われていた。
皇帝騎士か、討伐に行く前に出来れば会っておきたい。
そんなことを考えていたら、メイドさんから夕食の後ガラムさんの部屋に来るよう言付けを受けた。
「コンコン」
「ユートです」
「入ってくれ」
ガラムさんの部屋入ると紅い髪の温厚そうな男性と俺と同じくらいの年の銀髪の少年がいた。
「この少年が先ほどお話したユートくんだ」
「なるほど、これは逸材だ」
赤い髪の男性は俺を見て呟いた。
「ユートくん、彼が皇帝騎士の神速の紅アレス卿だ」
「初めまして、アレスといいます」
アレスさんは右手を差し出してきた。
「私は、シェフィールド家次男、ユート・フォン・シェフィールドです」
俺はアレスさんと握手をした。
アレスさんの手が触れた瞬間、静電気が走り、何かが俺の中に入ってきた。
そして体を銀髪の少年の方に向ける。
「僕はシグマです。アレス先生の弟子をしています」
「ユートです」
シグマくんとも握手をする。
「アレス卿に来ていただいているので、ユートくんも一目みたいだろうと思い呼ばせてもらった」
「公爵様ありがとうございます、皇帝騎士の方とお会いできるなんて光栄です」
「ユート、そんなに畏まらなくていいよ」
「アレス卿は私と同じ堅苦しいのが嫌いでな」
「平民出身ですから」
驚いた。皇帝騎士は平民でもなれるのか。
「皇帝騎士になるために出生は関係ないんだ。求められるのは本人の実力だけだ」
国の誉れと言われるくらいだから、相当高い実力を求められそうだ。
「皇帝騎士になるまでは大変だと思うけど、国や民の為に尽くすことができるからやりがいはあるよ」
その言葉を聞き、シグマくんがキラキラした目でアレス卿を見ている。
シグマくんはアレス卿のことを本当に尊敬しているんだな。
けど気持ちはわかる。アレス卿が持つオーラや人柄は人を惹き付けるものがある。
「そうだ、ユートがもし良ければ、シグマと手合わせしてみないか。シグマは同年代の子と手合わせをしたことがなくてね」
そういえば俺も同年代の子と手合わせしたことないな。一番近い年でレオン兄さんとシャル姉さんだ。
「はい、私でよろしければ」
翌日
部屋にいた四人と見学したいと言った、アルテ、ルイセは屋敷の庭へと向かった。
「私、お兄ちゃんが戦う所見るの初めてだから楽しみ~」
ルイセは目を輝かせている。
あまり期待されてもなあ。
庭に到着しガラムさんから木刀をもらう。
「審判は発案者の私がやろう。大怪我させない程度にやりなさい。後魔法は使用禁止とします」
手合わせの前に鑑定で見るのはフェアではないので祝福は使わない。
相手はインペリアルナイツの弟子か、油断しない方がよさそうだ。
「では、初め!」
シグマくんが剣を構える。
動かない。
向こうはこちらの様子を見ている。
ならこっちから行くか。
俺は正面から突っ込み木刀を上から一閃する。
シグマくんは受け止めたが、威力を殺しきれず体勢を崩す。
俺はすかさず下から上へ木刀を突き上げ、相手の木刀を空へ飛ばした。
「それまで」
俺の勝ちだ。
アルテとルイセがパチパチと拍手をする。
「もう一本お願いします」
シグマくんから再戦を申し込まれた。
「いいよ」
俺も異論はない。
「では、二本目初め!」
今度はシグマくんが突っ込んできた。
早い!少なくとも魔法を使わない時の俺の速度を超えている。
シグマくんは木刀を上から振り下ろした。
木刀のスピードも早い。
俺は何とか受け止めたが、間髪いれず左から右からと木刀が俺を襲う。
次から次へとくる攻撃に俺は防戦一方になる。
このままではやられてしまうので、シグマくんが横に振った木刀を木刀で受け止める。
俺は後ろに飛び、距離を取る。
シグマくんは力よりスピードタイプだ。
そういえばアレス卿の二つ名は神速の紅だから師匠と同じタイプなのかな。
それなら俺が勝つ道は力勝負に持っていくしかない。
シグマくんが先ほどと同じようにスピードと手数で攻めてくる。
俺は何とか防御に徹して攻撃を捌いている。
きた!
シグマくんが上から斜めに振り下ろした一閃を受けとめ、鍔迫り合いに持ち込む。
力で押し込み、体勢が崩れた所に上から木刀を振り落とす。
シグマくんは反応できず、俺の勝ちとなった。
「僕の負けだよ」
倒れているシグマくんに手を差し伸べ引っ張る。
「力勝負に持ち込めたから勝てただけだよ」
もう少し攻めこまれていたら俺は負けていたと思う。
「負けたけど、同年代にライバルがいると燃えてくるね」
「そうだね」
「次は負けないぞ」
「僕もシグマくんに負けないよ」
「後、僕のことはユートって呼んで。シグマくんのことはシグマって呼んでいいかな」
「いいよ、ユート。これからもよろしく」
二人はガッチリと握手を交わした。
「とても良い戦いでした。しかし二人ともまだまだ課題がありますね」
アレス卿の目から見れば改善すべき所はたくさんありそうだ。
「では次は私と戦ってみますか」
「はい」
皇帝騎士と戦える。こんな機会はめったにないぞ。
「審判は僕がやりましょう」
シグマが審判役を引き受けた。
「後ユートは魔法を使ってもいいですよ」
魔法を使ってもいいなら全力で行ける。
「では、初め!」
加速魔法
俺は加速魔法を使い、目にも止まらないスピードで攻撃を仕掛ける。
「ガンッ」
しかしアレス卿に軽々と受けとめられる。
「なら!」
先ほどのシグマとの戦いのように力技で押し込むが、簡単に弾き返される。
次に手数で斬り込んで行くが、アレス卿は的確に防いでいく。
俺は一度距離を取るために後ろに下がった。
「ユートはステータスや魔法頼みの剣となり、技術が身に付いていない。自分より下の相手ならいいでしょう。しかし自分と同等もしくは格上のステータスを持つ相手には勝てないでしょう」
そう言ってアレス卿か俺に斬り込んできた。
幾つも斬撃が俺を襲う。
1、2、3⋯⋯、ダ、ダメだ。速すぎて見えない。
気がついたら俺の手から木刀は消えていた。
「参りました」
完璧な敗北だ。今まで、ここまで一方的にやられたことはない。
「ユートは剣に関してはまず技術を学んだ方がいいでしょう」
「もしよろしければ、こちらに滞在している間、私が教えますがどうでしょう」
それは願ったりかなったりだ。
魔法に比べて力関係のステータスの上がりが悪いのは、技術を覚えていないからだろう。
誰かに教わりたいと思っていたけど、まさか皇帝騎士が教えてくれるとは。
「はい! よろしくお願いします先生」
俺は十歳の子どもらしく喜びで飛び上がった。




