第三十五話
ブックマーク登録者様が十件突破したということで、大変うれしく思っております。
今後もこの小説をご愛読いただけたら嬉しく思います。
評価をしてくださる方までいて、それも結構な高評価を頂けて大変嬉しく、感謝しかありません。
比較的長いスパンで物語を進めていく予定の小説なので、こんなに早い段階でブックマークが十件突破するとは思っていませんでした。
本当にありがとうございます。
これは私のわがままですが、今後とも是非お読み頂ければと思います。
それが私の励みになります。
係員の指示に従って移動を開始した二人は、早速会場に入ってスタッフ専用のワイシャツを受け取りに向かった。入り口には大きくトゥギャザーワンという看板がかかっている。
ワイシャツを持つスタッフにはすぐに会うことができた。
「すみません、ここでスタッフ用のシャツを受け取るように言われてきたんですけど。」
レントがスタッフにそう声をかけると、スタッフは万里雄の方を見てまた抱き合う。
この謎の一コマを取り除くことはできないらしい。
挨拶を終えると、彼は隣にある段ボールからシャツを二枚取り出し、それを二人に渡した。
「ありがとうございます。」
「それでは冒険者の方々にはこれからステージを確認してもらって、その後に控室で待機して頂くことになります。事前作業は我々専門のスタッフが行いますので、イベント警備に全力を尽くしてください。」
「もちろんでござる。」
万里雄が深く頷きながら返事をする。ステージの確認というのは、ステージに不審物がないかといった異常確認とはまた別で、ライブ中の二人の立ち位置や、どこを警備するのかを確認するということだ。
不審物などは事前に他の冒険者ではないスタッフが確認してくれている。
二人はすぐにステージに向かった。ライブまではまだ時間があるが、それでも当日に受けた依頼だったので下調べなどがほとんどできていない。
本番までに少しでも多くの情報が必要だった。
二人は観客席ではなく、ステージ側の入り口から中に入った。もちろんライブ中もこちら側はスタッフしか使用できない特別な入り口だ。
「ここが…ステージか、結構大きいな。」
規模でいえば東京ドームほどもあるこの会場は、ステージだけでも相当なサイズがある。
「これだけの場所に、会場に収まらないほどの人がくるでござるよ?面白いでござろう?」
もう完全に武士になった万里雄が、なぜか自慢げにステージを眺めつつレントを軽くチラ見する。
「確かに凄いな…。」
ただレントも万里雄の言うことにはまったくの同意で、ここまでの広さを地下に確保している時点でかなり凄いのに、そこにこれからすし詰めになるほどの人が集まるとなると、もはや彼女の影響力は異常といってもいいのかもしれない。
二人がステージから全体を眺めていると、準備スタッフが駆け寄ってくる。
「お二人は冒険者の方ですか?」
「えぇ、その通りです。」
「すみません、我々は準備がありますので、こちらの紙に目を通しておいてもらう感じでお願いします。必要事項は全て書いてありますので、分からないことがあったらそれについては質問してください。」
どうも準備スタッフもかなり大変なようで、その様子と息遣いを見ていれば本当に時間がなく、大変だからどうしようもないというのが理解できる。
そんなスタッフに気を使い、特に文句も言うことなく二人は資料に目を通し始めた。
「なるほど、俺たちの立ち位置はステージ前か…って一番大変な箇所じゃないか!?」
「その通りでござる。どうも最後に参加したから一番大変な箇所が回ってきたでござるね。」
万里雄も資料を見て少しだけ冷や汗をかいている。冒険者になる前から鍛えていたレントとは違い、万里雄は別に鍛えていたわけではない。今も体はたるみ続けているし、脂肪も持て余している。
それでもここ最近の活動で以前よりは力がついているが、一般人よりもやや上くらいだ。
二人はその後も役割を資料から読み取りつつ、ある程度の段取りもしっかりと理解した。
といっても冒険者がやることは単純な力仕事で、タイミングやらなんやらは立ち位置さえ覚えていれば別のスタッフが指示してくれるらしい。
だからこそ紙での案内という簡易的なものでも十分だった。
確認作業を終え、二人はとりあえず控室に入った。
二人以外にもそれなりの数冒険者がいるが、同じ人狼の牙所属冒険者であり、二人は彼らに見覚えがあった。あの大発見以来他の冒険者たちとは会話をしていない為、二人が入ってきても声をかけてくるような者はいなかった。
とりあえずやることもないので、椅子に座って待つ。
「本当に凄いアイドルだったんだ…。」
レントは規模や何やらをみて流石に評価を改めつつあった。
万里雄もそんなレントの様子にかなり満足げだ。
「でござろう?」
「…悪い、ちょっとお手洗いに行ってくる。」
なんとなく独特の緊張感にせかされ、レントはトイレに行きたくなってしまった。
「了解でござる。」
レントは控室から出て、直ぐにトイレへと向かう。事前資料で会場の見取り図を把握済みなため、特に迷うこともない。それなりに広いが、内部構造はかなり単純だ。
「ふぃ~すっきりした~。流石に本番が近づくとスタッフさんもピリピリし始めるんだな…。」
レントはトイレにたどり着くまでのスタッフの大変そうな様子を思い出していた。
用を済ませると、手を洗いに蛇口に向かう。
「ふぃ~すっきりしたわ~。」
すると丁度そのタイミングで個室から誰かが出てきた。
別に何か考えがあったわけではないが、レントは咄嗟にその方向を見てしまう。誰でもよくあることだ。
ただ現実は時に奇怪なことを呼び、人を困らせることがる。
まさしくレントはその状況に立たされていた。




