78話: あーあ! この手だけはつかいたくなかったんだけどなあ!
「ファイアーボール!」
蠢きながら、こちらに近寄って来る緑色の触手に向かって
ピンク色の髪をした美女は、炎の魔法を繰り出した……!
ゴオオオオ……!
途端に、触手は燃え上がり、
地下室の薄暗い中、赤く燃えあがる炎が見えた……!
「はあ……はあ……!
ったく! キリがないわ!?」
ピンク髪の女は、そう言いながら、
後ろを振り向き……
「あんた達! 何やってんの!?
ほら、早く上の階に上がりなさいよ!?」
光治達に向かって
階段を指差しながら、そう言った。
「おい、待てよ!?
お前……フレイアでいいんだよな?
恋愛の女神の……!?」
光治は、階段の方へは、ぴくりとも動かず、
ピンク髪の女を睨みつけながら、そう言った……!
すると、ピンク髪のおばさんは、ムスッとした顔を見せる。
「こんな美女、二人もいるわけないでしょ?
くっ……ファイアーボール!」
フレイアは、じわじわと迫りくる触手の群れに
炎の魔法を放ちながら、そう言った。
「おい、フレイア!?
お前に訊きたいことが、山ほどあるんだが……!?」
光治がそう言うと、
フレイアは、眉間にしわを寄せながら、
光治を睨みつけて言う……!
「状況を見なさいよ!?
それどころじゃないでしょ!?」
フレイアがさっきから炎の魔法を放ち、攻撃してはいるが、
それでは根本的な解決にはならないようで、
いくら触手を燃やしたところで、
後から後から、新しい触手が床から生えて、こちらに向かって来ていた……
そして、悪いことには、
その触手の再生・増殖のスピードは、
フレイアの魔法攻撃のスピードを上回っているようで、
このままだと、じりじりと光治達が追いつめられるのは、
時間の問題だった……
「逃げるのよ!
ほら、とっとと階段を上がって!?」
フレイアが、懸命にそう叫ぶと、
銀子が光治の腕を掴んで、こう言う……
「せ、先輩……!
うちも、逃げた方がええと思います!
この状況ヤバイて!
あのオバハンも、そう言ってることだし……」
「オ、オバハン……!?
あんたが言うの? オバハンって……!?」
フレイアは、それまで光治を睨みつけていたよりも激しく
銀子のことを睨みつけて、そう言った……!?
「ひぃ!?」
銀子は涙目になって
光治の後ろに隠れてしまう……!
「隠れてんじゃねえよ!?
このぶりっ子があ!?
誰がオバハンだ!? ふっざけやがって!?」
フレイアに凄まれて、銀子はブルブル震えながら、
光治の袖を引っ張って、早く行こうとせがむ……
だが……
「待て、銀子……!
ちょっと待ってくれ!」
「え? 先輩……?」
光治は、銀子の頭を優しく撫でてやると、
フレイアを激しく睨みつけて言う……!
「おい!? フレイア!
俺は、まだ逃げられない!
だって、あの触手達の中心に、ヤミリンがまだいるんだ……!
あいつを助けないと……!」
すると、フレイアは、
目を丸くして驚いて、こう言う……
「はあ!? 何言ってんの!?
あの子なら、大丈夫に決まってんでしょ!?」
「何で大丈夫だって言える!?
あんなヤバイ触手の中心にいるんだぞ!?」
触手は先程よりも数が増えており、
それらに囲まれていたヤミリンの姿は、
もう既に見えなくなっていた……!
「人の心配より、自分の心配したらどうなの!?
自分たちで処理できないくせに!」
そう言いながらも
フレイアは、近づいて来る触手を
片っ端から、炎の魔法で対処していた……!
だが、そんなフレイアを見ていても、
光治は、感謝の気持ちなど一切わかない……
いや、むしろ……!
「そもそも、お前!?
何で俺達を助ける!?」
「はあ?」
「お前!? 黒幕だろ!?」
光治は、証拠こそあげられないが、
このフレイアこそが黒幕だと考えていた……!
銀子に首輪つけたり、
ヤミリンに、あんな触手が出るような技を教えたりして
光治達を苦しめたのだと、疑っていたのだ。
そして、光治に黒幕だと言われたフレイアは、
図星をつかれたかのように、一瞬、たじろぐが……
すぐに、弁明した……!
「黒幕だなんて、人聞きの悪い……!
そ、そりゃあ、月影魅夜が苦しむ様が見たくて
あれこれ考えたけどさあ……
あんな、想定外のものが出て来ちゃって、それどころじゃなくなったわ!」
だが、光治は、フレイアの言葉を聞き逃さない……!
「ほら、やっぱり影でこそこそ
何かやってたんじゃないか!?」
「だから、違うって!?
そりゃあ、私としては、本当は、
毬愛かノルちゃんをけしかけて、魅夜の目の前で、少年をレイプするとか、
不良どもをかき集めて、魅夜を集団で襲わせるとか
そういう、あの子が絶望するようなことしたかったけど……!」
「お前、やっぱ最低じゃねえか!?」
「ち、違うのよ!?
ノルちゃんが、うまく動いてくれなかったのが悪いのよ!?
月影魅夜の目の前で、少年をNTるとかすればいいものを、
陣風毬愛のパンツ盗むとか、変なことするし!?」
光治は、空いた口が塞がらない思いだって……!
「おい!? あれもお前の仕業だったのか!?
今はじめて知ったぞ!?
お前、あれのせいで、俺がどんだけ苦労したか……
いや、まてよ……?
おい……
やっぱり、銀子はノルンなのか……?」
「やー……まあ、そうなんだけどさあ……」
フレイアが、どこか困ったような表情でそう言って
バツが悪そうに、自分の頬を軽く掻いた……
「おい! フレイア!
お前、どこまでも最低の女神だな!?
銀子の……いや、ノルンの記憶まで奪って……!?」
「いや、ノルちゃんについては……
記憶喪失なのは、それは、主神様の決定だから……
私は関係ないっていうか……
いや、【支配の首輪】をつけて、
ちょ~っと私も利用させてもらったけど……」
「信じられないね……!」
しかし、そういうやりとりをしている間にも、
触手は次から次とやって来ては、光治達を襲おうとして、
フレイアの魔法の返り討ちにあっていた……!
「はあ……はあ……!
とにかく、ここは一度上の階へ!」
「だから、ヤミリンを助けなきゃいけないんだって!?」
「ああ、もう! わからずや!?」
まるで言うことを聞かず……いや、それどころか、
隙があったら触手の群れの中に飛び込んでいきそうな光治に
フレイアは、ついにキレた……!
「あーあ……!
この手だけは使いたくなかったんだけどなあ……!
丸っきり、悪役みたいな行為だしぃ……!
でも、少年が、そういう態度で来るんなら……!
仕方ないよね!?」
「は? 何言ってんだ?
ババアが何、粋がってるんだよ!?」
光治に侮蔑の眼差しで、そう言われたフレイアは、
これでもかというぐらい、彼を睨みつけた後……?
「少年……
あんた……神を侮辱したこと……
後悔させてあげる……!」
フレイアは、パチンッと、指を鳴らした……!?
「ひぃ!?」
その指パッチンは、
まるでヤミリンが銀子の首輪を締めた時のような動作で、
銀子は思わず身構えるが……?
「はれ?」
銀子の身には、何も起こらなかった……?
しかし……?
「ぐっ……!?
ぐ、ぐるじぃ……!」
どこからか……?
いや!?
階段の方から、苦しそうな女の声がした……!?
「え? あの声……!?」
そして、その声に
光治は、聞き覚えがあった……!
「……くん……
た……たす……けて……!?」
苦しみに耐えて、何とか絞り出したような、
かすれた声で、その誰かが、光治に助けを呼んでいた……!?
その声に、光治はつい、うろたえてしまう……
そして、そこへ追い打ちをかけるかのように……!?
「ほぉら? あの子が呼んでるわよ?
早く行かないと!
首が締まり過ぎて、頭と身体がおさらばしちゃうかも……?」
フレイアが、にやにやしながら、
まるで光治がうろたえているのを
楽しむかのように笑っていた……!?
「て、てめえ!? フレイア!?
今度は何をした!?」
光治は、そう言いながら、
フレイアの返答を待たずに、駆け出した……!
上へ昇る階段に向かって!?
「ちょ……!? 先輩!
待ってえな!?」
作者「小学生の頃さあ……」
せや姉「うん」
作者「とある山に遠足に行ったのね?」
せや姉「定番やな」
作者「その山には、お寺があったんだけど……
そのお寺と別に、お稲荷さんをまつった御堂があってね……」
せや姉「う、うん?」
作者「そこで集合写真をとったわけですよ……
遠足の記念として……」
せや姉「……」
作者「本当は、お寺の方で写真を撮る予定だったのに、
どういうわけか……
お稲荷さんの方の御堂で写真を撮ることになって……
たぶん、お寺の方は、観光客が多いから
観光客とか余計なものが写っちゃうってんで
それを避けて、
誰も来ないような、ひっそりとした御堂で
写真撮ったんだと思う……」
せや姉「あれ……この流れ……あれ?」
作者「ところがだ!」
せや姉「ひぃ!?」
作者「実は、その御堂こそが
何か、霊的なものがいたようで!
何と、その集合写真!
生徒の一人の左肩に青白い人の顔が……!?」
せや姉「ぎゃああああ!? やっぱりいいいい!?」
作者「つまり、観光客とか余計なものを撮らないために
御堂で集合写真撮ったところ、
観光客とはまた別に、余計なものが撮れちゃったってわけよ!w
なに、このオチみたいな話!?」
せや姉「や、やから、そういう怖い話はやめ言うて……ぐすっ」
作者「あ、泣いちゃった?」
せや姉「ぐすっ……泣いてなんか……おらへんわ……」
作者「ちなみに、その青白い顔が左肩に写っちゃった生徒、
後日、2~3日風邪で学校を休んだっていう噂だった……」
せや姉「><」
作者「くぅ! あざとい! せや姉の、そういうところが
作者より人気ある理由なんだろうね!w」
せや姉「ホンマ怖がっとるんやけども!?」




