71話: 縁宮子の憂鬱
縁宮子は、生まれつき、額に奇妙なアザを持っている……
そのアザは、いつまでもジュクジュクとして乾いたりせず、
常に真っ赤に、痛々しい色であった……
さらに気味の悪いことには、そのアザは、
まるで“瞳”のような形をしていて……
傷口は、目の形に楕円形に割れ……
その真ん中に、目玉のようなコブが、丸々と出来ていた……
まるで、第三の目ともいうべきその形は……
見る者を皆、恐怖させた……
両親でさえ、宮子のアザを見る時は、
思わず顔をそむけてしまう程に……
……
宮子は、小さい頃から、このアザのせいで、
近所の同年代の子達から、ずっと【悪魔の子】と忌み嫌われていた……
まあ、普段は大きな絆創膏を貼っているので、
そのアザが、人前に晒されることは、まずないのだが……
ただ、それでも……
外見だけのことだったら、まだ良かったのだが……
そのアザには、どうも何か……?
奇妙な力があるようなのだ……
というのも……
『宮子の額のアザを悪く言ったやつは呪われる……』
そんな噂が立つほど、
彼女のアザをバカにした者達が
偶然にも次々と、酷い目にあったからだ……
幼少期、
宮子の額のアザをバカにした近所の子達が全員、
次の日から、三日三晩の高熱を出して寝込むことがあった……
そして、悪い噂は、あっという間に広まるもので……
「ねえ? あのうわさ、しってる?」
「もちろん……」
「あのこが、きっと そうだよ?
キモイね……」
「やめなよ? のろわれるでしょ……?」
いつの間にか、子供達の間では、
宮子は【悪魔の子】だと呼ばれるようになっていた……
しかも、それは、
何も、子供に限った話ではない……
何かの時に、宮子の家の親戚が来た時だった……
大人達が、ひそひそと、宮子がいないと思って、
こんな噂話をしていた……
「ヨシオさん、胃癌が発見されたって……」
「本当かい?」
「近所の子供の噂では、
あの子の【目玉】のせいで
うちの一族が、呪われているとか……」
「しっ!?
バカなこと言うもんじゃないよ!
あの子が聞いていたら、どうるすんだい?」
「でも……?
確かに、あの子が生まれてから、うちの親類は
皆、不幸続きだからねえ……
偶然にしては出来過ぎじゃないか?」
「天中殺というやつなんじゃないか……?
ほら、天中殺の生まれの人間は、
周りの人間を不幸にするそうだよ?」
「ああ、それかもね……
まったく、それが本当なら、
とんだ、疫病神だね、あの子は……」
口の悪い親戚達が、そんなことを言っているのを、
偶然聞いてしまい……
宮子は、子供ながらにショックを受けた……
だが、身体のことなど、宮子にはどうしようもない……
彼女は、懸命に額を絆創膏で隠して……
そして、人々の悪い噂に耐えながら
生きていくしかなかった……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
そんな宮子が変われたのは、
今から9年ほど前……
宮子が4歳の頃……
両親が共働きである宮子は、
保育園に預けられていたわけだが……
その日も、宮子は、いつものように
保育園の庭の隅の方で、一人で座っていた……
「はあ……」
本当は、同年代の子達と一緒に遊んだり、
滑り台などの遊具で、遊んだりしたかったのだが……
「やだ! こっち、みてる!?」
「いこ! のろわれちゃうよ!」
宮子が近づくと、皆、気味悪がって逃げて行くし、
かと言って、宮子が一人で遊具で遊んでいるものなら、
誰も近寄って来なくなり、
保育園の先生から『遊具を独占しないこと』などという
見当はずれなお叱りを受けるので、近寄れないのだ……
「あたち……
なんか、わるいこと ちたのかな……?
なんで、あたち……
こんなに、みんなに きらわれてるの……?」
返事が返って来ることのない質問……
そんなことを呟きながら、
宮子は、膝を抱えて、
元気に遊ぶ同年代の子達を、羨ましそうに見ていた……
「うぅ……ぐすっ」
だが、本当は、声をかけて欲しかった……!
でも、自分から声をかけたら、嫌がられるから……!?
だから、誰かに声をかけて欲しかったのだ……!
だが……
「くすくす……
あくまが ないてるよ……?」
「なきがおも、キモイね……」
子供達の残酷なヒソヒソ声が聞こえる……
子供は純粋だ……
そして、純粋だからこそ、
思ったことを口に出してしまい、それ故……
子供は、残酷なのだ……
その言葉の凶器がグサグサと
宮子の心に突き刺さった……
(かみさま、ひどい……
こんなアザなんて、なんで……?
なんで、あたちに つけたの……!?)
膝を抱えながら、
涙を呑んで、こんな身体で生まれさせた神を恨んだ……
だが……
「ねえ、きみ……!」
「へ?」
捨てる神あれば拾う神あり、とでも言うのだろうか?
誰かが、宮子に声をかけて来た……!?
「ねえ、聞いてる?」
宮子が、待ち望んでいた通り……
誰かが声をかけて来たのだ……!?
宮子は、顔をあげる……?
涙でにじんだ瞳には……
逆光も相まって、
その人物の顔が、光輝いて見えた……!
そう……
そこにいた人物こそが、光治だ……
光治は、宮子に、声をかけてくれたのだ……!
「ねえ、きみ……
みやこちゃんって、いうんだろ?
こっちで、いっしょに、あそぼうよ!」
その時の光治は、
宮子にとって、暗闇に差しこんだ光のように見えた……
生まれて初めて『いっしょに、あそぼう』と言われた宮子……
一瞬、にまぁ~っと、顔を緩ませるが……
すぐに、ぶんぶんと頭を左右にすると、
そんな幻想を、頭の中から打ち消し……
世の中、そんな甘い話はない……
彼女は、この短い人生の中で、
そのことは、嫌というほど味あわされて来た……
そして、額の絆創膏を
懸命に手で隠しながら、こう言い出す……
「え……でも……
あたちのこと、こわくないの?」
今にも泣き出しそうな、不安な顔で宮子は言うが、
光治は、首を傾げて答える。
「こわい? なにが?」
「え……」
宮子は、戸惑ってしまった……
そんな風に……光治のような態度をとられたのは
初めてだったからだ……?
だが……
「お、おい!? こうじ!?
なんで そいつ、さそってんだよ!?
バカか、おまえ!?」
光治の友達の一人が、
光治が、宮子を遊びに誘っているのを発見し、
怖々とした表情で、心ない言葉を叫んだ!
「のろわれるぞ!」
「ひゃあ! にげろお!?」
そう言って、光治と遊んでいた友達は、
皆逃げ出してしまった……
そして……
宮子は、現実に引き戻されて、
つい、ため息をしてしまう……
「はあ……」
だが、あれが普通の反応なのだ……
そして、真実を知ったら、
きっと、目の前の彼も……
同じように逃げ出してしまうことだろう……
そんなことを考えて、ひとり、絶望した……
「なんだ、あいつら……?」
だが、光治は、
不思議そうに、首を傾げて言うだけだった……?
「こんなこ、どこが こわいんだよ?」
「あ、あのね……
みんな、これが こわいんだよ……」
そう言いながら、宮子は
自分の額の絆創膏を見せたが……
「なにそれ? けがしてるだけじゃん?」
「へ?」
「そんな、ばんそうこう! なに、こわがってるんだろな!
あいつら、おっかしい!」
光治は、そう言って笑う……
宮子は、その笑顔を見て……
心が洗われるように思えて……
宮子の目には、光治が
自分を闇の中の牢獄から救い出してくれる
王子様のように見えて……
「ふふふ、そうだね……」
気がついたら、宮子も、
光治と一緒に笑っていた……
……
それからは、宮子は、
光治と二人で、めいっぱい遊んだ……!
遊具も、色々なものをつかって……!
次の日も……
そのまた次の日も……!
二人で遊んで楽しんだ……!
そして、二人で楽しそうに遊んでいると……
やがて周りの子達も、
宮子に害はないと感じ取ったのだろう……
「い~れ~て!」
「あ、わたしも!」
「なんか、たのしそう!」
一人、また一人と、
遊びの輪に加わっていき……!
宮子の額の、呪いの噂は……
子供達の記憶から消えていった……
……
いつしか、宮子は……
光治のことが好きになっていた……
いつも彼の手を握って、
光治が行くところには、どこにでもついて行った……
遊ぶ時はもちろんのこと……
お昼を食べる時も……
歌を歌うときも……
トイレにまでついて行こうとした時は、流石に止められたが、
それでも、宮子は、光治の手を離すことはなかった……
宮子は、光治のことが好きだった……
でも、宮子は、まだ子供であった……
だから、もしかしたら、それは、
ただ『好き』というだけで、
恋とは呼べないものだったかもしれない……
だが、宮子は……
いつでも、彼の隣にいたかったのだ……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
(だが……あたしは……)
ヤミリンは、【ダンスダンス・オブリビオン】のダンスを
踊りながら、遠い過去を思い出して……
そして、後悔をしていた……
あの時のこと……
その話を、光治にしてしまった時のことを……
……
『ねえ、コウちゃん?
あたちの、ごきんじょさんで、
ミヨちゃんっていう、
かわいそうな子が、いるらちいんだけど……』
あれさえ……
あれさえなければ……!
全ては順調にいっただろうに!?
『ママが、その子に
げんきがでる おてがみ かいてほちいって、
いうんだけど……?』
早い話、
宮子は、光治と魅夜を引き合わせてしまったのだ……
作者「だあー! つかれたー……」
せや姉「どした?」
作者「今日は人助けして、疲れた……」
せや姉「え? 何したん?」
作者「いやあ、迷子になっていた……
あ、やっぱ、やめておくわ!w
何か、それ言っちゃったら
人に褒められるためにやったみたいになるし!w」
せや姉「さっき、迷子がどうとか聞こえたようやけど……?
またショタ関係か?」
作者「ちげーし! 何でもショタと結びつけんなし!」
せや姉「……」
作者「なに、その、疑いの眼差し……?」
作者「まあ、いいや……
とにかく……ふぁ~……
交番行ったり、余計に歩いたから……もう眠くて眠くて……
今日はもう疲れたから、あとがきはこれまで!
私は、もう寝る!」




