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 70話: 何でこんなに楽しいんだ?

「お、お前……!?

 言っとくけど! あたしだって、お前のこと嫌いなんだからな!?

 コ……あの人のことについては、忘れてないんだからな!?」


 ヤミリンは、

 パンティ仮面に『今はお前のこと大嫌いだ!』と言われたことが、妙に心に引っかかり、

 つい、売り言葉に買い言葉という感じで反発して、そう言った。


 すると、パンティ仮面は、小首を傾げる。


「あの人?」


 その動作に、ヤミリンはイラッと来る……


「とぼけるなよ!? この泥棒猫!

 昨日寝たとか言ってただろ? あの人と!」


 ヤミリンにそう言われたが、パンティ仮面は、

 やはり何を非難されているのか、わからない……


 そして、『とりあえず、誤解を解いておこうか』と思い……


「いや、一緒に寝たのは、そこの子なんだが……?」


 そう言って、膝を抱えて、いまだ泣いている銀子を

 指差して、そう言った……


「はあ!? 何ふざけたこと言ってんの!?」


 ヤミリンは、声を荒げるが……



『おやおや? 何か聞き捨てならないぞ!?』

『あらあら! まあまあ!』

kwsk(くわしく)!』

『レーズ! レーズ!』



 視聴者達は、お祭り騒ぎで、

 その話題に飛びついていた……!


「おい、視聴者ども!? 食いつくな!

 変態どもめ!?」


 そうやって、ヤミリンは視聴者を非難するが……



『うししし! しーません!』

『ああ、ヤミリンに罵倒されるよろこび……!』

『今までの猫かぶったヤミリンもいいが、

 この口の悪いヤミリンも、これはこれで……!』



 むしろ、逆効果という感じで、

 視聴者達は、喜んでそんなコメントをつけていた……


「こ、こいつら……!

 ホントどうしようもねえ!」


 一方、ヤミリンは、ヤミリンで、

 コメカミのあたりの血管を浮き立たせ怒りながらも、

 心の中では、またいつもの日常が戻って来たような気で、喜んでいた……


(あたし……配信続けてもいいんだろうか……?)


 そんなことを思いながら、ヤミリンは、

 ゲームのマットの上に乗った。


 すると、ヤミリンの方へ向かって

 パンティ仮面は声をかけて来る……


「おい、ヤミリン!

 もう一度確認するが、俺……あたいが勝ったら、

 その銀髪の子は、解放してくれるんだろうな?」


「ああ、いいぜ?

 でも、お前が負けたらどうしてくれる?」


 ヤミリンが、少し意地悪くそう言って

 笑って見せた……


「ん? 今更何言ってんだ?

 その時は当然、服を脱いでやるよ」


 パンティ仮面が、平然とした口調で、そう言うので、

 却ってヤミリンの方が、驚いてしまう……!?


「え? い、いいのか……!?

 お前、そっちのおしっ……銀髪の子が服脱がされるの、

 反対してるみたいだったのに……?」


 そう言って、うかがうような視線で、パンティ仮面を見るが、

 彼女は平然とした様子で、こんなことを言う……


「武士に二言はない!

 というか、アレだ……

 顔が晒されて、服を脱がされるというのはNGってだけで……

 顔を隠せているのなら、服を脱いでも大丈夫だ!

 何なら、全裸になるまで勝負してやってもいいぞ?

 その代わり、この頭に被っているパンティは

 絶対に外さないけどな!」


 パンティ仮面は、そう言うと、

 サムズアップして見せる……?


「そ、そうなのか……」


 ヤミリンは心の中で『女の露出狂って本当にいるんだな……』などと

 思ったりする……



「なあ……ヤミリン?

 課題曲は、あたいが選んでいいか?」


「ああ? 構わないぜ……?

 このゲームは、あたし、マスターしてるから

 どの曲でも負けねえし!」


 ヤミリンに、許可をもらったところで、

 パンティ仮面は、ダンスの曲を選んだ……


(悪いな、ヤミリン……

 お前の弱点をつかせてもらう……!)


 パンティ仮面は、心の中でそう思いながら、

 ダンスの曲を選び始める……


 ……



Myst(ミスト) ~そんなことは重要じゃない~』



 ナレーションが曲名を読み上げると、

 ヤミリンは、目を丸くして驚き、

 つい、パンティ仮面の方を向く……


「おいおい、いいのか?

 あたしの得意な曲じゃん、これ?」


「ああ、構わない」


「は! 楽勝だな、こりゃ!」


 ヤミリンは、大喜びで、

 ゲームに集中し始めた……


 ……


 『Myst』は、途中で曲調がガラリと変わる曲……

 それ故に、ダンスの内容も急に様変わりするので、

 瞬時の変化を求められる、難易度の高い曲である……


 そして、そこにこそ、ヤミリンの弱点があると

 パンティ仮面は考えていた……!


 速いテンポで始まるこの曲、途中から急にテンポが遅くなる……

 最終的に、最初のような速いテンポに戻るのだが、

 ヤミリンは、そのテンポの遅くなる瞬間、

 若干ではあるが、足がもつれそうになるのだ……


 そして……?


 ……


「え……? バ、バカな……!?」


 ヤミリンは、ダンス後の得点表示を見て、

 驚愕した……!


 自分の得意な曲のはずなのに、

 僅差で、パンティ仮面に負けてしまったからだ……!?


「よし! 俺の勝ち!

 銀髪の子は、解放してもらうぞ!」


 パンティ仮面は、高らかに勝利宣言をした。


「お、おい!?

 も、もう一回勝負しろ……!」


 自分の得意なもので負けたヤミリンは、悔しくて

 再戦を望む……


 すると、パンティ仮面は、

 胸の前で腕組みをして、上から目線で偉そうに言って来る……


「ああ、いいぜ?

 何度だって、俺が勝つけどな!」


「言ったな!?

 お前、負けたら、絶対服脱げよ!?」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 そして、何度も【ダンスダンスオブリビオン】で勝負をした……


 だが、何度挑戦しても、

 惜しいところで、ヤミリンはパンティ仮面に勝てなかった……


「くそお……何で勝てない?」


「ふっふっふー!」


 そこで、他のゲームに変えて、勝負してみるも、

 やっぱり、同じように、いいところでヤミリンは負けてしまった……


 ……


「くそお……!」


「俺に勝とうなんて、十年早いんだよ!」


「ちっくしょお!

 どっかで聞いたようなセリフを!?」


 だが、勝てないながらも、

 ヤミリンは、パンティ仮面と勝負をしているのが、楽しかった……


 もはや、PVのことなど気にせずに、

 純粋に、ゲームに没頭して楽しんでいたのだ……



 しかし、ヤミリンは不思議に思う……

 何で、こんなにゲームが楽しく思えるんだろう……と?

 ちょっと前まで、ゲームなんて、

 配信のための道具程度にしか思っていなかったのに……?


 そりゃ、いくらか練習もしたが、

 それはゲームを楽しむというよりは、

 配信を面白くするためにやっていたことだ……

 今みたいに純粋にゲームそのものを楽しんだことなんて

 最近はほとんどなかった……


 それなのに……?

 何故、今、ゲームが楽しい……?


 ……


「あ、そか……」


 しかし、少し考えてすぐに、

 答えが浮かんで来た…… 


(わかった……! この、パンツ被った変態女……!

 コウちゃんそっくりなんだ……!?)


 もちろん、光治とは似ても似つかない……

 光治は、こんな変態的なことをしないし、

 何より、この変態は、女だ!


 だが……


 パンティ仮面と、ゲームで対戦をしているのは、

 温かな光に当たっているような……

 自分の中の醜い部分が洗われるような……そんな感じで……?


 それは、ヤミリンが小さい頃、

 光治と一緒になって遊んでいた時の感覚にそっくりだったのだ……!


(いやいやいや……

 何で、よりによってこんな変態と、コウちゃんを似てるとか考えるんだよ……?

 バカか、あたしは……!)


 そもそも、ヤミリンは、嫉妬に狂って

 この女のことを『コロス』と言っていたのに……

 もう、そんなことは感じない……


 純粋に、対戦を……

 ゲームを楽しんでいた……!


 ゲームを楽しみながら……

 あの日の……

 まだ子供だった頃の、光治の姿が目に浮かぶようで……


 公園で、始めて、光治と出会った時のこと……



『ねえ、きみ、みやこちゃんって、いうんだろ?

 こっちで、いっしょに、あそぼうよ!』


『え……でも……

 あたちのこと、こわくないの?』


『こわい? なにが?』



 ヤミリンを、闇の牢獄から救い出してくれた光治……


 あの日、光治が声をかけてくれるまで……

 彼女は、一人だった……


 忌むべき呪いのアザのせいで……

 周りから【悪魔の子】と忌み嫌われ……


 光治という光が差し込むまで……

 彼女は闇の中、一人だったのだ……

作者「伊集院光さんが昔、ラジオで言ってたんだけどさあ……」

せや姉「唐突やな……」

作者「あ、作者、昔は、深夜ラジオよく聞いてたのね?

   声優さんのラジオとかよく聞いてたんだけど!w

   もう今は、声優さんなんて、

   誰が誰やらわからんくなったけど……」

せや姉「まあな」

作者「てか、最近の声優さん、特徴的な声の人少なくなって

   聞いていて区別つかんわ!w」

せや姉「おい、やめろ!? その手の話はヤバイ!?

    また怒られるで!?」

作者「ったく……世知辛い世の中よ……」

せや姉「ホンマな」

作者「でも、まだ声優さんは、

   真面目に声のトレーニングとかしてる感じがあるから、いいのよ……

   普段の声と、仕事の声全然違うし、

   台本のキャラに、感情こめて、ちゃんとやってると思う。

   問題は、声の仕事のくせに、原稿を読み間違えまくりのア……」

せや姉「やめえ!? やめーや!? ホンマ怒られる!

    その悪口はダメや! 絶対!」

作者「ホンマ世知辛い世の中よ……」

作者「で、伊集院さんのラジオの話なんだけど……」

せや姉「あ、忘れてへんかったんやな」

作者「伊集院さんが、ラジオで言ってたんだけど、

   あの人が『俺が生きている間にタイムマシンなんてできないんだよ』

   っていうんだよ」

せや姉「ほう、その心は?」

作者「本当にタイムマシンがあったら、未来の自分が、

   自分が一番苦しい時間に戻って、助けに来てくれるはず……!

   だけど現実は、誰も助けに来てくれないって!

   だから、タイムマシンなんて、少なくとも

   自分が生きている間にはできないんだって……」

せや姉「うわあ、案外まともな理由なんやな」

作者「で、作者も、ホントそう思う……」

作者「タイムマシンなんてあったなら、今の、この一番苦しい時に

   未来の自分が助けに来てくれるはず!」

作者「なのに……なのに、現実は……ぐすっ!」

せや姉「もういいから、寝なさい、あんたは……」

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