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 59話: こんなん、惚れてまうやろ!?

「ここだな……」


 そこに確かに、古ぼけたビルがあった……


 三階建てのビルで、どこか薄汚れており、

 閑散としているところから、人が誰もいないことが感じ取れた……


 光治は、この近くを何度も通ったことがあるので、

 このビルも見かけたことがあるはずなのだが、

 どうも記憶にない……?


 恐らくは、風景の一部として捉えて、

 こんなビルがあることに気付かなかったせいだろうが……


 ……


 敷地に入ってみると、

 廃ビルの一階は、何かの商店が入っていたようで、

 ショーウィンドらしきものがあった。


 この不況の煽りを受けて、店が潰れたとかなのだろうか……?


 窓ガラスには、【テナント募集】の張り紙と共に、

 【立ち入り禁止】の札が貼っている……


 立ち入り禁止と書かれていて、一瞬、躊躇したが、

 裏手に回って、勝手口らしきところのドアの前に来る。


「これ、鍵がかかってないですね……

 中に入れそうですわ……」


 銀子は、その出入り口のドアノブを回してみてから

 そのように言った。


 光治は、無言で頷くと、

 銀子と共に、廃ビルの中へ入って行く……


 ……


 どうやら、本当に勝手口だったようで、

 入ってすぐのところには、流しや、給湯器などがあった……


「さて……

 入ってみたはいいが、どこに行けばヤミリンに会えるのか……?」


「あ、先輩……! あそこ!?」


 銀子は、そう言って、建物の奥の方を指差した……?


 見てみると、

 そこには看板が立てられており、

 そこには張り紙があり、やや乱雑な文字で、こう書いてあった……



『挑戦者の方は、地下へどうぞ!』



 その先に目をやると、

 地下へと続く階段が……


「さて、鬼が出るか、蛇が出るか……?」


 光治がそう言って、

 階段の方へ足を進めようとするが……?


「待って、先輩……!?」


「ん?」


 銀子が慌てて、光治を止め……?


「何か書いてありますわ……」


 そう言って、看板を指差した。


 見てみると、確かに、

 看板の下の方に、小さく……

 昨日ヤミリンのサイトで見かけたような、

 光治には記号にしか見えない文字があった……?


「またこれか……」


 光治は、そう言って、銀子の方を向く、

 この文字は、銀子にしか見えないのだ。


「何て書いてあるんだ……?」


 光治がそう尋ねると……?


 銀子はため息を吐いてから……

 何やら、悲しそうな表情をする……?


「おい、どうしたんだ?」


「あの……

 先輩は来てはいけないそうです……

 『連れて来たらコロス』って……」


 なるほど、どうやらヤミリンは、

 銀子だけに用があるようだ……?


「そんなの、構うことないだろ……?

 むしろ、お前一人で行かせた方が

 で恐ろしいぞ……?」


 光治はそう言うが、

 銀子は、ぶんぶんと頭を横にふって、それからこう言う……


「いいえ、先輩……

 うち、ここから先は、一人で行きますよって……」


 光治は『は? 何言ってるんだ、こいつ?』という目で見るが……

 銀子は真剣な表情で、光治を見つめて来た……


「おい、ここまで来て、何言ってんだ?

 俺も最後まで付き合うぞ?」


 光治はそう言うが……

 銀子は、真剣な目で、光治のことを見つめ……

 いや、どこか睨みつけるように光治をじっと見て……!


「おい、銀子……お前……?」


 その目にキラリと光るものが……!


「お前……何で泣いてるんだ!?」


「やって!?

 さっきの『コロス』て言葉!?

 先輩、本当に殺されたら、どないすん!?

 そんなん、絶対連れていかれへんわ!?」


 銀子は、そう言うと、

 地下への階段の前で左右に大きく腕を広げ、

 とうせんぼをして来る……!?


「おい……!?」


 そして銀子は、

 悲しい表情で、光治のことを見ながら、こう言うのだ……


「うち、昨日は……先輩のご家族に会えたりして……

 記憶喪失になってから初めて、人の温かさに触れたり……

 楽しかったから、つい甘えてしもうたけど……

 本当は、先輩を巻き込んではいけなかったんや……

 そもそも、先輩に、

 うちを助ける理由なんてないんやし……」


 銀子の話を聞いて、

 光治は、声を荒げた!


「おい、何言ってるんだ!?

 困っているやつを助けるのに

 理由なんて必要ないだろ!?

 いいから一緒に行くぞ!?」


 そう言って、

 銀子の制止を振り切って行こうとするが……


「先輩……

 すんません……!」


 銀子は、そう言って、

 手でピストルの形をつくり、その銃口を……人差し指を

 光治に向けた……


「ばーんぐ!」


 銀子がそう言って、光治の足元に向かって

 ピストルを撃つマネをする……!?


 すると……?


「なっ……!?

 あ、足が動かな……!?」


 突然、光治の足が

 地面に接着剤か何かで張り付けられたように

 動かなくなってしまった……!?


「お、お前……!? 銀子……!?

 何をした……?」


 光治が、そう言うと、

 銀子は、うつむきながら、ぽつりぽつりと言い始める……


「昨日、ちらりと言うたでしょ?

 うち、時間が止められるんです……」


「あれ……本当のことだったのか?」


 光治が驚いてそう言うと、

 銀子が、苦笑しながら、光治を見つめて言う……


「今、先輩の身体の周りの空気の時間を止めました……

 やから、空気が固まって、先輩の足が動かなくなったんです……

 先輩の時間そのものを止めたら、

 こうやって、お話できんし……」


「おい……!?

 まさか、銀子、一人で行く気か……!?

 お前、正気か……!?

 相手はお前のこと『コロス』とか書いてたんだぞ!?

 どんな罠を用意しているか……?」


 光治はそう言って、銀子を止めようとするが……

 銀子は、大きなため息を吐くと、

 ブンブンと大きく頭を左右にふって、悲しそうに言う……


「先輩……うち……

 先輩に迷惑かけたくないんですわ……!

 これ以上、うちを困らせんといて下さい!」


「迷惑だなんて……!?

 俺はそんなこと思ってなんか……!?」


 光治は、そう言うが……


「ああもう! めんどくさ!

 何で察してくれないんや!?」


 そう言って、銀子は、

 ぼろぼろと大粒の涙を流し出す……!?


「銀子……?」


「もう堪忍してや!?

 先輩は、優し過ぎるんや……!

 嫌やわ、ホンマ!?

 何で、彼女さんおるのに、

 うちみたいなのに優しくするん……!?

 こんなん、惚れてまうやろ……!?

 そしたら、うち、もっと先輩に迷惑かけて……!

 そんなん嫌やから、うち……うちは……!」


 そう言って、銀子は、両手で顔を覆い……

 泣き出し……


 やがて、はっとしてから、

 慌てたように時計を確認し……


「あかん……もうこんな時間やん……?

 うち、行きますよって……

 9時までに行かないと殺されるそうやし……」


 そう言って、涙を流しながら微笑み……

 くるりと踵を返して、地下への階段に向かう……


「おい、銀子!? 待てよ!?」


 光治は、そう言って、銀子を止めようと

 懸命に腕を伸ばすが……!?


「うぅ……!? くそっ!?」


 足がガッチリと止められているせいで、

 銀子の背中には到底届かなかった……!?


 そして銀子は、階段を一段降りた後、

 くるりとふり返り……


「先輩……

 仰山……あり……がと……!

 ホンマ……楽しかったで……!」


 光治に、にっこりと微笑みながら……

 涙を流しながら、そう言った……


「銀子おおおおお!?」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 階段の途中で、銀子は、サングラスとマスクを付け、

 それから階下に降りて行く……


「おーっと!?

 ここで、階段の方から音がして参りましたあ!

 挑戦者が到着したようです!」


 階段を下りてすぐに、銀子の耳は、

 甲高い声の少女がそう言っているのが聞こえて来た……?


 薄暗い地下の部屋……

 その中央だけ、何やらスポットライトの光が集められ、

 煌々と、その人物を、照らし出していた……?


 そこにいたのは……

 何かのアニメキャラなのだろうか……?

 ピンク色のウサギのようなお面をつけた少女……


 その少女がマイクを片手に、

 三脚で立てられたカメラの前で、何やらやっていた……?


(あいつがヤミリンなんか……?)


 銀子がそう考えていると……?


「あーと、いけません、これはぁ!?

 顔を隠しているみたいですねえ……!

 自分の顔に自信がないのでしょうかあああ!?

 もしかして、ドブス!?

 いえいえ!

 ヤミリン、彼女の素顔を、事前に確認しましたが、

 結構な美少女さんでしたよ!

 なのに、何で顔隠すんでしょう? 嫌味でしょうか?

 ヤミリンわかんないですぅ!」


 ヤミリンと思われる少女は、そう言って

 銀子のことを茶化していた……!?


「やーん! 今までにないぐらいリプがある~!

 やっぱり、こういう企画ものって皆好きなんだあ?

 たくさんの人が見てくれて、ヤミリンしあわせ~!

 でもでも、視聴者のみんなが、チャンネル登録してくれたら

 ヤミリンもっとしあわせになっちゃうかも~?

 やだ~! ここ笑うとこだお?

 ここで笑っておかないと、もう笑うとこないですよん?

 って! おいおい!」


 目の前のお面の少女の、おちゃらけた様子に

 銀子の怒りのボルテージが上昇していく……!


 自分は、こんな思いをしてまで……

 先輩に別れを告げて来たのに……

 こいつは、それを遊びにして……!?


 銀子は、そう考えていると、

 居ても経ってもいられなくなった……!?


「四の五の言わず、戦いを始めようや!?

 こちとら、あんたのせいで今……!

 とてもムシャクシャしとるんや!?」


 銀子は、そう言って、

 ヤミリンに向かって、戦いの構えをとった……!?


「かかってこんかい!? おんどりゃあ!?

 しばいたるわあああ!?」


 銀子がそんな叫び声をあげたが……


「チッ……」


 ヤミリンから一瞬、舌打ちのような音が聞こえて来て……?


「やーん! ヤミリンこわーい!

 何か、この子、ヤバイこと言ってるぅ!

 そういうイケナイ子には~? 魔法をかけちゃうぞお……!

 えーい!」


 そう言って、ヤミリンは、

 パチンと指を鳴らす……?


 すると……?


「うっ……!?」


 突然、銀子は、息ができなくなり、

 呻き声を上げてしまう……!?


(首輪が……!?)


 そうなのだ、ヤミリンの合図によってなのか……!?

 銀子の首輪が急に締まり始めたのだ……!?


 そして、苦しくて、膝から折れて

 床に四つん這いなってしまう銀子を横目に

 ヤミリンは「うふふ」と笑いながらカメラに向かって

 こんなことを言い始める。


「みんな、ごっめーん!

 ちょっと、配信停止するね!

 挑戦者さんに、ルール説明してくるから!」


 ポチッと、マウスをクリックして、

 ヤミリンは、録画を停止した……



 そして、完全に配信が停止になったのをモニターで確認すると、

 ヤミリンは、つかつかと銀子に近づいて叫びつける!?


「おい、てめえ? 糞女……!

 空気読めよ!?

 あたしの配信、滅茶苦茶にしようとしやがって!?」


「く、苦しい……!

 あんた、何を……!?」


 だが、手を地面につくほど息が苦しい銀子には、

 ヤミリンの声など届かず、自分のことでせいいっぱいであった。


「はあ!?

 それぐらいわかるだろ!?

 てめえの首輪締めてやったんだよ!」


 ヤミリンはそう言って、

 銀子の足を思いっきり蹴りあげた……!?


「ぐっ!?」


「コウちゃんの家で、散々良い思いしやがってえ……!?

 それだけでも、処刑に十分なのに、

 折角、使ってやろうと思った、あたしの邪魔ばかり!?

 てめえ、皆の前で笑い物にしたあと、

 ブッコロしてやるから覚悟しろよ!?」


 ヤミリンは、そう言うと、足を上げ……?

 銀子の背中を想いっきり踏んづけて来た……!?

作者「銀子って文字をキーボードで打ってると、

   何故だか時々【ちんこ】って打っちゃう時があるの……」

せや姉「何か、変なこと言うとるんやけど!?」

作者「恐らくは、【GINKO】って打ちたいところを

   【TINKO】って、【G】と【T】を間違えて打っちゃうんだろうね」

せや姉「何やそれ……」


作者「てか、風邪ひいたっぽい~……」

せや姉「せやったん?」

作者「うん、頭痛くてガンガンする……

   あと身体が何か重く感じてうまく動けない……

   冗談じゃなく、家の中を歩くのすら、キツくて……」

せや姉「大分重症やんけ!?」

作者「あれ……これ……本当に風邪……?

   てかね、本当に身体が麻痺したみたいに

   動けなくなってるんですけど……?

   風邪薬のんで、何とか抑えてるけど……」

作者「てか、本当は、

   今日は、小説自体お休みにしようかと思ってたんだけど

   書いてたら、案外、今日の分書き終わったから、投稿してみた次第で」

せや姉「いや、身体動かなくなるって言うとるのに……寝なさいて」

作者「というわけで、ちょっと短いですが、

   今日のあとがきは、これで終わります。ごめんなさい……」

せや姉「早よ、あとがきなんて書かんと寝なさいて」

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