53話: 部屋 と ジャージ と 私
「あはは! ごめん! ごめん!」
光治の姉・日吉虹花は、そうやって笑いながら、
光治の肩を叩きながら謝った。
銀子は今、虹花の勧めで、シャワーを浴びていて、
現在、リビングには、光治と虹花の二人だけでいた……
「笑いごとじゃないよな!?」
はれ上がった頬をさすりながら、光治は
虹花に向かって、そう叫んだ……!
虹花に『銀子に何か変なことをしたのだ』と勘違いされ、
殴られたのだ……
「あはは! ねえ、光治?
もしかして調子乗ってる?」
「は?」
「まだ、完全には、
あんたに対する疑いが晴れたわけじゃないんだけど?」
そう言って、虹花は、
拳を握って、光治の前でフルフル震わせて見せた……!?
「ひぃ!?」
光治は、短く悲鳴を上げて、青ざめる……!
「大体、道のど真ん中で『見捨てないで!?』とか言われる異常事態……
普通は、泣きつかれた男が酷いことしたんだと思うでしょ?
まあ、あの子……銀子ちゃんが『違う』っていうから
信じてあげてるけど……
それだって……もしかしたら、光治が銀子ちゃんに、
そう言うように強要しているだけかもしれないわけだし……?」
虹花は、光治に対して、疑いの眼差しで見ていた……
「ち、違うし……」
光治は、姉が怖かったが、
謂われのない疑いに、我慢しきれず反抗した……
だが、虹花は、それを冷たい眼差しで見るだけ……
「どうだか……?
男なんて皆、ケダモノみたいなもんじゃん……」
そんな姉を見て、光治はつい、呟くのだ……
「彼氏できたことのない姉ちゃんが
それを言うのか……?」
「ほほう……?」
光治は、後悔した……
姉が顔を真っ赤にして、怒った顔をしていたから……
すぐさま逃げ出そうとしたが、
既に後ろに回り込まれていた……!?
そして、あっと言う間に、
光治は床に抑えつけられてしまう……!?
「て、てめえ!? 何する気だ!?」
「いやあ、これはお仕置きが必要だなって思って……ね!」
……
さて、ややあって……
「あ、あの……!
シャワーやら何やら、色々とありがとうございました!」
銀子がシャワーを終えて、リビングにやって来た……
そこで、銀子は立ち止まって、
光治達二人の様子を見て、小首を傾げる……?
「あの……二人して、何してはるんですか?」
銀子が不思議そうに尋ねる……
何故なら……
光治は床に腹ばいになり、その上に虹花が乗っていたからだ……?
「あはは! ちょっとプロレスごっこをね……!」
「うぅ……も、もう……お婿いけない……」
……
「銀子ちゃん! ジャージ姿似合うね!
いいよ! いいよ! かわいいよ!」
虹花は、立ちあがると、
銀子の正面に立ち、彼女のことを全身舐めまわすように見てから
そう言って褒めた……!
「て、照れますやん……」
銀子は、ジャージ姿で出て来ていた……
虹花が、自分が使わなくなったジャージを
銀子に与えたのだ。
「うんうん! 銀子ちゃん可愛いね!
銀子ちゃんの服、洗濯する都合で、
とりあえずで、ジャージ渡しちゃったけど
それでも似合っているから凄いわ!
ジャージをそれだけ着こなすなんて流石!」
そう言って、虹花は、笑みを浮かべながら、銀子に抱きつき
その頭を優しく撫でる……
「や、お姉さん……?
は、恥ずかしいですやん……」
そこで光治が一言。
「せっかくシャワー浴びたのに、姉ちゃんが抱きついたら
また汚れるじゃん……」
光治が、聞こえるかどうか、ギリギリの音量で
ボソッと呟いた……
「あ、銀子ちゃん?
着ていたものは、洗濯しといたからね!」
虹花は、光治の言葉が聞こえていないかのように
笑顔で銀子に言った。
その様子から、虹花に聞こえてないことを確信した光治は、
さらに、姉にツッコミを入れる。
「何が、洗っといた、だ……偉そうに……
あんなもん、
洗濯機に入れて、洗剤入れて、スイッチ入れるだけじゃん……
しかも、姉ちゃんがやったのはスイッチだけ……
あとは全部俺が……」
「何か言った?」
「何でもないです……」
虹色が拳をふるふる震えさせるので、
光治は、黙るより他なかった……
「聞こえてんじゃん……!?」
光治の呟きを無視して、
虹花は、銀子に向かって話を続ける……
「でも、制服は、うちの洗濯機では洗えないやつだったから
ごめん、畳んで放置している……
もしも洗濯したいなら、
クリーニング出すしかないけど、どうする?」
虹花の問いに、
銀子は、手をパタパタ振って、首を左右にふった。
「あ、いえ、そこまでして頂かなくてええです……」
すると、虹花は、そんな銀子に感激して、
再び抱きついて言う。
「くぅ~! 謙虚だねえ!
よっしゃあ! そんな銀子ちゃんに
いくつか、私のお古あげちゃう!
記憶喪失で、自分のお家わからなくて困ってるでしょ?」
「在庫処分したいだけだろ……
本気で心配してるなら、警察で捜索してないか聞いてこいよ……」
「何か言った?」
「な、何でもないです……」
そうやって、二人で漫才をしていると、
銀子が何やら、おずおずと話しかけて来る……?
「あ、あの……
お姉さんには、色々として頂いて悪いんですけど……
うち、先輩にだけ伝えたいことが……
ちょっと……その……
先輩と二人だけになりたいんやけど……ええですか?」
すると、虹花は一瞬、目を丸くして驚いたような顔を見せるが……
すぐに真面目な顔をして銀子に答える。
「うん……わかった……」
それから……?
何故か、虹花は、
光治を、これでもかというぐらい憎々しげに睨みつけた……?
「な、何だよ……?」
光治が、虹花に問いかけるが、
彼女は何も答えないまま、銀子に向かって言う。
「じゃあ、私は部屋に戻ってるけど、
銀子ちゃん!?
何かあったら大声出すのよ?」
「おい……」
「そしたら、私、すぐ駆けつけるから!
こいつに、気を許しちゃダメ!
先輩に悪いからとか、流されちゃ絶対ダメだからね!?
不純異性交遊はダメよ? そういうのは大人になってから!
いいね!?」
「何言ってるんだよ、お前!?
俺を疑ってるのかよ!?」
光治が抗議の声を上げると、
虹花は、顔だけ光治に向けて、
銀子を抱きしめながら、毅然とした態度で言う……!
「当然!
こんな可愛いんだもん!
あんたが、こんな子と二人きりだなんて、
狼の前に羊を差し出すようなもの!
私が男だったら、絶対ほっとかないし、この子!」
「いや、俺は、
姉ちゃんの、その想像力の方が恐ろしいよ……」
光治がそう言っていると……?
何やら、銀子が『ひゃう!?』と素っ頓狂な声を上げる……?
「あ、あの! せ、先輩のお姉さん!?
お、お尻さわらんといて……その……下さい……!」
そう言って、銀子は、恥ずかしそうに顔を赤らめ……
虹花から視線を逸らす……
「おおっと……じゅる……
これはこれは、失礼しました……うへへ!
しかし、その反応……!
うへ! うへへ! ういやつじゃ! ういやつじゃ!」
「お前が、セクハラしてんじゃねえか……!?」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「な、何か、濃い人ですね……先輩のお姉さん……
あ、明るくて良い人だとは思いますが……」
二人きりになったリビングで、
銀子が、何やら、視線を光治から逸らし逸らししながら
そう言った……
ちなみに、光治の両親は共働きで、
母親が帰って来るまで、家には子供しかいない……
「あ、無理して姉ちゃんのこと褒めなくていいぞ?
あんなの、ただのド変態だから……
噂では、あいつ、高校でも女子にそういうことして……」
光治がそこまで言いかけたところで……?
「光治……!?」
2階の方から……姉の部屋から
光治を叱りつけるような声が聞こえた……!?
「ひぃ!?
き、聞こえてるのかよ……!?
どんだけ地獄耳なんだよ、あいつ……!?」
「おーい!?
『地獄耳』っていうのも聞こえてんだけど!?
吹奏楽部、ナメんなよ!?」
「ひぃ!?」
光治は、悲鳴をあげて
頭を抱えて縮こまってしまう……!
「ふふふ……」
「ぎ、銀子……?」
「あ……いえ、笑ってすんまへん……
やけど、お陰で少し元気出ました……
うち、ありえへんぐらい絶望してたんで……」
そう言って、銀子は微笑む……
「そ、そうか……
じゃあ、早速だが、話を聞こうか……?
俺を頼って来たようだけど、
何かあったのか……?」
光治が話を促すと、
銀子は真剣な表情になって言って来る……?
「あ、あの……先輩に伝えたかったことは、
うちの……首輪のことなんですわ……」
「あ、それ、俺、ずっと気になってたんだけど
何なんだ?」
「いや、うちにもわからんのです……
やけど……どうも……これ、ヤバイやつのようで……」
そこまで言ってから、銀子は息を呑み……
小さく息を吐いてから言い出す……
「これ、だんだん……
首輪が小さく締まって来ているようなんですわ……」
「はあ……!?」
「うち……このままだと……
たぶん締め殺されてまう……」
そう言って、銀子は、
目に涙を浮かべはじめた……
「おい、取れよ、そんな物騒なもん!?」
光治は、そう言って、銀子の首輪に手をかけた……!
その時だった……!?
「あ、先輩……!? ダメ……!?」
バチバチバチッ!
「くっ!?」
光治が小さく呻く……!
手に痺れるような痛みが走ったからだ……!?
「何だ、今の!?」
光治がそう尋ねるのを無視して、
銀子は、光治の手を心配そうに見て、
患部の様子を観察する……!
「よ、よかったあ……!
大したことあらへん……!」
そして、何でもないことがわかると、
ほっと胸を撫で下ろしてから、こんなことを言い始める……
「先輩! 不注意ですよ!?
怪我したらどないすんです!?」
銀子はそう言って、光治のことを
怒った顔で見つめて来た……?
「ご、ごめん……」
光治がそう謝ると、
銀子は、ため息を吐く……
「首輪に触ると、さっきみたいに痛みを感じるんですわ……
だから無理やりには取れないんです……
かと言うて、ハサミやナイフでは……
何や電気が流れているみたいで、痺れてまうし……」
その言葉に、光治は驚いて尋ねる……!
「じゃあ、どうすんだよ!?
段々締まって来ているんだろ!?」
すると……?
銀子は、ためらいがちに、
ぽつりぽつりと言い始める……
「と、取る方法は……
あるみたいなんですけど……?」
「ある『みたい』って?
確実じゃないのか……?」
「や、それを言うて来た人物が……
どうにも胡散臭うて……」
そう言って、銀子は大きく、ため息を吐いた……
「は? どんなやつなんだ?」
「髪の毛をピンク色に染めて、
セーラー服を着たキショいオバハンです……
うち、最初見かけた時、これヤバイやつや思うて
関わらんように思うてたんやけど……」
「ピンク髪……」
ピンク色の髪と聞いて、
光治は、とある人物を思い浮かべた……
「そうか……ピンク色の髪か……
じゃあ、信用できないな……」
光治の想像した人物……
そいつはピンク髪で、淫乱で、性格の悪そうな顔をして、
自分のことは棚にあげて人を悪く言う最低のやつだった……
女神を自称していたが、
どちらかというと、サキュバスの方がお似合いで……
いや、やめておこう……
言い出したらキリがないと思い、光治は考えるのをやめた。
「で? そのキモイおばさんは、何て?」
「ええ、そいつが言うんです……
首輪の外し方を知ってる、て……!
【ヤミリン】とかいうネットアイドルと戦うて、
勝ったら教えたる、て……!?」
「え? ヤミリン……?」
光治は、その名を聞いた瞬間、
背中がぞわぞわとし、全身に寒気を感じた……!?
作者「すんません……
アンケートの意見を重視して
なるべくイチャイチャ路線とろうとは思ってますが
どうしても都合上、イチャイチャしていられなくなって……
今回、そういうわけで、イチャラブ書けませんでした……」
せや姉「せやね」
作者「いや、銀子とイチャイチャさせてやっても良かったんだけど、
そうすると話進まないので……!
てか、説明回と位置付けたにも関わらず、
話がほとんど進んでないってどういうことなん!? っていう……
でっていう……」
作者「てか、説明回ダレる……
作者、毎回言ってるけど、状況を説明しつつ
物語を進めるのってホント難しい……!
てか、ここら辺で、明らかに筆者の力量が試されるよね!」
せや姉「せやね」
作者「作者は、ずっと、キャラネタなりきり、みたいに、
会話文のみの文章書いて来たから、
特に苦手なんだよねえ……」
作者「今、活躍している作家様は、TRPGの経験者が多いそうだけど、
多分、そういう状況説明がしっかりした人が
作家になりやすいんだろうなあ……」
作者「あ……」
せや姉「どした?」
作者「イチャイチャで思い出したけど……」
作者「作者さあ、高校生の頃、生物部で
夜の山に、野生動物を観察しに
生物部の皆と行ったのね?」
せや姉「うん」
せや姉「てか、生物部やったん?」
作者「うん。
あ、でも、作者の高校、部活動の兼任が可能で
生物部の他に、もう一つ
体育会系(?)の部活をやってたよ」
せや姉「ふーん」
作者「てかさあ、生物部って言ってもあれだよ……
単に、生き物の世話するだけの部活なんだよ……
学校で飼育されている生き物のね……
そのためだけに、夏休み中の糞あちぃ中、
生き物の世話するためだけの登校したりしたし……」
作者「ま、いいや、それ話すと長くなるし……」
作者「で、野生動物を見に山に行った、その帰り……
方向が一緒だった人と二人で電車に乗ってたんだけど
その電車で、その日見た野生動物の話で
ちょっと盛り上がっていたらさあ……!」
作者「サラリーマン風のおっさんに
すっごい音で舌打ちされて睨まれた……」
せや姉「うわあ」
作者「あれは、怖かったなあ……」
作者「いや、友達やっちゅうねん……!
異性だけど!
友達っていうか、ただの部活の仲間っていうか……」
せや姉「きっと恋人同士でイチャイチャしているように見えたんやな……」
作者「せやね」
せや姉「おい、台詞横取りすな……」
作者「で、あの時は、このくらいのことでイチイチうっせーなあ……
なんて思ってたけど……
最近になって……ずっと独身で……恋人もいたためしがなくて……
あの時のおっさんの気持ち、わかるような気がする……」
せや姉「おい、ダメなやつやん、それ」
作者「いや、流石に舌打ちはしないけどね!w
でも、コンビニのイートインに、
マックのポテトとか持ち込んでイチャイチャしている中高生見るとか見ると、
ちょっと……何か……何か、ねえ……」
せや姉「せやね」
作者「てか……恋人欲しい……作者……このまま……
子供もつくれないで滅びていくんやろか……
たぶん、そうなるんだろうなあ……」
せや姉「おい、やめろ……」




