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 52話: 何で、こんなにも、好きになってしまったの?

 帰宅後、魅夜は机に向かうと、

 引き出しの鍵を開けた……


 魅夜は、昔から大事なものを

 この鍵付きの引き出しの中にしまって、大事にしているのだ……


 玩具の指輪やネックレス、洋服のボタン……

 何に使うかわからない機械の部品……

 それらの中を魅夜は探していく……


「あ、あった……」


 そう言って、魅夜は、

 一通の手紙を取り出した……



《こんにちは はじめて お手紙します》



 手紙は、漢字のほとんどない、平仮名ばかりの文章で、

 明らかに子供が書いたと思われる、たどたどしい文字で

 書かれていた……


 手紙はもう、何度も読んだせいでボロボロで、

 知らない人が見たら、ゴミにしか見えないかも知れない……


 だが、それは……

 魅夜にとって大事な手紙だった……


「はあ……」


 魅夜は、その最初の一文を読んだところで、

 大きなため息をして……

 その手紙を胸に抱きしめ、涙を流した……


 そして、また手紙を読み始めると……

 一通り読んでから、最後の一文に目がいく……



《……月かげさん が 一日でも 早く

 元気になるように いのってます。

 春になったら あえるといいね。


            日吉こうじ より》



 そこまで読んで魅夜は、涙を流し

 笑みを浮かべた……


「コウくん……」


 その手紙は、魅夜の命を繋ぎとめたと言っても

 過言ではない……


「コウくん……?

 コウくんは、あんな目にあったんだもの……

 忘れてしまって当然かもしれないけど……

 私、嬉しかった……!

 だって私、この手紙のお陰で助かったんだよ?」


 この手紙で励まされたから……

 勇気を出して……手術を受けて……


 それで、今ではこんなに元気になって……!


「コウくんのこと、いい人だと思った……

 でも……

 でも、それだけだった……

 今みたいな恋愛感情なんて……なかったんだ……

 だって、あの時の私は、子供だったんだもの……

 恋なんてするわけない……

 だから……会うこともなかったんだ……

 あの子との約束を守って……」



『嘘つき女! しねよ!』



 魅夜の頭の中に、今朝の宮子の声が響いた……


 その途端、魅夜は頭を抱えて

 ブルブルと身体を震わせた……


「違う……違うの……宮子……!」


 魅夜は、心に思う……

 まさか、宮子と会うとは思わなかった……


 そのせいで、

 心のどこかで、忘れかけていた、あの約束を

 思い出されてしまった……


 いや……?

 あの約束を忘れていたからこそ、

 魅夜は、光治の学校に転校するなんてことが

 出来たのかも知れない……?


「でも……宮子……

 私……今まで約束……破ってなんか……」



『あんたは人殺しだ!? 二度と近付くんじゃねえ……!』



「ひぃ!?」


 頭の中に、幼い頃の宮子の声が思い出され、

 魅夜は思わず、小さく悲鳴をあげる……


「ちが……違う……私はそんなつもりじゃ……!?」



『わかってんだろ!? 自分のやったこと!?

 コウちゃんがこうなったのは、あんたのせいだ……!

 もう二度と近付くんじゃねえ……!』



 あの病院で言われた、宮子の言葉が

 魅夜の中で、大きく響き……

 彼女は思わず、耳を塞ぎたくなる……!


「コウくん……私、どうしたらいいの?

 君に近付いちゃいけないの……?」


 いっそ、光治からまた離れてしまえばいいのだろうか……?

 そうすれば、楽になれるかもしれない……?


 そんなことをふと、思い浮かべるが……


「嫌だ……」


 魅夜は、頭を左右にブンブンとふる……


「嫌だ……嫌だ……嫌だ!

 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 コウくんと離れたくない……!」


 魅夜は、頭の中から昔の記憶を追い出すように……

 宮子との嫌な思い出を忘れてしまうように……!

 懸命に頭をふった……!


「はあ……! はあ……!」


 そして、乱れた息を徐々に整えながら、

 魅夜は、虚空に向かって言う……


「ごめん……!

 でも、もう無理なんだよ……宮子……!

 もう……その約束は守れない……!

 だって、私の心に火がついちゃったから……!」


 そして、魅夜は、光治のことを思い浮かべる……

 優しい彼の笑顔を……


 彼のことを想うと、魅夜の心は、

 ぽかぽかと温かくなって来て……

 そして、会えないでいることに、胸が切なくなる……


「ねえ、コウくん……?

 何でダメなのに……

 君のことを、こんなにも、好きになってしまったの……?

 君に会うことすら、許されていなかったのに……」


 魅夜はそう呟いて、机に突っ伏して

 泣いた……


「好き……好きだよ……コウくん……!

 他の誰よりも……!」


 魅夜は、今にでも光治に会いたいと、強く想った……!


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


 さて、光治の自宅前……


 光治は、少女に泣きつかれていた……


「先輩! 助けて!

 うち、殺されそうなんや!?」


 それは銀髪の少女……

 光治がノルンと間違えた例の少女だった……


 だが、穏やかではない彼女の言葉に、

 光治は、眉をひそめる……


「うち、もう……

 先輩だけしか頼る人がおらんのや!?」


「落ち着けって……!?」


 光治が、そう言うと、

 銀髪の少女は、見捨てられた子犬のように

 しゅんとなって、うつむいてしまう……


「せ、先輩……!?

 み、見捨てんといて……! うち……もう……」


 絶望して今にも泣きそうな銀髪の少女に、

 光治は、優しく肩に手を、ぽんと置いた……


「先輩……?」


「誰が見捨てるって言った?

 俺は、落ち着けって言ったんだ。

 何があったか、ゆっくり話すんだ……?」


 光治が優しくそう声をかけると、

 銀髪の少女は、安堵したようで、ほっとため息を吐いた。


「せやけど……うち、どこから話したらええか……?」


「とりあえず、お前の名前は?

 もしかしたら、ノルンじゃないのか?」


「いや……う、うち……銀子……」


 銀髪の少女は、あの時、魅夜につけられた名前を

 光治に告げた……


「銀子っていうのか?」


「う、うん……

 魅夜先輩が、うちのことそう呼んで……」


「魅夜が……?」


「うん、うち……記憶喪失で……

 自分の名前もわからなくて……」


 銀子のその言葉を聞いて、光治は驚いた……!


「は? 記憶喪失……?

 な、何か、お前……?

 大分面倒なことになってんだな……?」


 光治は、眉をひそめて、そう言うと……


「み、見捨てんといて!?」


 銀子は、慌てて光治にしがみついて来た……!


「み、見捨てないって……!?

 あ、いや!?

 ちょっと待て!?」


 光治は、そう言ってから、はっとする!?


「な、何や……!?」


 その様子に、銀子が不安そうに尋ねた……


「お、お前……!?

 記憶喪失なら、家に帰ってないのか!?」


「そ、そうやけど……?」


「飯とかどうしてんだ!?」


「い、いや、何やしらんけど……

 うち、お腹空かないんや……」


「はあ!?」


 光治は、一瞬、呆気にとられるが、

 すぐに頭を左右にふると、こんなことを言い出す……?


「い、いや!? それよりも!?

 フ、フロとか入ってないのか、もしかして!?」


「なっ!?」


「やっぱりそうなのか!?

 ど、どうりで何か、変なニオイすると思った!?

 い、いや、これが『いい匂い』って言う奴もいるかも知れんが、

 すまん! 俺には無理だ……!

 ちょ、ちょっと離れてくれるか!?」


 そう言って、光治は、自分にしがみ付いている銀子を

 引き離そうとした……!


「ちょ……!? 見捨てないで、言うてるやろ!?

 先輩! うちのこと見捨てないで!?」


「ええい!? とにかく離れろ!」


 そう言って、光治が銀子の顔に手を当てた……


 その時だった……!



「光治!?」



 誰かが、光治の名前を大きな声で呼んだ……?


 誰かと思って、光治がふり向くと……?


「光治……!? あんたねえ……!?」


「あ、姉ちゃん……?」


 光治の姉が、そこにいて……

 彼女は、睨みつけるような目つきで、光治を見ていた……?



 パシンッ!



 辺りに乾いた音がして……


 光治の頬に、痛みが走った……!?


 平手打ちだ……!?

 光治の姉が、光治に平手打ちをして来たのだ……!?


 でも、何故……?


「光治……!? あんた、その子に何したの!?

 『見捨てないで』とか言ってたけど、

 何か、酷いことしたんでしょ!?

 そうなのね!?」


 光治の姉は、そう言って、

 光治の襟首に掴みかかって来る……!?


「ちょ……!? 待て……!?

 暴力反対!? は、話せばわかる!」


「問答無用……!」


 光治の姉はそう言って、

 光治に鉄拳制裁を加え始めるのだった……


「誤解だあああ……!? 姉ちゃ~ん!?」

作者「何かさあ……」

せや姉「うん」

作者「実は、今回、前半の方、

   本当は毬愛視点で話を展開する予定だったんだ……」

せや姉「そやの? 魅夜ちゃんの話やったけど?」

作者「うん。

   ちょっと最近、毬愛視点に、話傾き過ぎかなあ……と思い、

   急きょ、今まで温めて来た魅夜の話出すことにした」

せや姉「へえ……」

作者「作者、どうも毬愛の話だと

   筆が進むようで、長く書いてしまうんだよね……」

作者「やっぱ、毬愛の性格って、作者にそっくりだからかも!

   な~んちゃって!w てへ!w」

せや姉「……」

作者「おい、黙ってんじゃねえよ……!?

   ツッコミ入れろよおお!?」



作者「そういや、中学の頃は、

   昼休みは、図書室によく入り浸ってたんだけど……」

せや姉「似合わんな」

作者「うっさいわ!w」

作者「まあ、漫画とかよく読んでたから、

   手塚治虫の火の鳥とか……」

せや姉「なら、納得や」

作者「うっさいわ!w」

作者「それでも、ちゃんと文字だけの本も読んだりしたんだけど

   その中でさあ……

   『PTAをぶっとばせ!』ってタイトルの本が

   あって、それが面白かった!w」

せや姉「物騒なタイトルやな……」

作者「そうなんだけど、実は作者、

   その『PTAをぶっとばせ!』は読んだことない!w」

せや姉「は?」

作者「その本は、短編集だったんよ。

   で、その短編のひとつが『PTAをぶっとばせ!』だったわけ。

   だが、それが本の後ろの方のページにあってさあ……

   そこまで読む前に受験が忙しくなって、読んでる時間なくなって……

   そのまま卒業しちゃったんだよなあ……」

せや姉「ふーん」

作者「あの本をもう一度読んでみたくて、

   大人になった今、色んな街の図書館に行く度に

   探してみるんだけど、

   全然見つからないんだよねえ……」

せや姉「まあ、タイトル物騒やからな……」

作者「あれの『ビルの階段を登り続ける男』と『ガン人間』の話が

   怖かったけど、面白かった……!w

   作者の、今の作品にも多大な影響を与えていたりする!w

   そんなわけで、もう一度読みたいんだけど……

   作者名すら覚えてないからねえ……」

作者「そして『PTAをぶっとばせ!』が

   どういう話だったのか、全くわからん……」

作者「なんか、星新一みたいな、近代SFっぽい話が多かったんだけど

   星新一じゃないっぽいんだよなあ……

   ああああ……読みたいのじゃあ……」

せや姉「あきらめろん」

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