51話: コウくん分をチャージ!
「なあ、そういや、明日は土曜日だけど、
二人はどうするんだ?」
三人で下校の途中、光治は、
他の二人に向かって、そう言った。
光治達の学校は、土日が休日だ。
光治は、それで、二人が土曜日何をしているのか
少し気になって尋ねてみたのだ。
すると、魅夜は、口に手をあてながら
にやにやした視線を光治に向けながら、こう応える。
「なあに? それ、誘ってくれてるの?
コウくんのお家に、遊びに行っていいの?」
光治は、そう言われて、一瞬、言葉につまった……
「いや、うちは……
姉ちゃんがいるから……その……」
光治は、そう言いながら、
自分の姉のことを思い出した……
……
光治の苦手な姉……
目の上のたんこぶ、というか……
何かにつけて、衝突し、姉には嫌な思いを沢山して来た……
光治のやることがイチイチ気に入らないらしく、
家で何かしていると、横から口出しして来て
イチャモンをつけられる……
そんな姉の前に、魅夜や毬愛なんて連れて来たら
絶対何か、失礼なことをするに違いない……?
そう、光治は思うのだ……
……
急に魅夜が尋ねて来る……
「お姉さん、紹介してくれるの?」
「え? 紹介って、魅夜……?
あんなのに、お前を会わせたくは……」
光治がそこまで言いかけると……?
毬愛が魅夜のそでを突いて
何かの合図をする……?
「毬愛……? 何……?」
魅夜が、わけがわからず、そう尋ねると……
毬愛は、額に手を当てて、大きなため息を吐いた……?
「魅夜様……? お忘れですか!?」
「へ? 何だっけ?」
「魅夜様!?」
毬愛が、怒った表情でそう言うと、
魅夜は、慌てて毬愛に言う……!
「じょ、冗談だって……! 毬愛!
お、怒んないでよ……!
というか、自分で言い出したことなのに、
忘れるわけないでしょ?」
「まったくもう……! ですわ!」
毬愛は、そう言って、
ほっぺをぷくぅっと膨らませて、怒っていることをアピールした。
魅夜は、そんな毬愛に、手を合わせて
許して欲しいと謝罪をし……それから……
「ごめん、コウくん!
土曜日は、ちょっと野暮用があるの!
折角、お家に誘ってくれているところ、ごめんね!」
「い、いや、家に誘ってないけどな……?
てか、野暮用って何だよ?」
光治がそう言うと、
魅夜は、また口に手を当てて笑みを浮かべる。
「ふふふ、秘密……!」
そう言ってから魅夜は、
光治の腕を寄せると、それに抱きついた……?
「え? み、魅夜!?」
「ふふふ、土曜日会えないから、
コウくん分をチャージ!」
「チャ、チャージって……お前……?」
光治は、そう言いながらも
腕に魅夜の柔らかな感触を感じて、
顔を赤らめてしまう……
「魅夜様!?
また、そうやって!
コウ様に、いやらしいことして……!?
……わ、わたくしも、致しますわ!」
「あ、こら!?」
そう言って、毬愛も
もう片方の、空いた腕に抱きついて来た……!?
「あの、お前ら!?
あ、歩きづらいんだけど!?」
「いいじゃん?
それより、コウくん、顔赤いよお?」
「ですわ!」
「お、おちょくるなよ!?」
美少女二人に、両手に抱きつかれて
光治は、嬉しい気分であったが
道行く人達の視線が、何だか痛く感じてしまった……
「あのさあ……人目もあるし……
そろそろ離れろよ、お前ら……?」
光治は、目を泳がせながらそう言ったが、
魅夜も、毬愛も、腕を放そうとしなかった……
「ごめん、コウくん……
もう少しこうさせて……?
もうちょっとだけ、充電させて……?」
「コウ様の腕……
何だか、温かくて落ち着きますわ……
幸せな気持ちになりますの……」
「ったく……」
光治は、そう言って、悪態をついたが……
二人の気持ちが、わかる気がした……
明日、光治は、彼女らに会えない……
明日の……土曜日の、たった1日の間とはいえ、
それは長い時間に思えて来て……
そう思うと、何だか寂しい気持ちになった……
……
……
「じゃあ、私達はこれで!」
「ああ……!」
魅夜と毬愛は、分かれ道まで来ると、
手をふりながら、そう言った。
「日曜日は、駅の改札で待ち合わせだからね!」
「コウ様、またお会いしましょうね……!」
二人に見送られるように、光治は歩きだすと、
帰宅の途についたのだった……
……
一人になった光治は、今日あった出来事を思い出していた……
幽輝に相談を受けたこと……
魅夜と毬愛が急に競争し始めたこと……
由良に質問攻めにあったこと……
そして……
『一体何人たらし込んだら気が済むの!?』
由良のあの発言が、光治の心の中で響いていた……
他人から見たら、今の光治はそう見えるのだろうか……?
光治は、そう心に思う……
「俺は、いつだって……
魅夜に一途じゃねえか……」
しかし、光治は、そう言ってみたものの……
少し後ろめたい気持ちがある……
最近は、毬愛にドキッとすることが多くなったからだ……
毬愛の見せる、あどけない姿……
かわいらしい仕草……
元が目を見張るほどの美少女なのもあって、
そういうことの一つ一つに、ドキッとしてしまい……
気付けば、彼女に腕に抱きつかれるのも
まんざらでもないと思う自分がいて……
そこまで考えて……光治は、はっとして、
頭をぶんぶんと左右にふる……!
「バカか、俺は……!?
何、浮ついたこと考えているんだ……!?
俺は何のためにタイムリープして来た!?
いいか、俺!?
俺は、魅夜ともう一度やり直して、
あいつとの、この不幸な運命を変えるために……!」
そんなことを、うつむいて……
叫んでいた……
その時だった……?
ふと、何となく、光治が顔を上げると……?
「あ……」
自宅の前に、誰か、少女が立っていた……?
少女の背丈は、光治の胸のあたり程……
長い彼女の髪は、逆光でキラキラと輝いて見えた……
「え……お前……?」
光治の存在に気づいたのだろうか?
彼女は、くるりとふり返り……?
その目には、溢れんばかりの涙を浮かべていた……!?
「せ、先輩……! 先輩……!
会いたかった……!」
「おい、どうしたんだ……お前!?」
光治がそう声をかけると、
彼女は、ダッと駆け出して来て……!
「せ、先輩……! 助けて!?
このままだと……殺される……!?」
光治の胸に抱きついて、泣きながら、
懸命に訴えかけて来た……!?
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
帰宅した毬愛は、
自室で、紅茶を飲みながら、優雅にくつろいでいた……
すると、ノックがして……
「どうぞ……」
毬愛が入るように促すと、
メイドが、バインダーを片手に部屋に入って来た。
メイドは、毬愛に一礼すると、
用件を言い始める……
「お嬢様……
今朝、お嬢様から依頼されておりました
【縁宮子について】の調査が完了致しました……」
「そうですか……」
毬愛は、そう言うと、
紅茶のカップを置いて、メイドの方に向き直った……
「聞かせていただいても、よろしいですか……?」
「はい。
結論から言いますと……
縁宮子……彼女は……
月影魅夜の弱点となり得る存在です……」
作者「ああ、恋人ほしいよお……」
せや姉「開口一番言う台詞かい?」
作者「このところ、恋愛シチュエーションをあれこれ真剣に考えているせいか
恋愛したくてたまらなくなって来ました……」
せや姉「なら、努力せいや」
作者「いや、作者、最近改めて自覚したんだけど
異性が怖い……」
作者「正確にいうと、異性の視線が怖くて
な、何か目を逸らしてしまう……」
せや姉「何、十代の若い子みたいなこと言うてんの?」
作者「そして、この異性の視線が怖いのを自覚して思いました……
ああ、この作者……結婚無理やなあ……って……
てか、結婚どころか恋愛自体が……もう……無理……」
せや姉「おい!? 恋愛小説書いとる作者!? おい!?」
作者「あ、でも、仕事とかでは普通に異性にも声かけられるから
そこまで深刻ではないです」
作者「でも、恋愛は無理」
せや姉「おいい!?」
作者「駅前でよく、ビラとかティッシュとか配ってんじゃん?」
せや姉「うん」
作者「前に、あの仕事やっている人に
配る時のコツを聞いたことがあるんだけど……」
せや姉「うん」
作者「配りたい相手の進路方向を塞いで
目を見つめながら配るのがコツらしい」
せや姉「ふーん」
作者「進路方向は説明しないでもわかるだろうから省くけど
目はねえ……結構見つめてあげると、
貰わないのは悪いかなあ……と思うらしく、
結構もらってくれるらしい」
せや姉「へえ、そんなもんかい」
作者「作者は、それを知ってから、逆に
ビラ配りの人とは目を合わせないようにしています」
せや姉「へえ、ビラ配られないようになったんか?」
作者「いや、全然?」
せや姉「おい」




