44話: 魅夜 と 毬愛(4)
「なんか……ごめん……」
魅夜は、毬愛の顔を見ずに、そう言って謝った……
「いいえ、こちらこそ、ごめんなさい……
魅夜様のことを裏切るようなことをしてしまいました……」
今、彼女らは、背中合わせになって、座って、
お互いの顔を見ずに、会話していた……
既に、魅夜は落ち着きを取り戻し、
毬愛の涙も止まっていた……
二人はお互いに、今日あった出来事……
つまりは、毬愛のパンツ盗難事件のことや
魅夜の方で、その犯人と思しき人物に会ったこと、
そして今日の光治と毬愛のデートの様子など、
情報を交換し合った……
もっとも、パンツ泥棒が誰なのかについては、
魅夜は、頑なに犯人を明かすのを拒んだが……
魅夜は、銀子のことを庇ったのだ……
彼女のことを教えるのは、同じ光治に恋する者として
魅夜にはためらわれたのだ……
そうやって語り合い、お互い理解を深めた上で
魅夜と毬愛は、謝罪し合った……
「あのさ……
こんなこと言うのも、反省してないようで何だけど……
ここ最近の私、感情的で……何か、変なの……
自分が自分でないみたいで……」
魅夜は、そう言って、ため息を吐いた……
小刀を出して、毬愛に襲いかかろうとした自分をふり返り、
思わず、自己嫌悪に襲われる……
何であそこまでしてしまったのか……?
いや、光治が好き好きすぎて、そうなったのだが、
そもそも、何でそこまで光治のことが好きになったのか……?
自分で自分がよくわからなくなっていた……
「そうですか……」
毬愛は、そんな魅夜の言葉を冷静に受け止め、
淡々とこたえた。
(恋は人を変える、と言いますしね……)
まあ、魅夜の恋心がヒートアップしているのは、
光治がノルンに時間を戻してもらったせいで
魅夜の魂に、光治への想いが刻み込まれてしまったせいなのだが……
そんなことは、光治ですら知らないし、
魅夜に至っては、セックスすると世界が崩壊することすら
知らないのだ……
魅夜は、
特に非難するわけでもなく、淡々と受け答えする毬愛に、
毬愛の方に少しふり向いて、感心して言う。
「毬愛ってホント、いい子だよねぇ……
私が、あんなことした後なのに……
平然と私と話してくれるんだもの……
普通怖がるとか、警戒するようなものなのに……
いやあ……私にはちょっと無理だわぁ……」
すると、毬愛の方も、ちらりと魅夜の方を向いて
『何言ってますの?』という顔をして、こう応える。
「いいえ、魅夜様の方こそ、すごいですわ……
切り替えが早いというか……
嫌なことを引きずらない姿勢、見習いたいと思います……」
そんな毬愛に、魅夜は苦笑する……
「フッ……見習いたいだとか……
そんなこと言われたの、初めて……」
「ふふ、わたくしの方も、魅夜様みたいな楽しい方
今までお会いしたことありませんわ……」
そう言ってから、二人とも、向き直り、
それぞれに、ため息を吐いた。
「あと、あのさあ……毬愛……?
あんなことしておいて、虫がいいと思うだろうけど……
その……」
「何でしょうか……?」
「これからも、私と友達でいてくれると……
その……助かる……」
すると、毬愛はビックリして、
魅夜の方を向いて聞き直す。
「いいのですか? このようなわたくしと……?
お友達に……?
貴女を何度も裏切ってしまいましたのに……?」
そう言うと、魅夜は少し苦笑して……
それから、真剣な表情になって毬愛に言う。
「うん……
というか、毬愛には色々とお世話になっているし……
考えてみれば、私、取り繕わないで本心を曝け出した人って
毬愛が初めてかもしれない……?
何か、それなのに、
ここで関係が拗れるのって、何か勿体ない気がする……」
魅夜がそう言うと、毬愛はゆっくりと首をふる……
「わたくしの方こそ……
魅夜様のように、対等な立場で話し合った方
初めてですよ……」
毬愛の側には、毬愛の言うことに何も逆らわない従者と
彼女が何を言おうと子供扱いする大人達しかいなかった……
前の学校では、クラスで浮いた存在になってて
クラスメイトに話しかけたことすらなかったし……
だから、本当に友達と言える存在が、魅夜が始めてだったのだ……
「はは、そういえば、前にも同じようなこと
言ってたね……!」
「ふふ、そうですわね……」
魅夜と毬愛は、笑いあった……
彼女たちは、心の内はどうであれ、
表面上は関係が修復したのだ……
そして……?
「なあ……仲良くなったところすまないんだが……」
光治の声が、
魅夜と毬愛の……足元から聞こえて来た……?
「なぁに? スケコマシさん?」
魅夜が、じと~っとした目で光治をちらりと見て、
つーんとして尋ねた。
「す、すけ……!?
いや、そう言われても仕方ないかもしれんけど……!
いい加減、どいてくれないか!?
そろそろこの体勢辛いんだけど!?」
光治は、土下座の体勢を維持したまま、
その背中に、魅夜と毬愛の二人を乗せていた……
それはいわゆる、罰なのだそうだ……
罪状は、浮気というか、
仲良し三人組の絆に亀裂を入れたこと……
最初、魅夜が言い出して、
土下座していた光治に座り始めたのだが、
毬愛も後から『わたくしもよろしいですか?』と許可をとってから、
魅夜と背中合わせで、座り始めた……
そして、これまでの会話中、
ずっと光治はこの罰に耐え続けていたのだが……
「もう許してくれよぉ……!
そろそろ限界! ギブアップ!」
光治が、懇願して叫んだ。
だが、魅夜は、じと~っとした目で
頬杖をついて、こう言う……?
「私、思ったんだけど……
冷静に考えると、今回の件、
コウくんが一番悪いと思うの……」
「だから、ごめんなさいってば!」
光治が大きな声でそう言うと、
魅夜は、しかめっ面になって、光治を見ずに怒り出す!
「本当にわかってる!?
コウくんが黙っていたから
こんなことになったんだからね!?
毬愛は、いい子だから、コウくんが頼んだら
断れないだろうし!」
(何だよ、それ……!?)
光治は、魅夜の、
さっきまでと打って変わっての
毬愛リスペクトに、目を丸くする……!?
さっきまで、小刀を出して殺そうとしていたのは、
どこのどいつだ!?
「ま、毬愛! 助けてくれ!
魅夜を説得してくれ!」
光治は、毬愛に助けを求めた!
だが、その行動に、
毬愛は少し、ムッとした……
光治が、都合の良い時だけ
毬愛を頼って来ているのが
何だか都合の良い女に思われているようで、嫌だったのだ。
そもそもパンツの件だって、『お前だけが頼りだ』なんて言われて
ドキッとして引き受けてしまったが、
そのせいで、魅夜への裏切りに対する葛藤で
どれだけ苦しい思いをしたことか……?
何度も何度もその方法が通じるほど、自分は軽い女ではないと
毬愛は反発した……!
「光治様は、少しお困りになられたらよろしいですわ……」
そう言って、光治をバッサリと切り捨てた。
「ま、毬愛……!?」
光治は驚いて、声が上げた!
そして、その様子に
魅夜が、口に手をあてて、笑みを浮かべる。
「あら、毬愛さん、言いますわね?」
「光治様は、女の子の気持ちを考え無さ過ぎですから……」
毬愛は、そう言って、ぷいっと横を向いた。
「ま、毬愛にそう言われると、
キツいものがあるんだが!?」
「ん? それって、
私に言われても大丈夫ってこと?」
「え? い、いや……その……」
魅夜のその問いに、光治が何か答えようとしたところで……
「イデデ!? おい、誰だつねったの!?
魅夜か!?」
光治が突然、背中に感じた痛みに声を上げた!
「ひどい、私を一番に疑うのね?
悲しいわ……しくしくしく」
そう言って、魅夜は、あからさまな嘘泣きをした……
「くそお!?
どうでもいいけど、お前らもう降りろ!?
女子中学生といえど、2人も揃うと流石に重い……イデデ!?
今度は2箇所から同時に……!?」
「ふふふ……」
「あはは!」
光治の反応に二人から笑みがこぼれた……!
「笑いごとじゃない!? 二人とも!?
いくら罰とは言え、やり過ぎだろ!?
いい加減許してくれー!」
魅夜と毬愛の笑い声に、
光治は、抗議の声をあげた……!
……
毬愛は、三人でこんな和やかな雰囲気で、やりとりするのも
良いものだなと考えていた……
毬愛は、ふと思う……
(何故、わたくしは、あの時……
後ずさりしたのでしょう……?)
あの時……
そう、魅夜に小刀を向けられた時のことだ……
あのまま、魅夜に刺されていたら、
毬愛は、しんでいたかもしれない……?
それは、自殺志願者の毬愛の望むところだったのに……
だが、現実は……?
毬愛は、後ずさりしてしまった……
心の中で『しにたくない』と感じていた……
生にしがみついてしまったのだ……?
あんなに自殺したがっていたのに……?
どうして……?
毬愛は、変な話、自殺のために様々な努力をし、
どんなことだって平気でやって来た……!
飛び降り自殺するために何ヵ月も準備に時間をかけたり、
世界崩壊の準備として、
自分でも気持ち悪いと思いつつ、魅夜と女同士のキスをした……
魅夜の身体をまさぐるなんて、レズまがいのことまでして……
そこまでやれたのに……
今、同じようなことをしろと言われても
毬愛は、とてもできないと感じていた……
それどころか、陣風家のピストルを自分に向けることさえ、
怖くてできそうにない……
陣風の者をターゲットにしてもオートロックがかかる
彼女にとっては安全な拳銃だとわかっていても……
そして、毬愛は、二人を見る……
(この方達が、わたくしを変えて下さったのでしょうか……?)
光治を見ていると、心がぽかぽかして来る……
魅夜と光治と、三人でいると、とても楽しい気分になる……
そうやって、二人と接していると、
生きている実感というか……
世界にやっと、受け入れてもらったような気がして、
毬愛は、もはや、自殺したい気持ちなどなくなって……
(でも……)
毬愛は既に、魅夜に約束してしまった……
光治とくっつけることを約束してしまった……
でも、それは世界が崩壊してしまうことであり、
この素晴らしい三人の関係を終わらせてしまうことでもあった……
それに何よりも……
今の毬愛には、魅夜に、光治がとられることが
どうも我慢ができないようだ……?
それを考えると、毬愛の中に
激しい感情が湧きあがって来そうになる……
もしかしたら、それこそ……
今回、魅夜が暴走したようなことを
毬愛もするかもしれない……?
(ホント、何なのでしょうね……この気持ちは……?)
毬愛は、そんなことを考えて、
二人に気付かれないよう、小さくため息を吐いた……
その感情が何なのか、彼女にはわからない……
ただ、ひとつ、確かに言えることがひとつ……
これは、恋心ではないということだ……
(だって、こんな変態様……白馬の王子様なわけないもん……)
毬愛は、そんなことを考え、
自分の下に敷いている光治の背中を見た……
彼女は、頑なに、それが恋であることを
認めようとしなかった……
……
……
さて、二人に座られ続けている光治であったが、
何も悪いことばかりではない……
(まあ、二人のお尻が柔らかくて気持ちいいのと、
このローアングルのお陰で
さっきから映画館に来るお姉さん達のパンツが見えるから
これはこれで役得なんだが……!
フッ、二人ともまだまだ子供だから気付くまい!?)
光治は、二人に乗っかられながらも、
心のどこかで、今の状況に歓喜していたのだ。
そんな光治の視線の先をじっと追う目があった……
「コウくん? さっきの女の人、何色だった?」
「ん? ピンク系だったが…………あ、しまっ!?」
魅夜は立ち上がると、光治を指差した!
「毬愛!? やっぱり、この人、
路地に来る人達のパンツ見ている!
さっきから視線が怪しいと思ってたけど!?」
「まあ、それは大変! お巡り様を呼ばなくては!?」
毬愛は、そう言ってスマホを素早く操作した!
「やめてくれー!?」
その日、彼らには色々とあったが、
終わってみれば、いつも通りの平和な日常であった……
作者「オレ、オマエ、マルカジリ……!」
せや姉「どした!?」
作者「作者、風邪、ひどくなた、頭痛、痛い」
せや姉「ついに日本語がカタコトになった!?
しかも、頭痛が痛いで、【痛】が被ってるで!?」
作者「ツッコミ役も大変だねぇ……」
せや姉「やかましいわ……!」
作者「いやあ、それにしても風邪が辛い……」
せや姉「せやね」
作者「頭がぼぉ~っとして、まともに物が考えられない……」
せや姉「いつも通りやん」
作者「おい……」
作者「そういうこと言ってるとなあ!?
風邪うつすぞお!?
風邪は天下の回りものっていうしな!?」
せや姉「それ言うなら、金は天下の回りものや!?
あと口近づけて来るな!? キッショ!?」
作者「ほらほらほら~! 美少女JK(17)のキスだぞぉ~!?
風邪うつしちゃうぞぉ~!」
せや姉「やめーや!? アホ!?」
作者「あ、ダメだ……」
せや姉「ん?」
作者「本格的に頭痛でおかしくなって来た……
何かぶっ倒れそうなので、ぶっ倒れる前に寝ます……
最近、こんなんばっかでごめんなさい……」
せや姉「せやね」




