39話: 乙女たちの攻防≪まんざい≫
魅夜は、全速力で駆けだした……!
「てやあああぁぁぁ……!?」
銀髪の少女は、それを見て「やれやれ……」といった感じの表情で、
右手の人差し指を魅夜に向け、親指を天に立て、
つまりは、手でピストルの形をつくって……
その銃口を魅夜に向けた……?
(はっ!? 何それ!?)
魅夜は、それを鼻で笑って、
拳を振り上げた……!
そして思いっきり、パンチを銀髪の少女に向けて繰り出して……!
その時だった……!?
「ばーんぐ!」
銀髪の少女の声が、そんな言葉を言ったかと思うと……?
次の瞬間……!?
魅夜の振り上げた拳は……!?
思いっきり、空ぶっていた……!?
「え……!?」
一瞬、魅夜は何が起こったのか、わからなかった……!?
というか、目の前に銀髪の少女の姿はない……!?
魅夜のパンチが銀髪の少女に当たる瞬間、
少女の姿が消えたのだ……!?
そして……?
「やから、さっき言うたですやん?」
「なっ!?」
突然、背後から声がした……!?
銀髪の少女の声だ……!?
ふり向かなくても、魅夜には気配でわかった……!
彼女の背後に、銀髪の少女が立っている!?
「うち、時間が止められる、て言うたでしょ……?」
「くっ!?」
魅夜は、後ろを振り向かず走り出すと、
銀髪の少女から距離をとった……!
そして、向きなおし、銀髪の少女に対峙すると……
「い、今、何したの!?」
彼女を指差して、そう言い放った!
すると、銀髪の少女は「やれやれ……」といった感じで、
肩をすくめて、説明し始める。
「やから、さっきから何べんも言うてるでしょ?
簡単なことですわ……
魅夜先輩の時間を止めただけです……」
「時を止める能力……そんな、まさか!?」
魅夜の常識では、考えられない能力だった……!
現実的な考え方をする魅夜にとって
オカルトチックで非常識な出来事は、
信じるに値しないものだったのだ……
それが根底から覆されるような事態……!
時間を停止させる能力……!?
科学的な考え方をする魅夜にとって、
銀髪の子は、常識の通じない不気味な相手に見えた……
銀髪の少女は、静かに話を続ける……
「自転車を止めたのも、この能力やし……
魅夜先輩を止めたのも、この能力や……
さっきから言うとるのに、
魅夜先輩って、案外疑り深いんやなあ……
まあ、うちも、何でこない能力持っとるのか知らへんけど……」
「ふむ……」
だが、非常識なことを疑ってかかる魅夜であったが、
何も別に頭が固いわけではない……
(本当だとしたら、何てヤバイ能力なの……!?)
目の当たりにしてしまった非常識なことは、
信じるより他ないと考え、事実を受け止め!
その上で、次に備えて考え始めていた……!
魅夜は、即座に頭をフル回転させ、
これまでの出来事を思い出して、状況を分析する……!
(時間停止能力の発動は……きっと、
さっき、右手をピストルの形にした時ね……?)
恐らくは、
手のピストルの銃口が向けられた相手の
その時間を止めてしまうに違いない……?
対策としては、彼女にピストルの構えをとらせないこと……
もしくは、彼女が動く前に、動きを制してしまうこと……
だが、いずれにせよ……
時間を止めてしまう人間を相手には
限りなく不可能に近い対策だった……
超スピードでもない限り……!
(これしか……ないか……?)
魅夜は、スカートのポケットに手を突っ込むと、
例の黒光りする紐を、ポケットの中で握った……
(これを使えば……でも……!)
魅夜は躊躇した……!
その黒光りする紐【バイコン】を使えば、
圧倒的なスピードで戦って、勝利を得ることができるだろう……
だが、ゴキ……もにょもにょ……を素材につかった【バイコン】は、
なるべく使いたくないし、
何より、この間、ピンク髪のおばさん戦で実践してわかったが、
使ったあとの後遺症がひどい……!
次の日、一日中、すごい筋肉痛で、歩くのすら困難だったのだ……
だが……?
魅夜がそうやって、躊躇していると……?
「あ、ところで先輩……?」
何とも、戦闘中にしては緊迫感のない声で
銀髪の少女が話しかけ始めた……?
「何よ?」
魅夜は、訝しげに尋ねる……
もしかしたら、こちらの油断を誘って、
わざと緊張感のない風を装っているのかも知れないからだ……
だが、次に飛び出した銀髪の少女の言葉は、
意外なものだった……?
「日吉先輩と、うちって、昔何かありました?」
「はあ?」
「うち、記憶喪失になってすぐ、校内をうろついてたんやけど、
そしたら、うち、日吉先輩に声かけられてもうて……
何や、やけに親しい感じやったから、
うち、先輩の恋人か何かやったんかと思うたんやけど……?
知りませんか?」
銀髪の少女がそう尋ねると、
魅夜は、若干顔を引きつらせて、答える……
いやはや、どうも……
銀髪の子の【恋人】発言が気に入らなかった様子だ……
「はあ? コ、コウくんが、あんたと……?
ハハ! な、何言ってんだか!?
あるわけないじゃない!
そもそも、コウくんのこと、私はずっと見て来たけど、
あんたみたいな髪の子と会ったことなんて
この間まで一度たりともなかったわ!」
魅夜が半笑い、半分怒り心頭の様子で、そう言うと……?
「ふむ……
日吉先輩のストーカーやっとる魅夜先輩が言うんやから
ホンマかな……」
銀髪の少女は、あごに手をあてながら、
真面目くさってそう言った。
「おい、待てや!?
誰がストーカーよ!?」
魅夜は、顔を真っ赤にして怒ってそう言った!
「あんたや、あんた……
毎日毎日、ドローン飛ばして監視しとるでしょ?
日吉先輩のこと……」
魅夜は一瞬、『こいつ、そんなことをまで知ってるのか!?』と
たじろいだが、すぐに気を取り直すと……
「あ、あれは、コ、コウくんの恋人として
愛しの彼がどうしているのか、気になって気になって仕方なくなった、
乙女心のせいだし!」
そう言い放った……
「はあ……
あの……ですねえ……?
日吉先輩が気づいてないから問題になっていませんけど、
立派な犯罪ですわ、あれ……
まあ、気づいたところで、日吉先輩優しいから
許してくれそうやけど……」
「くのぉ!? くのぉ!?
何てこと言うの!?
人の愛情表現を、ストーカーとか言って!?」
魅夜がそう言うと、銀髪の子は、
可哀想なものを見る目で魅夜を見て、ため息をひとつ……
「な、何よ、そのため息……?」
「もええわ……話戻しますわ……
そいで、日吉先輩と学校で会うた時に気付いたんやけど……
その……うち、多分あの人と……
その……そのな……?」
何やら、銀髪の子は、
もじもじとし始める……?
「待って……何、その乙女チックな反応?
待て!? ちょっと待って!? こ、心の準備させて!?」
嫌な予感がした魅夜は、
銀髪の少女の言葉を遮ろうとするが……
もう既に時は遅かった……!
銀髪の子は、意を決すると、
大きな声で、こう言い出す!
「う、うち!
日吉先輩とファーストキスしてもうたんや……!」
「ブッ!?」
魅夜は思わず噴き出した……!
まさか、銀髪の子から、そんな発言が飛び出すとは、
思わなかったのだ……!
「なななな、何言ってるの、あんたは!?
コウくんは、女なら誰かれ構わずって、そんなチャラい男じゃないし!
そもそも、あんた!? おかしいじゃない!?
何で記憶喪失なのに、ファーストキスの記憶がある!?」
「そやけど!
ファーストキスやで!?
そない大事なこと忘れるわけないやろ!?
うち、その記憶だけはあるんや!」
そう言われて、
そういえば、自分のファーストキスは、毬愛だったと思い出して……
魅夜は思わず、自分の唇を抑えて気分が悪くなった……
そして、そうやって吐き気を催している自分に気付くと、
もはや、銀髪の子の『ファーストキスは覚えている』発言を
認めざるを得なかった……!
「くっ! た、確かに……
ファーストキスは、いつまでも覚えてしまうものね……」
「やけど、日吉先輩には……
陣風先輩っていう恋人おるやん?」
「まてい!? 恋人は、私だ!」
魅夜は、自分の胸をバンと叩いて、そう言った。
「少し悔しかったけど、
日吉先輩と、陣風先輩って、ようお似合いや思うし、
折角やから、応援したろ思うて……うち……」
「おい、無視するな!?
恋人は私だって言ってるでしょ!?」
魅夜が再びそう言うと、
銀髪の子は、冷たい視線を魅夜に投げかけた……
「な、何よ? その目は……?」
「で、陣風先輩へのちょっとした腹いせと、
先輩達の進展を願って
陣風先輩の家に侵入して、パンツ盗んだんや、うち……」
「何してんの、あんた!?
ちょっと、意味わかんないんだけど!?」
「そして、こっそり、日吉先輩の鞄に入れたったわ……
二人が、それをきっかけに、進展すればええかな思うて……」
「ホント、何してくれたわけ、あんた!?
てか、そんなんで仲が進展する人いるわけないでしょ!?」
魅夜がそう言うと、
銀髪の子は、あらぬ方向を向いた……
魅夜が『どこ向いてるんだ、こいつ?』と一瞬思ったが、
すぐに、その意図を理解した……
銀髪の子は、ラブなホテルのある方向を向いていたのだ!
「いや、進展したんとちゃいます?
だって、ほら、うちがパンツをプレゼントしたお陰で、
今、二人が仲良うラブなホテルのところで
デートしとるわけやし……!」
「デートじゃないし!?
絶対何かの間違いだし……!?」
そう言って、魅夜はまた地団太を踏む……
「まだ、そないなこと言うとるん?
惨めな人ですね、先輩……
というか、先輩……?
あんた、ホンマ自分のことばかりやね?」
「はあ?」
「うちだって、本当は日吉先輩ともっと仲良うなりたいけど……
我慢しとるのに……
でも、日吉先輩のことをホンマに考えたら……
あの人の幸せを考えたら、
陣風先輩とくっつかせる方が一番あの人の為やないですか!?」
作者「UFOキャッチャーってさあ……」
せや姉「うん」
作者「あ、UFOキャッチャーってSEGAだかどこかの商標登録だったから
クレーンゲームって言った方がいいんだっけ?」
せや姉「知らんがな……」
作者「とにかく、あれさあ……
どっかで損切りっていうか、辞め時を考えないと
いつまでも続くよね……」
せや姉「せやね」
作者「何ていうのかな……
こんなにお金つぎこんで……って思うんだけど、
でも、あと少しでとれそうって思うと、
倍プッシュだあ! ってなっちゃう!w
なまじお金かけて、あと少しでとれそうなところまで
来ていると余計、お金かけたくなっちゃう!w
だって、そこで辞めたら、それまでかけたお金がパァーになるから!w」
せや姉「うわあ……」
作者「昔、ドラクエの【はぐれメタル】のぬいぐるみが欲しくて
何度も何度も挑戦したんです、作者……」
作者「それが、その【はぐメタ】……
いい具合に、【はぐメタ】の液体金属っぷりを表現してて
クレーンで掴むと、つるっとクレーンを抜けて行くんですよ!w
掴めないの!w」
せや姉「ふーん」
作者「ゲットしてから触ってみたんだけど、
何て言うか……
弾力性のあるストッキングみたいな袋に
砂をつめたような感触した……
ああ、これは、つるっと滑り落ちるわけだわって!w」
せや姉「で、いくら使うたんや?」
作者「くっ……それ訊いちゃいますか?」
せや姉「気になるやん?」
作者「もう覚えてないけど……てか、忘れるように努力した結果だけど……
少なくとも5000円近くは使っていると思う……」
せや姉「うわあ……」
作者「な、なんか、引くに引けなくなっちゃうんだよね……
2000円つかって、あともう少しでとれそう……
3000円つかって、もう少し、もう少しだ……
そして気づいたら……」
せや姉「完全にギャンブラーの末路やん……」
作者「でも、流石にそんなに使っちゃうと、
『もう二度とやるもんか!?』って思うわけだけど……」
作者「何年か経つと忘れちゃって……
で、店先にいい感じのクレーンゲームがあるとつい……」
せや姉「あんた、絶対、ギャンブルやらん方がええわ……」
作者「うん、自分でもそう思う……」
作者「作者、パチンコも競馬も競輪も、TOTOも、宝くじも
やったことないけど
やったら、とんでもない目に合う気がしてならないわ……」




