27話: ありえませんわ!?
陣風毬愛……
彼女は、10歳の頃に、母親を亡くしている……
しつけに厳しい家庭で生まれた毬愛は、
深窓の令嬢として、礼儀正しく育ったが……
それでも一人娘で、蝶よ花よと、やや甘やかされたため、
何をしても、どこか全力で物ごとに取り組まない癖が
身についてしまった……
というのも、たとえ彼女が何か出来ないことがあっても、
誰かが代わりにやってくれるからだ……
家事や料理などは、使用人がやってくれたし、
学校の宿題でわからないことがあれば、誰かに教えてもらった。
スポーツなどで全力を出すのは、危険だからと止められた……
だが、そのことが……
全力を出して来なかったことが……
後に、彼女にとっての人生最大の後悔へと繋がった……
……
不幸な出来事は、いつも突然やって来る……
最愛の母が、ある日、倒れたのだ……!
幸い、その時は、一命を取り留めたが、
医師に余命1ヵ月と宣告されてしまう……
若年性の癌……
それも末期だった……
もう既に治療が見込める段階は過ぎており、
あとは、薬で痛みを和らげて、いかに安らかに日々を過ごすか、
という段階だった……
最愛の家族を失うかもしれないという悲しみに……
毬愛は苦悩した……
運命を呪った……
もちろん、家族が他にいないわけではない……
毬愛の父親は健在だが、
いつも仕事で忙しい父とは、まともに話したこともあまりなく、
専ら、彼女にとって、家族と言える存在は母親だったのだ……
その母の命が、ついえる……?
恐怖だった……
自分の親が、もうじき、いなくなってしまう……
そのことが、今まで感じたどんなことよりも
悲しく……切なかった……
そして、気づいてしまう……
まだ、自分は母に対して、
本当の意味で誇れるものを見せたことがない……?
そうなのだ……
毬愛は、いつも全力を出して来なかったが故に、
母親に、真剣に物ごとに取り組んだところを
見せたことがなかったのだ……
そう、それは……
言い換えれば……
本当に心の底から母を感心させ、
褒められたことがない、とも言えた……
そこで、毬愛は、こう思う……
(お母様に、私の全力を見て頂いて、褒めていただきたい……!)
……
さて、こうして毬愛は、それから日々を頑張った。
何事においても全力を出す努力をしたのだ……!
料理や洗濯、学校の試験や習い事、
何でもいいから、母親に誇れるようなものを目指した……
しかし、一度身に染みついてしまった、全力を出さない癖は
なかなか改善できるものではなく……
何をしても中途半端にしかできなかった……
毬愛の母親は、それでも、
自分の娘が努力していたのはわかっていたから、
毬愛の作った料理やら、テストの点数やらを褒めてくれたが……
毬愛はそれでは納得ができなかった……
本当の自分を見て……
その上で褒めてほしい……!
認めてほしい……!
そう願った……!
願ったのだが……
だが、結局……
母に何も誇れる自分を示せないまま、
毬愛の母はあの世に旅立ってしまった……
……
「神様は……いえ、世界は……
わたくしを受け入れては下さらなかった……!」
毬愛は絶望した……
それからだ……
彼女が自殺を考えだしたのは……
その思いは……彼女の心を、
呪いのように蝕んでいった……
……
そして、毬愛は自殺計画を実行する……
幾重にも分岐した未来のうちのいくつかでは、
その計画は達成されたのだが……
無論、今回の周回では、
タイムリープした光治に邪魔されたわけだ……
そのことは……
毬愛にとっては、複雑なものであった……
確かに……
長年かけて準備していた自殺計画を邪魔されて
腹立たしかったが……
それと同時に、
自分の命を救ってくれた光治のことが
涙がこぼれ出てくるぐらいに……
嬉しかったのだ……
そう……
毬愛は、光治と出会って初めて……
母親以外で、自分に真剣に関わってくれる人と出会ったのだ……
毬愛は、心の奥底で、
光治に惹かれていた……
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
パン! パン! パン!
白を基調とした、厳かな雰囲気のする部屋に
その場に似つかわしくない音が響いていた……!
「ハァ……ハァ……」
女の荒い息遣いが聞こえる……?
毬愛は、それを聞きながら不思議に思う……
一体、誰のものだろう……?
彼女には、聞いたことのない人の声だった……
それにしても、苦しそうな息使いだ……?
それに、この息づかいに、
何やら胸が張り裂けそうな、悲しげなものが
隠れているように感じられた……
「……めや……!」
また別の誰かが、何かを言っている?
何だろう……?
よく聞き取れないのだが……?
「や……言うて……ろ!?」
遠くの方で喋っているのだろうか……
その声は、ひどくかすれて聞こえる……?
「やめぇや!? 陣風毬愛!?」
「え……?」
毬愛は、自分の名前を呼ばれ、
そこで、はっと我に返った……?
驚くことに、彼女の手には拳銃が握られており、
その銃口からは硝煙が立ちあがっていた……?
それに、心臓が破裂するんじゃないかと思うぐらい
激しく鼓動していて、息が上がっていた……?
そうだ……!
遠くから聞こえて聞こえて来たと思った
あの、女の苦しい息遣いは、毬愛のものだったのだ……!
「え……わたくし……何をやっていたの……?」
自分が何故、この状態になっているのか、
毬愛は全くわからず、ぽつりと呟いた……
「それはこっちの台詞や!?
何やってん!? あんたは!?」
ふり返って見てみると、
銀髪の髪をした赤い目の美人が
毬愛の手を後ろから懸命に抑えつけていた……?
「あら……女神様……?」
「あら、女神様、やない!?
あんた、自分が何やってんか、わかっとんのか……?」
時の女神ノルンがいた……
ノルンは、毬愛を睨みつけるようにして、言い放つ……!
「あんたに牢に閉じ込められて、
そこからやっと自力で出て、ここまで来れた思うたら……!
あんた、何やってん!? 気ぃ確かか!?」
ちなみに、ノルンは、フレイアと違って、
テレポートを自由自在には使えない……
この部屋まで、迷いながら、途中で陣風の者と戦いながら
やってきたのだが……
「何って……
何をやっていたのでしょう、わたくしは……?」
そう言いながら、毬愛は銃の向いた先を見る……
そこにはPCのモニターがあって……
それには……?
銃によるものなのか、
モニターの液晶は割れ、大きな穴が開いていた……?
「えーと……わたくしが銃を撃って
開けたのでしょうか……?」
「覚えとらんのか!?」
「え、ええ……
たしか、光治様と魅夜様を焚きつけて、
様子をPCで見ていたところまでは覚えて……
そ、そうですわ! 魅夜様が光治様の唇を奪って……!」
その時だった……?
『コウくん……!』
『魅夜……!』
PCのスピーカーから、
二人の声が聞こえて来たのだ……!
何やら熱のこもったような声だった……?
その声の調子から、
二人が何をやっているのか、想像できるようで……?
毬愛は、突然、わなわなと身体を震わすと……!?
毬愛は何も言わないまま、銃を構えると、
PCのモニターに向かって撃ち始めた……!
パーン!
「ハァハァ……!」
「やから!? それ、やめや言うとるやろ!?」
「はっ!?
わ、わたくしは……一体……!?」
毬愛は、はっとして、辺りを見回した……!
「お前、本気で言うとんのか!?
ギャグやないのうて!?」
「というか……?
い、今、銃を撃ったの、わたくしなのですか?
ぜ、全然意識がなかったんですが……?
な、何だか……どす黒いものが、心の底からわいて来て……?」
「ど、どす黒いものて……あんた……」
ノルンが言いかけたところで、
スピーカーから、またも声が……
魅夜の、どこか甘えるような声が聞こえて来た……!
『コウくん……大好き』
「この! 変態女!?
何してますの!? 貴女は!?
ああああああああ!?」
そして毬愛は、拳銃をスピーカーに構える……!?
「お、おま……!? ええ加減に!?」
カチャ……!
しかし、拳銃の弾丸はもう尽きていた……
カチャ!
カチャカチャカチャ!
カチャカチャカチャ! カチャカチャカチャ!
毬愛は、何度引き金を引いても弾丸が出ないのを確認すると、
銃を投げ捨て、叫び声をあげるかのように言い放った……!?
「キイイイイ!? 弾ギレですわ!?
何でオートマじゃないのですの!?」
毬愛は、突然走り出すと、
ドアを乱暴に開けて、廊下に飛び出して行った!?
「おい……!? どこへ行くんや!?」
「光治様達のいるお部屋ですわ!?
お二人の幸せを願っておりましたけど……!
よぉく考えると……!
わたくしのお家で、不純異性交遊を許すなんて汚らわしい行為!?
ありえませんわ……!?
そんなもの、余所でやって下さるよう言わないと、ですわ!?」
作者「そういやさあ、人から聞いた話なんだけどさあ……」
せや姉「うん」
作者「東京の都心の方では、
自転車に乗っているだけで、何人もの警察官に
呼び止められて職務質問されるそうな?」
せや姉「そか」
作者「特に警察の給料日前には、
凄く何度も何度も呼びかけられるそうで
なんでも、点数稼ぎしようと
違法じゃなくても何でもいいから自転車に職務質問するんだと」
せや姉「いい迷惑やな」
作者「せやね」
せや姉「おい、台詞……」
作者「てか、田舎と違って東京は、
地域住民と警官が接する機会も少なくて、
点数稼ぎできることが限られているから
自転車に職質しまくるらしいよ?」
せや姉「まったく、余計なことせんで欲しいわ、ホンマ」
作者「以上、こち亀とかから得た知識でした!w」
せや姉「おい……」
作者「かく言う作者もさあ……
自転車止められて職質されたことあってさあ!w」
せや姉「なんや、嬉しそうやな?」
作者「知ってる? 警察官もトラブル避けて
大人しい人を狙って職質しているらしいよ!
つまり、作者は大人しい人に見られたわけだ!w」
せや姉「は?」
作者「でも、その時の作者さあ……
時間的にまだ余裕があったものの、
ちょっと急いでいる時に声かけられたものだから
イライラしててさあ……
つい、警官のこと睨んじゃった!w てへ☆」
せや姉「てへ、やないやろ!? 何危ないことしてん!?」
作者「いや、正確には睨んじゃったと思うってだけで、
急いでいてイライラしてただけで、故意に睨んだわけではないんよ?」
作者「そしたらウケるのが!w
警官がビビったみたいで……」
作者「どうしたんですか?(真顔」
警官「あ、あの!? も、もしかして慣れてます? こういうの?」
作者「いえ、初めてですけど? こうやって止められるの……(イライラ顔
っていうか、早くしてもらえますか?(真顔」
警官「は、はい! 今、本部に照合してみます!(汗」
作者「ぷっ!w」
せや姉「笑うてる場合か!? もし捕まったらどないするん!?」
作者「捕まるわけないじゃん? だって手出してないんだよ?
むしろ、作者みたいな、
モデルのスカウトに声かけられるような人間を怖がって……!w
ウケるというか!w
何が、そんなに怖いんだよって!w」
せや姉「え?」
作者「え?」
せや姉「そ、そやね……」
作者「おい、目を伏せながら言うな……悲しくなる……」




