21話: あなたと二人きり
陣風家の館に着いた魅夜は、
どうやって中に侵入するか考えていた……
最初は、小型ドローン:COROちゃんを呼び寄せ、
敷地の中を偵察しようとも考えたが……
「うーん……これは……」
スマホの画面を見て、
魅夜は、渋い顔をする……
「赤外線センサーに、熱感知、集音、超音波……
あ、これは匂いセンサーの一種か?
うわぁ……ここまでやる?
思ってたより大分、警備が厳重ね……」
これだけ厳重だと、
館の人間に気付かれずに忍びこむのは、
ほぼ無理だ……
「ま、そんな簡単に入れるようだったら、
月影家の誰かがとっくに侵入してる、か……」
魅夜は、陣風の館を見上げながら、そう呟いた……
月影家は、先祖代々、陣風家に
恨みをもち、復讐の機会をうかがっていた……
もっとも、それは一方的なもののようで……
陣風家が、月影家のことを悪く思っているとかそういう話は
今まで聞いたことがない……
「やっぱり、陣風家を相手に
復讐しようだなんて考えている、月影家の家族って、
どこかおかしいわ……」
そして、『もういっそ正面突破しちゃう?』などと考えて、
自転車を押しながら、
敷地の周りの道路を一周した……
その時だった……!?
道路の前後から突然!
謎の集団がやって来たのだ!?
黒い防弾チョッキに黒のヘルメットを被った集団に
魅夜は、四方を囲まれた……!?
統率のとれた動き……
隠密風の格好……状況から考えて、
陣風の家の者と考えて間違いないだろう……?
(うわぁ……もう来ちゃったよ……)
陣風の館の周りをうろうろし始めて
まだ10分も経っていないはずなのに、
迅速な対応に、魅夜は舌を巻いた。
、
一応ダメ元で、演技をしてみる……
「な、何なんですか……?
あ、貴方達……?
な、何で私、囲まれているんですか……?」
魅夜は、辺りを見回しながら
怯えているフリをして、そう言った……
そうやって相手が油断しているうちに
逃げ出そうと考えたのだ……
だが……?
「月影魅夜様ですね?
お待ちしておりました……」
黒い集団の後ろから、端正な顔立ちのメイドがやって来て、
魅夜にそう告げた……?
「へ?」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
魅夜は、意外に簡単に、屋敷の中に案内された。
一体、館の周りをうろうろしていたのは
何だったのかと思うぐらい、それはもう、簡単に……
一応、玄関で
『申し訳ございませんが、規則なので……』
と、スマホと……
護身用に持っていた小刀を預けさせられたが……
それがまた、ご丁寧で、
魅夜の目の前で、玄関のところにある金庫に
スマホと小刀を入れるのを確認させられ、
その上で、金庫の鍵を手渡された……
(陣風毬愛……どういうつもり……?)
あまりに丁重な扱いに、
魅夜は、眉間にしわを寄せて、訝しむ……
てっきり、光治を救いだしに来た自分を
陣風は徹底的に排除して来ると考えていたのだが……?
「さ、こちらです……」
メイドの案内で廊下を進むと、
館の従者らしき人間達が、頭を下げて礼をしてくる……
どう考えても、敵対している感じではない……?
むしろ、客として扱われている感じだ……?
(コウくんのこと、何とも思ってない……ってこと?)
一瞬、そう思ったが……
すぐに、毬愛が光治に抱きついていた映像を思い出し、
奥歯をギッと噛みしめた……!
(いや、あの泥棒猫のことだ……油断しちゃダメ!)
やがて、三階まで上がると、
ひと際大きな扉の前まで案内される……
その扉に、メイドは大きくノックをした。
トン、トン、トン……
「お嬢様、お連れ致しました……」
「どうぞ……」
毬愛の返事が返って来てから、
メイドは扉をあけると、
魅夜に、中に入るように促して来る。
魅夜は、周囲を警戒しながら中に入ると……
白を基調とした、エレガントな印象の大きな部屋の中央に、
金髪碧眼の美少女……陣風毬愛が
こちらに深々と頭を下げて、そこに居た……
「ごきげんよう……
月影魅夜様……
わたくしの名は……」
「知っているわ、陣風毬愛……さん……
だって、貴女、有名人だもの……」
「まあ、そうなのですか? フフフ……」
毬愛は、優雅にそう笑った……
それは何でもない微笑みだったが、
魅夜には、それが無性に鼻について、
イライラとして見えた……
(何、この余裕……嫌な感じ……)
そこで、魅夜は、はっとして、
自分ってこんなに性格悪かったかな……
とも思うのだが、
陣風の顔を見ていると、
さっきスマホで見た、光治に抱きついている映像が
頭の中でチラついて……
どうしても、彼女のことを良く思えなかった……
「魅夜様……
あ、いえ、失礼……!
月影様とお呼びすべきでしたね……!
わたくしったら、つい……!」
「魅夜でいいわ……
同い年でしょ?
その代わり、私も【毬愛】って呼んでいい?」
魅夜がそう言うと、
毬愛は、口に手を当てて、驚いが表情を見せる……
「まあ、わたくし達、同い年でしたのね? ふふふ……
ええ、構いませんわ……
でも、同い年……ですか……
何だか、運命を感じてしまいますわね……?」
(何その、わざとらしい表情……?
ああ、イライラするぅ……!)
魅夜は、毬愛と自分とでは
どうも相性が悪いようだ……?
そう考えた……
毬愛の一挙手一投足が、イチイチ癪に障る……!
そうだ……!
毬愛がキレイ過ぎるのがいけないのだ……!
驚いても何をしても、毬愛はキレイ……! 花がある……!
そのことが……! どうしても自分と比較してしまって……!
(コウくんったら、こんなのがいいのか……!?)
そんなことを考えてしまい、イライラするのだ……!
それは、劣等感とは少し違うようだが、
どうも魅夜はイライラしていた……!
だが、魅夜は、小さく溜め息を吐くと、
自分に『落ち着け……落ち着け』と心の中で念じ、
落ち着きを取り戻す……
そして、改めて、部屋の中を見回して……
そこに、光治がいないことを確認していた……
さっきのピンク髪のセーラーおばさんのスマホでは、
この部屋の映像が映っていたようだったが、
その映像の中にいたはずの光治と……
ついでに誰だか知らない銀髪の女がいなかった……?
「ねえ……? コウくんはどこ?」
魅夜が尋ねると、毬愛は、
小首を傾げながらこう言う……
「コウくん……?
ああ、光治様のことですね?」
そして、自分の口を軽く手で抑えながら、
『くすくす』と笑いながら、
魅夜のことを見ていた……?
「な、なに?」
魅夜がイラッとするのを抑えて尋ねると、
毬愛は『いえいえ、仲がおよろしいようで……』と
答えるだけ……?
その笑みが、また余裕そうに見えて
魅夜のイライラがまた少し溜まって来る……
「光治様は今、別室で休まれていますよ?
貴女と少し、二人きりでお話がしたかったので
席を外していただいたのです……」
「ふーん……」
魅夜は、毬愛の話を聞いて、
何が何だかわからないという風に思っていた。
(毬愛が、私と二人きりで……? 何が目的?
それにしても、毬愛は、コウくんのこと
自分からは話さない感じだけど……
もしかして好きじゃないのかな……?)
そんなことを考えていると、
つい言葉に出てしまう……
「ねえ、毬愛……?
貴女にとって、コウくんって
どんな人……?」
魅夜は、言ってから、はっと驚いて、
口を抑えると、『何を訊いているの!?』と思った。
「光治様ですか……?
うーん……そうですねぇ……?」
毬愛は、頬に手を当てながら、
空中を眺めて考えていたが……
「まだ、あの方のことはよく知りませんが……
強いて言えば……」
そして、毬愛は、にっこりと微笑んで言う……
「わたくしの運命の人、でしょうか……ふふ!」
それは、まるで天使の微笑みのようで
屈託のないものであったが……
その言葉を聞いて……
魅夜の中で、何かが爆発した……!
感情が抑えきれなくなったのだ……!?
気が付くと……!?
魅夜は、毬愛の方へ駆け出して……!
彼女の方へ手を伸ばしていた……!?
作者「いやあ、今回の話、
もうちょっと続く予定だったんですが、
長くなったので、分割し、後半を次回へ回しました!」
作者「てかねえ……体調不良……
こういう変に湿度の高くて曇ってる日、苦手なんですよ……
鬱めいて、やる気が減退するぅ……うぅ……」
せや姉「で? この会話を二人にやらせたかったんか?」
作者「ん?」
せや姉「前に言うてたやろ?
魅夜と毬愛の二人の会話でやりたいことがあるとか」
作者「ああ、あれはもっと先の予定だ!w」
せや姉「おい」
作者「今回の話は、初顔合わせって感じで、
予定では、15話ぐらいでできればと思っていました……」
せや姉「大分遅れとるなあ……」
作者「作者のやりたかった二人の会話は、
30話の予定だから……
今の状態から考えると、35~40話ぐらいでしょうかねえ……」
せや姉「おいい!?」
作者「そもそも、この話、
もっと光治が主人公やっている話のはずだったんだけどなあ……」
作者「な~んか、いつの間にか、魅夜が主人公みたいになってるし……」
せや姉「せやね」
作者「まあ、魅夜なんて、作者の没作品(未発表)の主人公だし
現主人公食っちゃっても、仕方ないか!w」
せや姉「おい!?」




