12話: 拘束、脱出、そして……再会?
(な、何なのでしょう、この方……?
でも、ストーカー様ということは、
私のこと、お好きなのでしょうか?
それなら、何故、ブスなんて……?)
毬愛は、不審そうな表情を浮かべながら、
光治のことを見ていた……
一方、光治の方も……
(やばいな、この流れ……
何か、段々仲良くなってないか、俺達……?
もうこれ以上、こいつと何も話さない方がいいのかも?)
そんなことを考えて、毬愛のことを警戒していた……
そして、光治が、もうこの場から立ち去ろう……
そう思った時だった……!?
「動くなっ!?」
突然、ぞろぞろと、銃を構えた男達が現れて、
あっという間に、光治の周りを取り囲んでしまった……!
「な、何だ……!?」
男達は一斉に、
光治に向かって、銃を向けたのだ!?
光治が、何が起こったのかと
動けないでいると……!
「よ~し……! ゆっくりと手をあげろ……!
いいか? ゆっくりとだ……!」
男達のリーダーだろうか?
一人の男が、光治に向かって、
そう言った……!
光治が、目の前の男から視線を逸らさず、
横目で屋上の出入り口を見てみると、
ドアは既に壊されており、
そこから屈強な男が何人も、こちらに向かって来ていた……!?
(くそっ……! 悠長にやり過ぎた……!)
光治は、小さく舌打ちをするが、
逆らったりしたら、どういう目に遭うかわかったものではない……
光治は、言われた通り、ゆっくりと手をあげた……
(これ、毬愛のとこのやつらか? 詰めが甘かった……!)
そう思うが、よく考えてみると、
毬愛の自殺を止めて、言いたいことを言うことばかりしか考えておらず、
その後、その場からどう逃げ出すかまでは、頭になかった……
最初から、彼の計画は杜撰だったのだ。
ともかく、光治は、屈強な男達に取り囲まれてしまった……
そして、リーダー格の男は、
光治が手をあげたことを確認すると、
光治を、後ろ手に手錠をかける……!
「OK! 確保しました!」
と、後ろに向かって、何か合図を送った……?
すると、すぐに
女性が後ろの方から急いでやって来た……?
(あれは……メイド……?)
それは、紺色の衣装に、白いエプロンをつけた、
いわゆるメイド服の女性だった。
「お嬢様! ご無事でしたか!?」
息を切らせながら、そのメイド服の女性は、そう言った。
「あ、恵理子さん……?」
毬愛が、あまり緊迫感のない感じに、そう言うと、
【恵理子さん】と呼ばれたメイド服の女性は、
怒ったような顔で、毬愛にこう言い始める……?
「『あ、恵理子さん』じゃないですよ!?
心配したんですよ!?
お手洗いに行かれたはずなのに、
いくら待っても帰っていらっしゃらないから……!
それが、どうして隣にあったこのビルの、
しかも屋上にいらっしゃるのですか!?」
すると、毬愛は、バツの悪そうな顔をして、
指で頬を軽く掻いて答える……
「いえ、ちょっと、その……
飛び降り自殺をしようかと思いまして……」
「お嬢様……!?」
恵理子が驚いた顔で、毬愛を見つめると、
毬愛は、パタパタと手をふって、
苦笑しながら、こう応える。
「だ、大丈夫ですよ……
もう……自殺はしません……
何だか、気が削がれてしまいましたから……」
そう言ってから毬愛は、
光治のことをジト目で見ると……
「そちらの方のせいで……
何だか、自分のやろうとしていたころに気付かされまして……」
拗ねた口調でそう言った。
すると、恵理子は、
そこで初めて、光治の存在に気付いたようで
怪訝そうな顔で、こんなことを言う……?
「な、何なんですか!? この変態は……?
裸にパンツ一丁!?
しかも、女性のパンツを頭に被って……!?
は……!?」
恵理子は、そこまで言うと、
何かに気付いたような顔をしてから、
毬愛の前に立つと、おもむろに、
スカートの裾を持ち上げる……!?
「え……」
毬愛が口を開けたまま、硬直する……
「わ、わかりましたよ……お嬢様?
そういうことでしたのね!?」
「え、恵理子さん……?」
毬愛が、わけがわからないといった様子で
眉をひそめていると……?
「お嬢様!? こんな下品な人間のもの
見てはいけません!
こ、こんな変態のパンツを見るぐらいなら!
私のパンツを見て下さい! さあ!」
そして、メイドは、
自らのスカートを捲くりあげようとする!?
その行動に、その場の全員が『は?』と
口をあけて驚いた……!?
毬愛が、恐る恐る尋ねる……
「え、恵理子さん……?
何をなさっているの……?」
「何って……!
お嬢様は欲求不満なんですよね!?
パンツが見たいんですよね!?
こんな不埒な少年の裸を見るぐらいなら
私のパンツを……!」
「てい……」
恵理子が全て言い終わる前に、
毬愛が、その首の後ろに、毬愛の手刀を叩きこむと……
恵理子は、意識を失い、ばたりと倒れる……
「はあ……まったく……」
毬愛は、それを確認してから、
額に手を当てて、首を横に振りながら、大きな溜め息をする……
「申し訳ございません……
わたくし共のメイドが、お見苦しいところをお見せして……」
そして、毬愛は、その場で凍りついている全員に向かって
優雅に、深々と頭を下げ、お詫びのお辞儀をした……
「さて、変態様……?」
毬愛は、改めて光治の方を向くと、
にこやかに微笑んだ。
「何だよ……?」
「いくつか、お訊きしたいことがあるのですが……
まず、貴方のお名前を
聞かせてもらえませんか?」
「嫌だね! 誰が言うか……!」
光治は、心の中で思う。
そんな、自分の名前を、
運命の彼女と言われた毬愛に教えて、
どうにかなってしまったら、困るじゃないか、と。
すると、毬愛は、
光治に邪険にされたのが、少し意外そうな表情を見せたが、
それでも、目を少し丸くしたまま話を続ける。
「そうですか……
では、質問を変えましょう……
何故、わたくしの名前を知っていましたの?」
「それは言えない」
「何故、女性の下着を被っているのですか?」
「お前に惚れられたくないからだ……!」
すると、毬愛は、「はぁ……」と大きな溜め息をし、
『なかなか正直になっていただけませんね……』と
肩をすくめて見せる……
「貴方、わたくしのストーカー様ですよね?
何故、そういうことを言うのですの?」
毬愛は、人差し指を光治の方へ向け、
少し目を吊り上げて、そう言った。
(いや、惚れられたくないから、パンツを被ってるんだろ?
何故、そんな簡単なこともわからないのか!?)
いや、そんなこと、わかるはずない……
「そもそも、それは誰の下着なのですか?
わたくしのでは、ないですよね?
わたくし、そういうのは所持していなかったと存じますし……」
「誰のでもない! 買ったんだ! 新品を!」
「な、何故、そこまでして下着を頭に被るのです?
理解できません……」
「だから、言ってるだろ!
俺には彼女がいるから、お前に惚れられたら困るんだよ……!」
「はあ……困りました……」
そして、毬愛は、溜め息をついて、
『やれやれ……』といった感じで、首を横にふる……
「しかし、困りましたわね……?
何を尋ねても、まともに答えて下さらないのでは……」
「俺の被っているパンツについては、
本当のこと言ってるだろ……?」
光治はそう言うが、
毬愛は『まだ言ってるわ……』と感じで
光治をジト目で見た……
そして……?
「あら……?」
毬愛は、何かに気付いたような顔をして、
光治の目をじっと見つめて来る……?
「な、何だ?」
光治は、毬愛に見つめられて居心地が悪い……
一瞬とは言え、自分が見惚れてしまった美少女が
自分のことを見つめて来るのだから当然だ。
そして、毬愛は、小首を傾げながら、
光治に向かって言い始める。
「そういえば、貴方……?
貴方の、その瞳……?
どこかで見た気がするのですが……?」
「は? 何を言っているんだ?
俺はお前と初対面だぞ?」
「いえ、何だか……貴方の瞳を見ていますと……
懐かしいというか……嬉しくなるというか……?
何だか、顔が火照って来るような……?
いやだわ……何でしょう、この気持ち……」
毬愛は、顔をほのかに赤くして、そんなことを言う……
(やべえ……? 何か様子が変だぞ……?)
光治は、毬愛が自分に惚れたのかと思い、
慌て始める……!
だが、どうにかしようにも、
手を拘束されているため、何もできないのだ!
「というかですねぇ……
その下着の下には、
どんな顔が隠れてますの……?」
そう言って、毬愛は
光治の頭に、手を伸ばした……!
「お、お前……!?」
「質問に答えて下さらないのですもの……
せめて、お顔を見せて下さいな……?」
毬愛は、光治が頭に被っていたパンツに手をかけると、
それをゆっくりと脱がし始め……
突然のことだった……!?
「うわあああ!?」
「なんだ!?」
突然、男の声が聞こえた!
出入り口の方からだった!?
皆がその方向を見ると……!?
「煙……!?」
黒い煙がもくもくと……!
湧き上がっていた……!
「何なのですの!?」
「おい! フォーメーションA!
全員、お嬢様を守れ!」
リーダー格の男がそう言うと、
男達は、光治の側から離れ、
毬愛の方へと向かう……!
そして、それを見計らったようなタイミングで
何かボールのような黒い塊が飛んで来た……!?
「な、何だ……!?」
そのボールのようなものから、
新たな黒い煙が、もくもくとわき上がり……!
あっと言う間に、辺りは煙に包まれ……!?
一瞬のうちに、一寸先も見えなくなってしまう……?
「うわあ!? 隊長! 視界が見えません!?」
「落ち着け! お嬢様をお守りすることだけを考えろ!」
そして、その場が大混乱しているうちに……
ガチャッ……!
何者かによって、
光治の手から、手錠が外された……?
(な、何だ……?)
その煙の中で、誰かの声がした……!
「来て! こっち!」
(え……この声って……?)
光治は、心臓が跳ね上がるように思った……!
何故なら……?
(今、魅夜の声みたいに、聞こえ…………え?)
いや、魅夜のはずがない……!?
だって、魅夜と初めて出会ったのは、高校2年の春……
それまで接点なんてなくて、お互い、存在すら知らなかった……!
ましてや、こんなところで
タイミングよく助けてくれるなんて……
そんな都合の良い話、あるはずがなかった……!
「ほら! 早く! 何やってるの!?」
その人物がイラ立ったような声を上げ、
光治は、手を引かれる!
……
そして、手を引かれるまま走って、
出入り口からビルの中に入り……!
……
階段を何段も駆け降りて……!
……
やがて、煙のないところまで来て、
光治が恐る恐る、自分の手を引いている相手の顔を見ると……?
「え……?」
その人物は、男物の白ブリーフを
フルフェイスに被って顔を隠していた……!?
「ぎゃ あ あ あ あ あ あ !?」
作者「うーん……」
せや姉「どした?」
作者「いやあ、小説を書くのって、
やっぱり難しいもんだな、って思って」
せや姉「今更かい」
作者「いやあ、もっとストーリーの本筋を
早く展開していきたいと思う一方で、
脇道に逸れるのは、
それはそれで楽しいからやりたいし……
その兼ね合いがねえ……」
作者「今回の、この話も、
とっとと助けに入るシーンまで行きたかったんだけど
気付いたら、メイドが変なことし始めるし……」
作者「どうも余計なこと書いちゃうんだよなあ……
でも、な~んか、これ……
作者の性格的なものなのかも?」
せや姉「そやの?」
作者「うん、実生活でも、
学校とか会社とかでも、昔からさあ……
空気も読めず、何の関係もないこと
はじめちゃうんだよねえ、つい……」
せや姉「あー、おるなあ、そう言う人……」
作者「この間も、何の関係もなく
『駅で担架で運ばれる人、初めて見ちゃいました!w』
って言ったら、
『うん、それ、今関係ないよね?』
って優しく諭されてしまった……」
せや姉「何やってん?」
作者「ホントにねえ……」
作者「それはそうとさあ……?」
せや姉「うん?」
作者「な~んか、昨日あたりから、
空中に白いものが沢山見えるんだけど、
何なんだろう、これ……?」
せや姉「いや、そゆこと言うから、
関係ないこと言うなとか言われるんやろ…………って、
怖いやろ!? 何やの、その白いのって!?」
作者「ホント、何だろうね……
いや、冗談じゃなくて、
白いのがそこら中を飛び交ってるのが見える……?」
せや姉「急に言うなや!? 怖いやろが!?」
作者「ま、多分気のせい……」
せや姉「なら、初めから言うなや!?
泣いちゃってる子もおるんやど!?」




