天才興行師が思い付いた究極の見世物とは?
昔の探偵小説とかを読んでいると、時々見世物小屋が出てきます。
昔は見世物小屋の興行が盛んだったみたいですね。
では、なぜ最近は見世物小屋がなくなったかと言うと、単純な話で、テレビや映画などの映像媒体が普及したためでしょう。
その上、更に最近ではネットで動画サイトなども見られるので、わざわざ外出しなくても世界中の面白い動画や珍しいものを写した動画なんかもすぐに見られます。
では、現在のような映像媒体がなかった時代には、どのような見世物があったのかというのを調べて見ると、やっぱり怖そうなものも多いみたいですね。
自分はあまり怖そうなのは見たいとは思いませんが。
19世紀のアメリカに、P・T・バーナムという天才見世物興行師として活躍した人物がいました。
バーナムは今日のサーカス興行の基礎の一部を築いたり、心理学用語の「バーナム効果」の語源にもなったりしています。ちなみに、自分は「バーナム効果」という言葉を某ライトノベルで知りました。
それではバーナムがどのような人や物を見世物にしていたのか、その一部を紹介します。
それらは、『古代に生息していた巨人の化石』、『進化論の失われた環を埋める原人』、『アメリカの初代大統領ワシントンの乳母をやっていたと称する161歳の老婆』、『フィジーで発見された人魚』等々です。
なかなか、面白そうですね。実際、これらの見世物にまつわる一つ一つのエピソードは個人的には面白かったです。
ついでに今、「フィジーの人魚」で検索してみたら色々と出てきました。
これは今でも結構有名な話みたいです。こんなに時が経っているのに、未だに話題に上る見世物を作ったバーナムはやっぱり天才ですね。
そんな中で今回、お話がしたいのはバーナムの最高傑作とでもいう見世物『大未知の世界』です。
バーナムは列車の引き込み線に貨車を置くと、その中に入れば『大未知の世界』が見られると宣伝します。
すると、その宣伝に引き寄せられた客が入場料を払い貨車の中に入ると中には何もありません。
そこで、客は一杯食わされたことに気がつきますが、更に貨車の中で見たことは誰にも言わないで欲しいと熱烈にお願いをされます。
そして、ほぼ全員の客がこの願いを聞き入れて『大未知の世界』の正体を他言しませんでした。
それは、なぜかと言うと客は貨車の中には何もないということを誰にも言わなければ、その特典として、自分は一杯食わされた立場から、これから一杯食わせる立場に移ることができるからでした。
バーナムは、人間の騙されやすい心理を熟知していて、基本的に人は騙される側よりも騙す側に立ちたいと思っていると考えたようです。
それは、つい今しがた騙されたばかりの人なら余計に他人を自分と同じ被害者にしたいと思うでしょう。もちろん、犯罪にならない範囲内でですが。
実際、この考えは当たっていたらしく、バーナムは何度も『大未知の世界』の興行を催しました。
見世物を見てきた人に話を聞こうとしても、絶対に話してくれないとなると、自分で見に行きたくなるのは仕方がないことでしょう。
こうして次々に好奇心に駈られた人たちが『大未知の世界』を見に訪れて興行が成功したようです。
そもそも騙されにくい慎重な人間は、そんな内容もわからないような得体の知れない見世物を見に行きませんよね。