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絶滅俯瞰  作者: 遒�。�
第二章 絢爛王都ディアデム
36/42

第三十五話 サイコーの人材

「惜しみなく法力を使っちまえるなんて!」

「一瞬だったぞ!?」

「それに、見ろよ。こんなにキレイに切れてるぞ……!

「お嬢ちゃん、一体どこでこんな芸当を?」


 わっ、と。何人もの人間が集まって来る。手を伸ばさずとも触れてしまえる距離にこんなにも多くの人間が存在している。その事実はフォリンにとって、あまりにも現実感が無かった。上手く反応できずに呆然としていると、少し遠い所から声が飛んでくる。


「どうした、騒がしいぞ」


 調理場の歓声もとい騒ぎを聞きつけて、ボルスがやって来た。彼は人の輪の中心にいるフォリンに歩み寄ると、さりげなくその隣に並ぶ。現れた上官に、先程一際大きな声を上げていた青年が答えた。


「この子がさっき、法力を使ってたんすよ! 何の触媒も無しに! 料理の下拵えなんかに!」

「……ほう?」


 彼の言葉に、ボルスは少し驚いた様子でフォリンの顔を見た。ボルスには、フォリンが妖精から逃げるビジョンも視えていた。とはいえ、やはり料理の下拵え"程度"に使ってしまうことには驚いている様子だ。


「君はどのくらい法力を扱えるんだ? 何ができる?」

「えーと……空を駆けたり、飛んだり……さっきみたいに物を刻んだり、火を付けたり、雷撃を放ったり……」


 普段の生活で使ってきた法術を列挙する。その度に、周囲の人々がざわついた。ボルスは考え込んでいる様子で、顎に手を当てている。そんな彼に、先程の青年が目を輝かせながら主張する。


「隊長! この子、すげー優秀じゃあないっすか! こんなに法力を扱える子、人間じゃあそうそういませんよ!? これなら閃銀た……じゃなかった、閃銀騎士団にいてもおかしくないし、戦力になってくれますよ!!」


 がし、とフォリンの肩を掴みながら、青年が言う。青年の"逃がしてなるものか!"といった熱意を感じる勢いに気圧されそうになるフォリン。しかし、ボルスの方はというと渋い表情のままだった。


「確かに、法力を扱える人材は貴重だし、なかなか集まらない……」

「でしょう!? 逃す手はないっすよっ。飯炊きをさせるより隊員……うんにゃ、団員になってもらった方が絶対に良いですっ」

「……しかしなぁ」


ちら、とフォリンに視線を向けるボルス。その表情には明確に、躊躇いの感情が見てとれる。しかし、周囲の期待の眼差しが、世話になるばかりで後ろめたいフォリンの背中をちくちくと刺す。役に立たねばならない、そんな気がしたのだ。


「あの、ボルスさん。私にできることがあるなら――」

「勿論、気持ちはありがたいよ」


 フォリンが最後まで言い切らないうちに、ボルスが言葉を遮った。眉間に皺を寄せた、苦し気な表情で彼は続ける。


「でも、そうは言ってもな。いくら何でも、女の子を。それもこんな境遇の子をいきなり団員にするのは」


 ボルスには思うところがあるらしく。部下やフォリンの言葉に対し、決して首を縦に振ろうとはしなかった。そんな彼の肩に、彼と同じくらい逞しい手がぽん、と乗せられた。


「――サイコーじゃないか。何を迷う必要があるんだ?」


 肩の重みと声を受けて、ボルスが振り返る。彼の視線の先には、ボルスとよく似た装備を身に着けた男が立っていた。その男の顔には、フォリンにも見覚えがある。ボルス一行が駐屯地へ辿り着いた時、真っ先に出迎えてくれた男だった。

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