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エッセイ

まさか自分がなるなんて…

作者: 高瀬翠

生まれて初めての肉離れは、車を降りようとした瞬間でした。


何を言っているか分からない?

いえいえ、私も意味が分かりませんでした。


車から降りようとしただけですよ。

運転席から降りようとした瞬間、左足の膝裏あたりからピキッとした痛みがはしりました。


痛みはありましたが、気にせずに降りようとしたら左膝が伸ばせないんです。

何度か伸ばそうとしましたが、痛みが激しく1人で動揺していました。


その時は母と買い物に来ていたのですが、たまたま車内には私だけ。

これは…つったのかな?と対処法を検索している間にも、だらだらと冷や汗がとまらず、落ち着く為にも母に水分を買ってきてもらいました。


母は心配そうにアクエリアスを私に手渡すと「買い物の途中だから」と素早い動きて去っていきました。

唖然とする私と冷たいアクエリアスだけが車内に残されてしまったのです。


時刻は11時40分。

近くに病院はありません。

これから病院に行くにも、午前の診察は終わっていて早くても16時…詰んだ。

思わず見えない筈の空を見上げてしまいました。


ゆっくりと買い物をしてきた母は心配そうに「運転できる?」と聞いてきたので、痛みに顔をしかめながら足先を指差しました。


「足がつっているみたいだから、左足の指先を手前に押して欲しい。あ、私の方にだよ?え?何でドヤ顔で足の裏に向けて押すの?めっちゃ痛いんだけど?」


正直に鬼だと思いました。

いま思い出しても許せない程の痛み。

その時はガチ泣き寸前です。


慌てる母は、さらに追い討ちをかける始末。

悟りを開いた私は帰る事にしました。

右足は無事だったので、プルプルと震えながらも何とか自宅まで帰りました。



さぁ!!ここからですよ!!!

玄関に入る前に、私に立ちふさがる試練。

そう、それは階段。


足が伸ばせない=立てない


先ほどの焦った母を思い出し、冷静に考えました。

冷静になってこそ試練は乗り越えられるのです。


試練を乗り越える為に用意するもの。

それは、杖。

母の為に買ったのに、何故が私の方が使う頻度の高い杖を右手に持ち、母に支えられながら立ち上が…れない…だと!?


産まれたての小鹿よりも震える私の体。

滴り落ちる汗。

伸ばせない左足。


けれど、車内に残る訳にもいかない!私は立ち上がるんだ!!!


絶望に立ち向かう勇者の気持ちになりつつ、勇気をふりしぼり無理矢理に立ち上がる瞬間「気絶したい」と本気で思いました。

階段を上りきる頃には何も考えられない程、頭の中が真っ白になり、家に入った時には力尽き、玄関に体操座りで座り込むと痛みで動けなくなりました。


不運は重なるもので、我が家の玄関は高齢猫が粗相をするので、木酢をしたばかりで臭いのです。

「原液かけといたから〜」と一昨日くらいに母から聞かされたばかり…臭すぎる。


トドメに荷物を運ぼうとした母がぶつかってきたり、優しさから居間に私を運ぼうとした母に引っ張られ痛みが増したり、マッサージしてあげるからと母を信じたら力を込めて押され痛みに悲鳴をあげました。


その頃には、ふくらはぎの方が痛く、つった時の対処法で温めた方がいいと書かれていたので、痛む部分にカイロを貼って少し痛みがおさまる頃には、何故かドジっ子になる母に悩まされました。


「本当は私の事が嫌いでしょ?」


真顔で母に聞くくらいには色々されました。

ラノベで見るドジっ子ヒロインに悩まされる悪役令嬢の気持ちが分かりかけました。

こんなの許せる人の方が変だ!と本気で思うくらいでした。



時間にして6時間ほど痛みに苦しみました。

あんなに長い6時間は過ごした事がありません。


しかし…どんなに痛くても、人として乗り越えなければいけない試練があります。

そう…それは尿意です。


1度目の試練とは違う辛さ。

人として失えないモラル。

紙おむつさえしていれば…と悔やみました。


再び母の出番です。

杖と母の協力のおかげで間に合ったものの…立ち上がれない現実が私を襲いました。

夕方には帰ってくる姉に病院に連れて行ってもらう為にも、潔くトイレで待つことにしました。


痛む場所を摩りながら、1日を振り返るには十分な時間をトイレの中で過ごしました。

あの時こうしなければ…!と思うには、車から降り様としただけという事実を認めるまで少し時間がかかりました。


そして…奇跡はおこったのです。


トイレのなかで待つには暑すぎる…そう思った私は杖を片手に立ち上がりました。

立ち上がれたのです。


真顔になりました。


ふくらはぎに違和感はあるものの歩ける。

歩ける?え?歩けてる??


「歩けるんだけど」

「本当だ」


互いに真顔になりました。

あの苦しんだ時間が嘘の様に歩ける。

でも素直に喜ぶには、また痛みがぶり返すかもしれない恐怖があり複雑でした。


念の為に整形外科にいくと、新しい先生は若くてイケメン。これは…ラノベでは王道パターンできたな。

しかし私は渋い方が好きなので胸キュンには繋がらない。ネタとして美味しくいただきます。


「よろしくお願いします」と頭を下げながらも浮かんだ内容に、後で我に返り頭を抱えました。


その時の私の思考回路はショート寸前だったと思います。けして普段からでは…ない…と思ったり思わなかったり。



レントゲンをとられた後は、診察室でうつ伏せになり左膝の裏からふくらはぎをエコーで診察されました。

エコーの時に別の若い先生の教育をしつつだったのですが、押されると痛いと言っているのに「ごめんね」と言いながらゴリゴリと機械で押してくる先生。

足を伸ばしていると痛いと訴えていても「ごめんね」と別の先生に説明を始める先生。


普段は隠されている腐女子パワーを発揮して、かけ算してやろうかと思うくらいには辛い時間でした。

前の先生の時もそうでしたが、整形外科ではドSしか働けないのか!?と叫びたくなりました。


待ちに待った診断の結果は「肉離れ」


自分には関係ないと思っていただけに「え?肉離れですか?」と聞き返してしまいました。


「残念ながら肉離れですね。もっと難しくも言えますが聞きますか?」

「あ、そういうのいいです。」


そんな会話をしたのは、いい思い出です。


こまめに患部を冷やす事と貼り薬をもらい、1〜2ヶ月間は運動は禁止になりました。

「1週間後に診察に来てください。でも痛かったら何時でも相談にのるから」と先生からの優しい言葉に、少しキュンとしかけました。油断したら危険です。


待合室で待っていてくれた姉に「生まれて初めて肉離れになりました」と伝えると爆笑されました。

笑われる事で心が落ち着きました。


そして私は学んだのです。

どんなに辛い事も悲しい事もネタに使える!と思うと乗り切れる事を…。



私の場合は軽傷ですみましたが、それでも肉離れの痛みは想像より辛かったです。

今後はサッカーで倒れた選手に対して、優しい気持ちになれそうです。


必要ないかもしれませんが、足がつった場合は温め、肉離れの時は冷やす事を覚えておくと便利ですよ。

でも実際は肉離れを経験していないと違いが分からないとも思いました。


冷や汗がでて、動けなくなったら肉離れを疑ってください。冷やしたり摩ったり出来るほど余裕はありません。すぐに病院に行ってください。


でも行ったから治る訳ではないのが肉離れの辛い所です。ですが素人判断するよりいいと思います。



今も痛みはありますが、いつか自分の作品で肉離れした人物を書く時に参考になる経験だと思う事にしています。


自分は関係ないと思っていても、運が悪いとなってしまう肉離れ。

一度なってしまうと癖付きやすい肉離れ。

でも、なったからにはネタにしたい肉離れ。


私は車から降りる度に思い出すと思います。

もう2度となりたくない。


運動不足な方。運動しすぎな方。

どうか自分は関係ないと思わずに、気を付けてくださいね。


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